エアライン, ボーイング, 機体, 空港, 解説・コラム — 2024年2月5日 13:35 JST

4機しかない787国内線仕様 JALは羽田-石垣線にどう投入するのか

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 日本航空(JAL/JL、9201)は、羽田-石垣線にボーイング787-8型機の国内線仕様機を8月に期間限定で就航させる。JALが787を同路線に投入するのは初めてで、現行の767-300ERより提供座席数を増やすものだ。

羽田で出発を待つJALの787-8国内線仕様機の初便=19年10月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、JALの787-8の国内線仕様機は4機しかなく、普段は羽田-伊丹、福岡線を中心に投入されており、現在は札幌(新千歳)線にも入っている。一方、羽田-石垣線は片道約2時間50分と、国内線ではもっとも長距離の部類に入り、1日2往復とも787を投入するとなれば、1機を石垣線に専従させることになる。

 JALはどうやって石垣線に投入する787を捻出したのか。

—記事の概要—
4機しかない国内線仕様
札幌線から石垣に

4機しかない国内線仕様

 JALが保有している787は、標準型の787-8が31機、長胴型の787-9が22機の計53機。このうち、JALが100%出資する中長距離LCC、ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が8機運航しており、2機が新造機、残り6機はJALが運航していた初期導入機を改修している。このため、787-8のうちJAL本体が運航しているのは23機で、国際線仕様が19機、国内線仕様が4機だ。

普通席も個人用モニターを備えるJALの787-8国内線仕様機=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 国内線仕様機(E21仕様)の座席数は3クラス291席で、ファーストクラスが6席、クラスJが58席、普通席が227席。シートの基本仕様は、エアバスA350-900型機で採用したものを踏襲し、ファーストが2-2-2席配列の1列6席、クラスJが2-3-2席配列の1列7席、普通席が3-3-3席配列の1列9席となる。767-300ERの国内線仕様機(A25仕様)を置き換えるもので、座席数は767の3クラス252席(ファースト5席、クラスJ 42席、普通席205席)と比べて39席(15.5%)増えた。

 客室は「日本の伝統美」を表現したデザインを採用し、前方左側2番目「L2ドア」付近にはJALの鶴丸ロゴを掲げた。ファーストクラスは、黒を基調とした配色に加え、前方壁面の造形により、6席だけの特別な空間を演出する。クラスJと普通席は、JALのコーポレートカラーである赤を使いつつ、着席時は落ち着いた雰囲気を感じられるようにした。照明には、LEDライトが使われている。

 全クラス全席に電源コンセントと充電用USB端子、個人用画面を備え、機内インターネット接続「JAL Wi-Fiサービス」を無料で提供。A350と同様、出発して地上走行を開始してから、着陸後に駐機場へ到着するまで利用できる。映画などのビデオコンテンツは、途中で視聴を中断しても次回搭乗時に続きを楽しめるようにした。

 エンジンは国際線仕様機と同じ米GE製GEnx-1Bを選定。推力は国際線用の7万ポンドに対し、国内線用は6万4000ポンドに落としている。

JALの787-8国内線仕様機のファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの787-8国内線仕機のクラスJ前方エリア=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 初号機(登録記号JA846J)は2019年10月7日に引き渡され、同月9日にシアトルから羽田空港へ到着。就航は同月27日で、初便は羽田発伊丹行きJL107便だった。羽田-福岡線への投入は同年12月20日にスタートした。

 航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、1月28日から昨日2月4日までの8日間で、JALは787-8の国内線仕様機を羽田-伊丹、福岡、札幌の3路線に投入していた。

 今年は石垣線に投入される8月の運航実績はどうだろうか。昨年2023年8月は、フェリーフライトを除くと羽田-伊丹、福岡の2路線のみ投入され、1機あたり1カ月で185便程度運航していた。定期便の運航が確認されなかった日は、初号機が8月2日、2号機(JA847J)と4号機(JA849J)が15日、3号機(JA848J)が25日で、ほぼ毎日4機がフル稼働し、もっとも稼働機が少ない8月15日も2機が投入されていた。

札幌線から石垣に

 では、今年の8月に羽田-石垣線に専従させる787-8の国内線仕様機を、JALはどうやって捻出しているのか。投入前日7月31日と8月1日の羽田-伊丹、福岡、札幌の3路線の機材を見てみよう。

昨年は777-200ERも投入された羽田-石垣線。今年の8月は787-8で大型化する=23年4月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2月5日現在、7月31日の羽田発伊丹行きは15便あり、このうち約半数の7便が787-8、5便が767-300ER、3便が737-800だ。8月1日も15便で、787が1便増えて8便、767が1便減の4便、737が3便で変わらずとなった。

 8月から機材が変わったのは15便中3便。羽田午後2時30分発のJL121便と午後6時45分発のJL137便が767から787に変わり、午後6時発のJL133便は787から767に変わっている。羽田-伊丹線の787投入は、あまり変化がないようだ。

JAL 787-8国内線仕様機の投入状況(Aviation Wire作成)

 羽田発福岡行きは1日あたり17便で、7月31日はA350-900が約半数の9便、767が4便、787が3便、737が1便。8月1日はA350が1便増えて10便、767は4便で変わらず、787は1便減の2便、737は1便で変わらずだった。

 8月から機材が変わったのは17便中3便。羽田午前7時15分発のJL305便が787から767に変わり、午前9時15分発のJL311便が767から787、羽田午後1時発のJL319便は787からA350に変更されている。A350を投入することで、787を捻出したといえる。

 羽田発札幌行きも同17便で、7月31日はA350が半数以上の11便、787と737が3便ずつ。8月1日は、A350が2便増の13便で大半を占め、737は3便で変わらず、787はゼロとなり767が残る1便に投入される。

 8月から機材が変わったのは17便中3便。羽田午前7時20分発のJL503便と午後6時40分発のJL527便が787からA350、羽田午後0時45分発のJL515便が787から767に変わった。伊丹や福岡と異なり、全3便が787から他機種への変更だった。

 つまり、8月は羽田-札幌線から787をすべて外し、1日2往復の石垣線に1機を割り当てる。1月2日の羽田空港衝突事故で1機減の15機となったA350もフル稼働するが、予備機も含めた機材計画になるため、飛行時間が長い羽田-那覇線に投入する便を調整するなど、限られた機材で収益最大化を図る。全損となったA350-900の13号機(JA13XJ)の代替となる機体は、まだ納期が確定していないため、当面はこうした機材のやりくりで乗り切ることになる。


  ◆ ◆ ◆

 787は省燃費・低騒音機材だが、燃費の良さを発揮するのは片道6時間以上のフライトと言われており、JALは国際線に集中投入している。国内線は767の後継という位置づけではあるが、パイロットの機種移行など訓練や資格審査の場としても活用しているようだ。

 片道3時間近い羽田-石垣線への投入は、最新の客室によるサービス向上だけでなく、運航コスト面でも真価を発揮するだろう。

関連リンク
日本航空

写真特集・JAL 787国内線仕様機
(1)1便6席のファーストクラス
(2)クラスJも個人用モニター・電源完備
(3)普通席も全席モニターと電源完備
(4)ギャレー配置工夫で座席数最大化

JAL 787-8国内線仕様
JAL、787国内線仕様機が就航 羽田-伊丹線、12月から福岡も(19年10月27日)
JAL、787初の国内線仕様公開 27日から羽田-伊丹線(19年10月16日)

写真特集・JAL 11代目CA新制服と主要機材
(5)普通席もモニターと電源完備 787-8国内線仕様機

機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
JAL 787-8 国内線仕様機 初便 羽田→伊丹 JL107便
JAL 787-8 国内線仕様 JA846J お披露目

機材関連
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