エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年10月29日 23:27 JST

777X、初納入2027年に ANAも発注、計画から7年遅延

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 ボーイングは現地時間10月29日、開発中の大型機777-9(777X)の納入開始がさらに遅れ、2027年になる見通しだと正式発表した。FAA(米国連邦航空局)が機体の安全性を証明する「型式証明」の取得が遅れているためで、2013年11月のローンチ時点に計画していた納期「2020年」から、早くても7年遅れることが確定した。日本では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が発注している。

初納入が2027年にずれ込む777X=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「スケジュール遅延残念」
25年7-9月期純損失は8.3億ドル改善

「スケジュール遅延残念」

 今回の発表で、最初に受領を予定しているルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)への引き渡しは2027年となる見通し。ボーイングのケリー・オルトバーグ会長兼CEO(最高経営責任者)は「スケジュール遅延は残念だが、飛行試験では良好な性能を示しており、開発プログラムの完了と業務の安定化を通て、全ステークホルダーの信頼回復に務める」とコメントした。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露する777-9=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 オルトバーグ氏は、モルガン・スタンレー証券が今年9月11日に開いた投資家向け会議で、「試験飛行で新たな技術的課題は見つかっていないが、認証までにやらなければならない作業が山ほどある」と、777Xの開発状況を説明。この時点で想定していた初納入は2026年6月以降だったが、2027年にずれ込むかは明言を避けていた。

 飛行試験は現在、顧客へ引き渡す予定の量産機も含め、5機の飛行試験機でテストを続けている。

2023年に開かれたパリ航空ショーで公開された777-9飛行試験機の客室に設けられたA350と広さを比較する展示=23年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 777Xは、メーカー標準座席数が2クラス395席の777-8と、426席の777-9の旅客型2機種に加え、構造上の最大搭載重量118トン、有償搭載重量(ペイロード)112トンの貨物型777-8Fの計3機種で構成。777-9から開発が進められている。エンジンはGE製GE9Xを採用している。

 9月末時点の受注残は565機。最多発注はエミレーツ航空(UAE/EK)の205機で、カタール航空(QTR/QR)の124機、キャセイパシフィック航空(CPA/CX)の35機、シンガポール航空(SIA/SQ)の31機、ルフトハンザの27機、エティハド航空(ETD/EY)の25機、ブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)の24機、大韓航空(KAL/KE)の20機、台湾のチャイナエアライン(中華航空、CAL/CI)が14機、エア・インディア(AIC/AI)が10機、ルクセンブルクの貨物航空会社カーゴルックス航空(CLX/CV)が10機、エチオピア航空(ETH/ET)が8機、アゼルバイジャンの貨物航空会社シルクウェイ・ウエスト・エアラインズ(AZG/7L)が2機で、ANAHDは777-9を18機と777-8Fを2機の計20機を発注済み。

 ANAHDは現時点で、777Xは未受領を前提に2026年度までの事業計画を立てている。777Xの旅客型を発注している航空会社は、ANAを除きエアバスの大型機A350も発注し、リスクを分散している。

 また、日本の製造分担割合は、777と同じ主要構造部位の約21%で、担当部位も777を基本的に踏襲。三菱重工業(7011)が後部と尾部胴体、乗降扉を、川崎重工業(7012)が前部と中部胴体、主脚格納部、貨物扉を、SUBARU(7270)が中央翼、中央翼と主脚格納部の結合、主脚扉、翼胴フェアリング(前部)を、新明和工業(7224)が翼胴フェアリング(中・後部)を、日本飛行機が主翼構成品の製造を担当する。

25年7-9月期純損失は8.3億ドル改善

 一方、オルトバーグ氏は2025年7-9月期(第3四半期)決算を29日に発表した際、「737の生産を月産42機へ引き上げることでFAAと合意するなど、回復に向けた重要な節目を迎えた」と述べ、2度の墜落事故や品質問題などで生産が遅れている737 MAXは、FAAが増産を認めたことで、状況が好転しつつあるとの認識を示した。また、品質問題が課題の中型機787は、月産7機で生産を安定させているという。

 売上高は前年同期比30%増の232億7000万ドル(約3兆5400億円)で、営業損失は47億8100万ドルと前年同期から9億8000万ドル改善し、純損失は53億3900万ドルで8億3500万ドル改善した。また、777Xの認証取得に遅れにより、49億ドルの税引前損失を計上した。



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