ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2023年12月6日 14:45 JST

737-10の型式証明、24年にずれ込み NMA開発「進捗なし」777Xは25年中ごろ

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 ボーイング民間航空機部門マーケティング担当副社長のダレン・ハルスト氏は12月6日、開発が進む737-10(737 MAX 10)と777Xなどの進捗を明らかにした。737-10は製造国が安全性を認める「型式証明」(TC)の取得は2024年にずれ込む見通しで、就航は当初計画を3年延期した2023年を目指していたが、就航が延期となることも確実となった。一方で777Xは計画を変更せず、2025年中ごろの納入開始を目指す。

パリ航空ショーで飛行展示を披露する737-10飛行試験機=23年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「737-10飛行試験は数カ月」
777Xは25年中ごろ
NMA「開発中機材でニーズ満たせる」

「737-10飛行試験は数カ月」

 737-10は、737の発展型である737 MAXファミリーの中で胴体長がもっとも長い「最大の737 MAX」で、最大座席数は1クラス230席。日本の航空会社では、スカイマーク(SKY/BC、9204)が737-10を発注済み。ボーイングはFAA(米国連邦航空局)が認証飛行試験の開始を許可したと現地時間11月22日に発表し、現在はFAAが飛行試験を進めている。

737-10や777Xなど開発中が進む機体の進捗を示すボーイングのハルスト氏=23年12月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 東京・丸の内のボーイング ジャパンで会見したハルスト氏は737-10のTC取得にについて「FAA次第で具体的な日付はお伝えできない」とした上で、「TC取得への重要なマイルストーンは突破しつつある」と述べ、試験が大詰めを迎えているとの認識を示した。

 一方で「飛行試験は数カ月かかる」(ハルスト氏)ことから、当初予定していた年内の取得は困難であるとした。

 737 MAXの基準となる標準型は、737-800の後継となる2016年1月に初飛行した737-8(737 MAX 8、1クラス189席)。もっとも胴体が短い機体が737-700の後継機737-7(737 MAX 7、同172席)で、737-8の座席数をLCC向けに増やした737-8-200(737 MAX 200、同210席)、737NG(次世代737)で最大サイズだった737-900/-900ERの後継機737-9(737 MAX 9、同220席)もそろえる。胴体長は、737-7が35.56メートル、737-8が39.52メートル、737-9が42.16メートル、737-10は43.8メートルで、もっとも短い737-7と比べて737-10は8メートル以上長い。

 737-10は、コックピット内の警告システム「EICAS(Engine Indicating and Crew Alerting System:エンジン計器・乗員警告システム)」を巡り、737-8などほかの737 MAXとは別のコックピットとして扱われ、パイロットのライセンスを共通化できなくなる可能性があったが、米議会が警告システムの搭載を免除する改正法案を2022年末に可決したことで回避した。

パリ航空ショーで公開された737-10飛行試験機のコックピット=23年6月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

777Xは25年中ごろ

 777の後継機となる開発中の次世代大型機777Xは、メーカー標準座席数が2クラス384席の777-8と、426席の777-9の2機種で構成し、777-9から開発が進められている。2022年1月31日には、777-8をベースとする大型貨物機「777-8 Freighter(フレイター)」の開発が発表された。

 777Xは進捗に変更はなく、予定通り2025年中ごろに初納入する。ハルスト氏は「飛行試験は3000時間以上を達成している」と述べ、開発が順調に進んでいると説明。現在は導入する航空各社と運航試験を進めており、「就航後に信頼性の高いサービスを提供できるようにしている」とした。

 777Xは当初、2021年の引き渡し開始を予定していた。その後納入開始の後ろ倒しを重ね、現在は2025年の初号機納入を目指し、開発を進めている。

パリ航空ショーで公開された777-9飛行試験機=23年6月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

NMA「開発中機材でニーズ満たせる」

 ボーイングは新型コロナ前に、737 MAXと787の間に位置する中型機「NMA(New Middlesize Airplane)」の計画を示唆していた。2019年の時点では、座席数は220-270席クラスでローンチ(開発着手)が2020年内、就航は2025年前後になる見通しだったが、737 MAXと787が当時、ともにトラブルに見舞われたことに加え、新型コロナの影響による航空需要の減退により、事実上凍結している。

 ハルスト氏はNMAの開発について「現状は進捗がない」と明らかにした上で、「現在開発中の737-7、737-10、777-9、777-8Fで市場のニーズを満たしていける。新型機の開発は長期的な目線で検討している」と述べるに留めた。

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Boeing
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