日本航空(JAL/JL、9201)は5月27日、客室乗務員の飲酒で23日の広島発羽田行きJL252便が遅延した問題で記者会見を開き、安全問題の責任を負う「安全統括管理者」の中川由起夫・取締役常務執行役員らが陳謝した。乗務予定だった先任客室乗務員(チーフキャビンアテンダント)が、社内規定で定める「出社前検査」でアルコールを検知しながら会社へ報告せず、ほかの客室乗務員から検査を促されても実施しないまま空港へ向かっていたことを明らかにした。客室本部長を務める中野淳子・執行役員は、国内外の全ステイ先での客室乗務員の飲酒を27日から禁止したことを明らかにした。

国交省での会見前に陳謝するJALの(左から)客室本部長の中野淳子・執行役員、安全統括管理者の中川由起夫・取締役常務執行役員、総務本部長の野田靖・常務執行役員=26年5月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・過去の飲酒不祥事なし
・ビールと白ワイン2杯ずつ
・出社前にアルコール検知
・検査促すも「権威勾配」
・全ステイ先で飲酒禁止
過去の飲酒不祥事なし

JALの安全統括管理者の中川由起夫・取締役常務執行役員=26年5月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
問題を起こした客室乗務員Aは50代女性で、1992年入社。2025年10月に客室の責任者「先任客室乗務員」に昇格し、今年から自身のグループを率いる立場になっていた。Aと前日に飲酒した乗務員Bは30代女性で、2019年入社のリードキャビンアテンダント。リードキャビンアテンダントは、チーフの一つ手前の職位で、各クラスの責任者などを務める立場にある。
中野本部長によると、AとBは昨年度同じグループで乗務しており、今回は久しぶりに同じ便に乗務する予定だったという。
中川常務によると、客室乗務員AとBは2人とも過去に飲酒に関する不祥事はなく、アルコール面で注意が必要な乗務員ともされておらず、勤務態度や勤怠にも問題は把握していなかったという。JALの現行制度下では、30代でチーフになる客室乗務員もいる中、客室乗務員Aの昇格は遅い部類となるが、中川常務はアルコールに関する問題が背景にあったわけではないと説明した。
ビールと白ワイン2杯ずつ
客室乗務員AとBは5月22日午後5時30分、宿泊先ホテルのラウンジで飲酒を始めた。乗務のため所定の場所に出頭すべき時刻から12時間前にあたる飲酒制限時刻は同日午後6時40分だったが、午後7時15分に最後のワインを注ぎ、午後9時25分に自室へ戻った。中野本部長によると、2人は会社側の聞き取りに対し、当初は飲酒制限時刻を意識していたものの、話が弾み飲酒を続けてしまったと説明したという。
客室乗務員Aの飲酒量は、ビール300ミリリットルを2杯と、白ワイン125ミリリットルを2杯。JALが国土交通省航空局(JCAB)の認可を得ている「運航規程」では、1ドリンクを「純アルコール10グラムを含むアルコール飲料」としており、Aは会社が定める「4ドリンク」を超えていた。
JALのアルコール検査は、自宅や宿泊先のホテルで実施する「出社前検査」と「事前検査」、空港のオフィスへ出社後に実施する「乗務前検査」、到着時に実施する「乗務後検査」の4段階で実施。このうち、出社前検査と事前検査は社内規定で定めたもの、乗務前検査と乗務後検査は航空法で定められた「本検査」となる。

JALが実施している客室乗務員のアルコール検査(同社資料から)
客室乗務員の出社前検査は、会社へのオンライン通知機能がなく、本人が報告しなければ会社は検知を把握できない仕組みで、事前検査以降はオンラインで会社に通知される。
客室乗務員Bは、飲酒制限時刻を過ぎて飲酒していたことは確認されているが、出社前検査の前に会社に対して体調不良を申し出ており、飲酒量や出頭12時間前時点の残存アルコール量は調査中としている。
出社前にアルコール検知
乗務当日の23日午前5時45分、客室乗務員Aは出社前検査で呼気1リットルあたり0.23ミリグラムのアルコールを検知したが、会社へ報告しなかった。中野本部長は、Aが検知後に動揺したと説明している一方、会社としては事前検査で0.00ミリグラムを出すために時間稼ぎをしたと判断していると説明した。
午前6時10分、客室乗務員Bは体調不良で乗務できないと会社へ連絡し、ホテルにとどまった。午前6時20分のロビー集合時には、Aが事前検査を実施していないことをほかの客室乗務員4人がアルコール検査のアプリで把握し、検査をするよう促した。しかし、Aは検査機を用意したが、実施しないまま空港へ向かう乗務員用のバスに乗った。
午前6時40分、空港オフィスでの事前検査で0.11ミリグラムを検知し、会社側のアルコールデスクがアラートを把握した。午前6時59分から7時2分にかけて再検査したが、0.10-0.13ミリグラムを継続して検知。会社は午前7時7分に客室乗務員Aを乗務不可と判断し、代替要員の手配を始めた。この影響で、Aが乗務予定だったJL252便は、定刻より42分遅れの午前8時22分に広島を出発した。
検査促すも「権威勾配」
中川常務は、現行の検査システムは2018年から2019年にパイロットの飲酒問題が相次いだ際に導入したと説明。パイロットと客室乗務員は同じシステムを使っているが、出社前検査のオンライン通知など運用には違いがあり、パイロットは出社前検査も会社とつながっているという。客室乗務員の出社前検査はオフラインで、システム対応を今後の検討課題とした。

JALの客室本部長の中野淳子執行役員=26年5月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALのアルコール検査は、同じ便に乗務する客室乗務員全員が事前検査に合格しなければ、航空法に基づく乗務前検査へ進めない仕組み。ほかの4人は、客室乗務員Aが事前検査を終えていないことを把握し、検査するよう繰り返し促していた。中川常務は「本来はホテルのロビーで全員がクリアになった段階で出発するのが通常の手順」と説明した。
客室乗務員Aに検査を促した4人は、Aが監督するグループのメンバーではなく、今回の便で同乗する客室乗務員だったが、Aは年上で職位も上の先任客室乗務員だった。中野本部長は、ほかの客室乗務員が繰り返し検査を促した一方で、Aをバスに乗せない、空港へ行かせないという行動にまでは踏み込めなかった背景として、「権威勾配と言われても仕方のない状況があった」と述べた。
事前検査でアルコールを検知した場合、JALでは機器の不具合を想定し、別の機器で「0.00」を2回確認できれば乗務可能とする社内手順がある。今回もほかの客室乗務員の検査機を使って再検査したが、数値は継続して出た。中野本部長は、最初の再検査で乗務不可と判断すべきだったと語った。
全ステイ先で飲酒禁止
今回の飲酒トラブルを受け、JALは27日から国内線、国際線を問わず、客室乗務員の全ステイ先での飲酒を禁止した。パイロットを対象としたステイ先での飲酒禁止も継続している。
客室乗務員AとBに対する処分について、中川常務は運航規程違反として厳正に対処する考えを示した。JALでは、2018年12月に乗務中の女性客室乗務員が、機内食のサービス後に疲れを感じたことから、シャンパンの小ビン(約170ミリリットル)を半分ほど飲むトラブルがあった。中川常務によると、今回のように客室乗務員がアルコール検知により交代要員を必要とした事例は、これまでなかったという。
一方、パイロットによる飲酒問題は直近で2024年12月と2025年8月にも発生。国交省から行政指導の「厳重注意」を受けている。中川常務は「これだけ当社が繰り返して発生させてしまっているところも、私自身非常に重い責任を感じている」と述べた。
今回のトラブルが23日の発生に対し、発表が27日になった理由について、中川常務は、23日の遅延発生時点では運航規程に抵触する飲酒が原因だと確認できていなかったと説明した。25日夜に飲酒が原因と判明し、その後に客室乗務員Bとの関係も出てきたため、調査を進めたという。「本来であれば昨日早い段階で伝えたいところだったが、1日遅れてしまった」と述べた。
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日本航空
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