エアライン — 2025年12月15日 22:30 JST

スカイマーク本橋社長、国内線“利益なき繁忙”に危機感 国際線再開は「検討必須」

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 新型コロナ後の生活環境の変化や円安の影響を受け、国内線の事業環境が急激に悪化している。国土交通省航空局(JCAB)は今年5月に「国内航空のあり方に関する有識者会議」を立ち上げ、航空各社や関係団体と会合を続けている。

自社を含めた国内線の現状を説明するスカイマークの本橋社長=25年12月15日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 JCABは、1990年代の規制緩和で参入したスカイマーク(SKY/BC、9204)、エア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の4社を「特定既存航空会社(旧称・新規航空会社)」と分類。いずれも国内線をおもな事業として展開しており、各社それぞれが課題に直面している。

 このうち就航が最も古いのはスカイマークで、1998年9月に運航開始。“最古参”の特定既存航空会社は、国内線事業が抱える課題をどのように考えているか。同社の本橋学社長が12月15日に、羽田空港の敷地内にある本社で説明した。

—記事の概要—
「危機の度合内容異なる」
国内線「デフレマインド定着に直面」
国際線「需要の強さ実感」

「危機の度合内容異なる」

羽田空港に着陸するスカイマーク機(中央)=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 本橋社長は、コロナ後の航空業界はコロナによる事業構造の変化、世界的な物価高、円安ドル高により燃料費、整備費などの外貨建てコストの増大などにより、厳しい局面を迎えているとした。

 有識者会議の資料を抜粋し、全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)の大手2社と、国内専業の中堅4社の航空6社の経営状況を説明。大手2社の営業利益率は、コロナ前の2018年度が9.6%で、2024年度は0.6ポイント減少の9.0%だった。一方、営業利益をみると、2024年度は2018年度比279億円の増益だった。

 中堅4社は2018年度の営業利益率が6.8%。2024年度は4.0ポイント減少の2.8%で、2024年度の営業利益は2018年度比75億円の減益だった。

 本橋社長は「大手2社と中堅4社では、直面している危機の度合内容が異なる。特に自社を含めた中堅4社が、コロナ前の半分程度の回復にとどまっている」と指摘した。

国内線「デフレマインド定着に直面」

 6社の国内線事業のみをみてみると、2018年度の旅客数を100とした場合、2024年度は104.7で、旅客数はコロナ前を上回っている。一方で営業損益はマイナス15.7となっている。

 また、コロナ以降は国内旅行の単価が急激に上昇していると説明。2018年度を100とすると、2024年度の国内旅行は128、消費者物価指数は109で、新幹線は105、航空は101にとどまっているという。

 本橋社長は、国内旅行全体がコスト上昇に見合った収益を得る一方、特に国内航空の単価がコストに見合わない低い伸び率にとどまっていると指摘。「利益なき繁忙」が構造的な課題で、「デフレマインドの定着に直面している。1社の企業努力だけでは吸収不可能な状況」と危機感を示した。

 今後は国内線の単価上昇による収入増や、国内線での燃油サーチャージ導入などコスト基盤の再構築に加え、国内航空ネットワークの維持と旅客利便確保の両立が必要だと訴えた。

国際線「需要の強さ実感」

サイパンを出発するスカイマークの成田行きBC816便初便=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 スカイマークは“危機”を乗り切るため、国内線の旅客収入に加え事業収益の多様化を目指していく。多様化の1つの方法が、国際線への再参入だ。

 同社はコロナ前の2019年11月29日に、初の国際線定期便となる成田-サイパン線を開設したものの、新型コロナの影響で2020年3月25日の運航を最後に運休。現在も再開に至っていない。一方、今年10月4日には、神戸-台北(桃園)間の国際チャーター便の運航を始め、10日までに計4往復8便を設定した。

 本橋社長は10月のチャーターについて、「神戸発4便、台湾向けに3便運航し、ほぼ満席だった」とし、国際線の需要の強さを実感したという。一方、国際線の再開については「検討を進めている。機材稼働などで検討が必須で、しっかり乗っていただける路線を選定する」とし、収益性などを調査していくと述べるにとどめた。

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