エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年2月16日 22:10 JST

「諦めた夢と向き合う」 JAL機長発案、767シミュレーターで「本気のパイロット訓練」10日間250万円

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 日本航空(JAL/JL、9201)グループの旅行会社ジャルパックは、JALの現役パイロットが発案した特別企画「“本気”のパイロット訓練体験 10days」を抽選販売する。フルフライトシミュレーター(FFS)体験を含む本格的なプログラムで、パイロットの仕事の奥深さを体感できる内容にしたという。定員は2人で、税込の受講料は250万円。応募は4月13日まで受け付ける。

羽田空港を離陸するJALの767-300ER=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
767のFFSで訓練体験
「何かを諦めた自分」から機長発案

767のFFSで訓練体験

 プログラムの内容は、JALのパイロット訓練の一部を体験できるもので、10日間にわたり座学やFFSを用いた実践的な訓練を実施。ボーイング767型機のFFSを用いた訓練では、機長席に座り、現役機長のサポートを受けながら操縦を体験できる。

JALの767フルフライトシミュレーター(同社提供)

 「本気のパイロット訓練体験 10days」では、JALのパイロット訓練の一環である「Operation Ground School」を2日間受講することで、航空機の基本知識や運航の流れを学ぶ。シミュレーター体験は計5回設定され、初回では飛行機の地上移動や簡易的な管制官との交信、離陸・上昇降下の操作を体験。最終セッションでは、教官のサポートを最小限にし、副操縦士役の現役パイロットと協力して羽田-伊丹間のフライトを体験する。

 不測の事態を想定した訓練も含まれ、限られた情報を基に自律的に判断し、仲間と協力しながら安全に航空機を運航する「エアマンシップ」を体験できる。こうした実践的なシナリオを通じて、単なる操作技術の向上にとどまらず、航空機の運航に求められる総合的なスキルを学ぶことができるという。一方、今回の訓練体験でライセンスは取得できない。

 開催日程は、5月10日(土)にビデオ会議システム「Zoom」で説明会を開き、6月7日と7月12日(いずれも土曜)に座学、FFS訓練を7月28日(月)、29日(火)、31日(木)、8月1日(金)、4日(月)、JALOODA講義を5月17日(土)、8月9日(土)。説明会以外はすべて羽田空港の日本航空第1テクニカルセンターで開く。

 応募期間は4月13日までで、応募者多数の場合は抽選。最少催行人数は2人となる。

「何かを諦めた自分」から機長発案

 発案したJALの大橋篤機長は、2022年に羽田空港沖の進入灯をくぐり屋形船で一周する航空教室を企画。自らの少年時代を振り返ると、プロ野球選手やトランペッター、オートバイレーサー、教師といった職業を夢見たものの、実際に選んだ道はパイロットだった。「なんで自分はその職業に就けなかったのだろう?」と自問自答することがあるという大橋さんは、「何かを諦めた自分」を置き去りにしていたことに気づいたという。

発案した大橋機長は22年の「屋形船de航空教室」も企画=22年9月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「パイロットという職業が“人生の錨”になっている人に向けて企画した」という大橋さんは、JALのパイロットたちと訓練を体験することで、「心の錨を一緒に引き上げたい」との思いを込めた。

 「単なる操縦技術の向上ではなく、パイロットに求められる自律性を学び、人生の豊かさに気づいてもらうことを目的としたプログラム」だといい、従来のシミュレーター体験とは異なり、より実際の訓練に近い形で構成しているという。

 JALはこれまでにもフライトシミュレーター体験企画を実施しており、過去には希望する飛行ルートを選択できるプログラムが即日完売するなど、航空ファンの高い関心を集めてきた。今回のプログラムはより本格的な訓練内容となっている。

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“本気”のパイロット訓練体験 10days
日本航空

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