ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2022年7月18日 14:34 JST

ボーイング、737 MAX 10型式証明取得の時期明言避ける

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 ボーイングのスタンリー・ディール民間航空機部門社長兼CEO(最高経営責任者)は現地時間7月17日、ロンドン近郊で18日から開催されるファンボロー航空ショーを前に記者会見を開いた。会場に飛来している開発中の737-10(737 MAX 10)に対する型式証明の取得時期は明言を避けた。737-10は737 MAXファミリーで最大の機体で、就航は当初計画を3年延期した2023年を目指している。

ファンボロー航空ショーに展示される最大の737 MAXとなる737-10=22年7月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
737-10型式取得に注力
新型機「まったく新しければ作る」

737-10型式取得に注力

 ボーイングは737-10の型式証明取得の期限を12月としている。米国議会が免除しない限りは、現状では737 MAXが装備していないコックピット内の警告システム「EICAS(Engine Indicating and Crew Alerting System:エンジン計器・乗員警告システム)」を新設し、新たなパイロット訓練を設ける必要がある。この場合、737-8(737 MAX 8)など、ほかの737 MAXとは別のコックピットとして扱われ、パイロットのライセンスを共通化できなくなる可能性がある。

ファンボロー航空ショーに展示される最大の737 MAXとなる737-10のコックピット=22年7月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ロンドンで記者会見を開くボーイングのスタンリー・ディール民間航空機部門社長兼CEO=22年7月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ディール氏は「今は認証を取得することに注力している」と述べ、「この飛行機の認証を取得することは、我々が顧客と交わした約束の中で、高い確率で実現できる道だ」と語った。

 737 MAXは墜落事故を2度起こしており、FAA(米国連邦航空局)は型式証明を含む安全性に関する審査を厳格化している。FAAが737 MAXの運航再開を2020年11月に承認後も、製造工程で不具合が発生したり、787でも同様の問題が起きて引き渡しを中断していることから、FAAが2機種に対する製造工程の監査を実施する。

 737-10は、737の発展型である737 MAXファミリーの中で胴体長がもっとも長い「最大の737 MAX」で、メーカー標準座席数は1クラス230席。2017年6月に開かれたパリ航空ショーでローンチ。これまでもっとも大きかった737-9(737 MAX 9、同220席)の胴体を66インチ(約1.7メートル)延長して、定員増加によりドアを追加し、翼や圧力隔壁なども改良した。

新型機「まったく新しければ作る」

 こうした問題があることから、新型機の開発からは距離を置いている。ディール氏は「ボーイングはナローボディーとワイドボディーのシェアを合わせると、5050機のプレーヤーになるので、製品戦略には満足しており、もう1機新しい飛行機を作ろうという気にはならない」と述べた。

 その上で、「新しい飛行機は、まったく新しいものであれば作るつもりだ。そして、次の新型機では、デジタルツールに焦点を当てる。2017年から防衛製品で強調された要素であるデジタルツールは役立つと思う」と述べ、空力特性の向上や運航コスト削減など、航空会社にとって大きな導入効果が期待できるものである必要があると指摘した。デジタルツールは、ボーイングが新規開発した米空軍のジェット複座型練習機T-7A「レッドホーク」で活用されており、製造工数削減などにつながっている(関連記事)。

 ボーイングはコロナ前に、737 MAXと787の間に位置する中型機「NMA(New Middlesize Airplane)」の計画を示唆していた。2019年の時点では、座席数は220-270席クラスでローンチ(開発着手)が2020年内、就航は2025年前後になる見通しだったが、737 MAXと787がともにトラブルに見舞われたことに加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による航空需要の減退により、事実上凍結している。

 一方で、航空需要は2021年から回復傾向がみられることから、ボーイングがNMAの開発を再開するか否かは、737 MAXと787の製造工程の問題解決、737-10の型式証明取得、737 MAXの売れ行きといった要素が左右すると言えそうだ。

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