全日本空輸(ANA/NH)の井上慎一社長は現地時間6月2日、次世代国際線フラッグシップとなるボーイング777Xの受領時期について、世界的に不透明な状況が続いているとの認識を示した。ボーイング機は777Xや787、737 MAXが品質問題やサプライチェーン問題の影響により、世界の航空各社への引き渡しに遅延が生じている。ANAは事業計画への影響を最小化するため、早期受領に向けた調整をボーイングと続ける。

前回2023年のパリ航空ショーで飛行展示を披露するボーイング777Xの飛行試験機=23年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
IATA(国際航空運送協会)の年次総会が開かれているインドのデリーで、Aviation Wireや海外メディアの取材に応じたANAの井上社長は「我々も(受領遅延の)影響を受けている航空会社のひとつだ。Who knows?(誰がわかるだろうか)」と、受領時期が世界的に不透明であるとの考えを示した。ANAによると、事業計画への影響を最小化するよう、ボーイングとは日々密に調整を続けているという。
ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、今年2月の時点で2026年度は2機の受領を予定しているものの、「ゼロ機で計画している」(ANAHDの中堀公博常務・当時、現専務)と、さらなる遅延が生じる可能性を念頭に計画を立てている。
ボーイングは、777Xのローンチカスタマーへの引き渡し開始を、現時点で2026年6月以降を予定。このため、ANAへの初納入はローンチカスタマー各社への納入が一巡後になる見通し。

ANAホールディングスが発注した777-9Xのイメージイラスト(同社提供)
777Xは、ボーイングが開発を進めている次世代大型機で、ANAは長距離国際線を中心に投入している777-300ERの後継機として発注。メーカー標準座席数が2クラス395席の777-8と426席の777-9の旅客型2機種、最大積載量(ペイロード)118トンの貨物型777-8Fの計3機種で構成され、開発は777-9から進められている。
ANAHDは2014年に777-9を20機発注し、2021年度から2027年度に受領する計画だった。このうち2機は、2022年に777-8F貨物機へ発注変更。777-9は、当初の計画通りであれば機体がほぼ揃う時期から受領が始まることになる。
関連リンク
全日本空輸
Boeing
ボーイング・ジャパン
ANA
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777X
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動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
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写真特集・パリ航空ショー2023
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【お知らせ】
ANA側の対応状況を追記しました。(25年6月3日 11:12 JST)