エアライン, 官公庁, 空港, 解説・コラム — 2026年6月15日 23:59 JST

4年前からゴムジョイント損傷把握 特集・羽田D滑走路タイヤ破裂トラブル

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 羽田空港D滑走路で5月に航空機タイヤのバースト(破裂)が相次いだことを受け、国土交通省航空局(JCAB)が設置した有識者委員会の資料で、今回破損した滑走路接続部のゴムジョイントについて、約4年前の2022年8月から表面ゴムの損傷を確認し、「経過観察」としていたことが示された。損傷は2023年9月まで拡大したが、その後は変状が進行していないとしていた。一方、5月25日のタイヤバースト後の臨時点検や、27日夜から28日未明の基盤施設点検、29日早朝の飛行場面点検では、いずれも異常なしとしていた。

D滑走路接続部ゴムジョイント損傷発生時の状況(国交省の資料から)

 D滑走路のトラブルを検証する「羽田空港D滑走路破損事案対策検討委員会」は6月10日に初会合を開き、5月25日のスカイマーク(SKY/BC、9204)BC19便(ボーイング737-800型機、登録記号JA737T)と、29日の日本航空(JAL/JL、9201)のJL645便(767-300ER、JA615J)で発生したタイヤバースト事案、ゴムジョイントの破損状況、点検履歴、緊急対策などを議論した。国交省は原因を特定できていないものの、表層ゴムの剥離が確認された部材への予防保全を終え、ゴムジョイントの点検頻度を月1回から週2回へ強化した。

タイヤバーストが相次いだ羽田空港のD滑走路=26年6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
4年前から経過観察
BC19便後も点検異常なし
JL645便後に破損確認
週2回点検へ強化

4年前から経過観察

 D滑走路は2010年10月21日に供用を開始した羽田空港4本目の滑走路。多摩川の通水性を確保するための桟橋構造と、海上空港で実績のある埋立構造を組み合わせて建設され、埋立部と桟橋部をつなぐ接続部には、温度変化や地震などに対応する伸縮装置や渡り桁、ゴムジョイントなどを設けている。

羽田空港D滑走路の概要(国交省の資料から)

 ゴムジョイントは、渡り桁と桟橋部の境界で伸び縮みなどの変位に追従し、下部の桟橋へ雨水が入るのを防ぐ。内部には鋼製部材がゴムの中に埋め込まれ、加硫接着で一体化されており、鋼製部材が航空機荷重を面で分散し、中央部への載荷重を両側のゴム部分に伝える役割を果たす。

 今回破損した箇所は、2022年8月27日に小規模な表面ゴムの損傷が初めて確認された。その後、2023年3月1日と同年9月27日の点検時に損傷範囲が拡大していたが、以降は変状が進行していないとして、経過観察としていた。

 D滑走路では、飛行場面全体の安全点検を1日2回、舗装面の重点的な巡回点検を週1回夜間に実施。これに加え、今回破損した接続部を含む基盤施設の点検を月1回実施していた。5月25日のスカイマーク機の事案後に実施した臨時点検や、27日夜から28日未明にかけての基盤施設点検、29日早朝の飛行場面点検では、いずれも異常なしとしていた。

D滑走路接続部ゴムジョイントの概要(国交省の資料から)

D滑走路破損事案の概要(国交省の資料から)

BC19便後も点検異常なし

 5月25日に発生したスカイマーク(SKY/BC、9204)の福岡行きBC19便の事案では、同機が午後3時23分にD滑走路(RWY05)を離陸した際、タイヤから振動を感じたという。同滑走路を点検したところ、数点のタイヤ片を回収した。

SKY19便タイヤバーストに伴う羽田引き返し事案(国交省の資料から)

 BC19便は羽田への引き返しを決め、緊急事態を宣言した上で午後5時54分にC滑走路へ着陸。着陸後、左主脚のNo.1タイヤがパンクしたため滑走路上で停止し、乗客を降機させた上で左主脚のNo.1、No.2タイヤを交換した。その後、牽引車でスポット401Rへ移動した。

 この事案で、D滑走路は午後3時27分から午後4時6分まで、C滑走路は午後5時54分から午後7時39分まで閉鎖された。C滑走路の長期閉鎖に伴う運航への影響は、当該便の欠航1便、成田へのダイバート1便、出発26便と到着38便の計64便の遅延だった。また、けが人は出ていない。

 資料によると、BC19便の事案後、D滑走路は29日のJAL機事案発生前まで多数の航空機が使用していた。25日は事案後に121便、26日は383便、27日は309便、28日は111便、29日はJL645便の前まで111便が離着陸した。

JL645便後に破損確認

 5月29日に発生したJALの鹿児島行きJL645便の事案では、同機が午前10時23分にD滑走路(RWY05)を離陸した際、左主脚のタイヤが破損した可能性を認識した。羽田では、管制塔がD滑走路を離陸した別の航空機から、D滑走路のD5-D7付近にタイヤ片が落ちているとの通報を受け、点検で複数のタイヤ片を発見・回収した。

JAL645便タイヤバーストに伴う成田ダイバート事案(国交省の資料から)

 点検では、D5誘導路の橋梁付近にあるゴムジョイントの鉄板がめくれ上がっている状況を確認。D滑走路を午前10時25分ごろから閉鎖し、緊急補修作業を実施した。JL645便は緊急事態を宣言し、当初は羽田へ引き返す予定だったが、成田空港へ目的地を変更し、午前11時53分に着陸した。

 資料によると、29日は午前3時から6時ごろに実施した飛行場面点検では異常なしだった。午前10時23分ごろにJL645便が離陸した後、後続機から滑走路上にタイヤ片が落ちているとの連絡があり、午前10時53分ごろにゴムジョイントの破損を確認。午後1時ごろに復旧を完了し、午後1時46分にD滑走路の閉鎖を解除した。

 復旧では、破損した金属部を切断・撤去し、常温補修材で舗装した。資料では、ゴムジョイントは鋼製部材をゴム中に埋め込んだ構造だが、何らかの事象によりゴムが剥離し、鋼製部材にめくれ上がりが発生したと説明している。D滑走路の閉鎖に伴う運航への影響は、欠航10便(出発5便、到着5便)、遅延70便(すべて出発便、最大2時間27分)。また、けが人はなかった。

D滑走路損傷事案発生の点検概要(国交省の資料から)

週2回点検へ強化

 国交省は、破損原因の究明と再発防止策を実施するまでの緊急対策として、D滑走路接続部ゴムジョイントの予防保全措置と点検強化を実施した。5月29日の破損箇所については、鉄板のめくれ上がりが発生した原因を現時点で特定できていないが、鋼製部材を覆う表層ゴムが剥離していたという。

D滑走路損傷事案発生の点検概要(国交省の資料から)

 このため、滑走路・誘導路上で表層ゴムが剥離している部材について、破損箇所と同様に鋼製部材を撤去し、ゴムジョイントの空洞部分に常温補修材を充填する予防保全措置を実施。6月3日までに完了した。

 点検は、これまで月1回だったゴムジョイント点検を、5月30日から週2回、月8回に強化した。当面は、今回の復旧箇所と、同じ構造の誘導路について、重点的に状況確認を実施する。

 委員会では今後、ゴムジョイント損傷の原因や、原因確認のための調査・分析方法、緊急対策の妥当性を検討する。第2回委員会では、破損メカニズムの検証や原因分析結果の報告、課題整理、再発防止策などを議論し、以降は滑走路破損とタイヤバーストの因果関係の検証、再発防止策のとりまとめを進める。

 委員会は、5月29日に発見されたD滑走路埋立/桟橋接続部ゴムジョイントの破損原因を究明し、再発防止策を検討するために設置された。委員長は福手勤・東洋大学名誉教授で、委員は平田輝満・茨城大学大学院理工学研究科都市システム工学領域教授、山路徹・港湾空港技術研究所構造研究領域長が務める。

D滑走路損傷事案発生の点検概要(国交省の資料から)

D滑走路接続部ゴムジョイントの緊急対策(国交省の資料から)

羽田空港D滑走路破損事案対策検討委員会の進め方(国交省の資料から)

関連リンク
国土交通省

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