エアライン, 官公庁 — 2025年1月24日 12:58 JST

JAL鳥取社長、飲酒問題で謝罪 従来の再発防止策「機能していなかった」

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 日本航空(JAL/JL、9201)の鳥取三津子社長は1月24日、国土交通省に再発防止策を提出した。昨年(24年)12月に、豪メルボルン発成田行きJL774便(ボーイング787-8型機、2クラス186席仕様、登録記号JA840J)の出発が機長2人(当時)の飲酒で3時間以上遅れたことなどを受け、航空局(JCAB)が行政指導にあたる「業務改善勧告」を行ったことに対するもの。鳥取社長は「重く受け止め、深く反省している。不退転の決意で再発防止を進める」と述べ、利用客の信頼回復を目指したいとした。

国交省で取材に応じるJALの鳥取社長=25年1月24日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
本部長3人「1段高い処分」へ
過度の飲酒を口裏合わせで隠ぺい

本部長3人「1段高い処分」へ

 JALはこれまで、2018年と2019年、2024年にも再発防止策を策定し、再発防止に努めていたが、鳥取社長はこれまでの現状について「策定したことで安心し、機能していなかった」と説明。社外取締役を委員長とした検証委員会を立ち上げ、再発防止を強化する考えを示した。

 今回の事案を受け、社内の処分も決定した。鳥取社長のほか、安全問題の責任を負う「安全統括管理者」を務める赤坂祐二会長を2カ月間減俸30%とするほか、直接的な責任のある安全推進本部長の立花宗和常務、運航本部長の南正樹執行役員、オペレーション本部長の下口拓也執行役員の3人は、「1段高い処分」(鳥取社長)を検討し、取締役会に諮(はか)る。また赤坂会長を安全統括管理者から解く。赤坂氏の後任は未定で、今後決定する。

 赤坂会長は、社長時代の2019年10月から安全統括管理者を務めている。後任について鳥取社長は、個人的な意見とした上で「安全統括管理者と社長は、できれば同じでないほうが望ましい」との認識を示した。

国交省で頭を下げるJALの鳥取社長=25年1月24日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

過度の飲酒を口裏合わせで隠ぺい

メルボルン空港を出発する成田行きJL774便(写真は初便)=17年9月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 アルコール検出による出発遅延は、12月1日に起きた。同日のメルボルン発成田行きJL774便に乗務予定だった機長と副機長が、乗務前日に滞在先のホテル近くのレストランで過度に飲酒。同便は機長2人のアルコール量が1リットルあたり0.00ミリグラムになったことを確認後、3時間11分遅れで出発した。JL774便は機長と副機長、副操縦士のパイロット3人1組で乗務。このうち、管理職である機長が2人とも飲酒問題に関わっていた。

 JALの社内規定では、乗務前のアルコール検査で、アルコールゼロを示す「1リットルあたり0.00mg」を確認後、パイロットを乗務させている。検査に加え、開始12時間前に体内に残るアルコール量を、純アルコール換算で40グラム相当の「4ドリンク」以下に自己制限するよう求めている。

 機長2人は過度の飲酒について口裏を合わせ、同月3日夕方に過度な飲酒を認めるまで、両者は会社側に対し虚偽の説明をしていた。JALは監督する国交省航空局(JCAB)へ6日夜に報告。航空法に基づき17日と18日に立入検査などを実施した。その結果、機長と副機長が意図的に過度な飲酒をし、口裏合わせをして隠ぺいしていたことに加え、JALでアルコール検査が適切に実施されていなかったことがわかった。

 国交省はJALに対し、12月27日に行政指導の「業務改善勧告」を行った。同便の遅延や機長2人による隠ぺいのほか、同年5月の厳重注意を受けた再発防止策などが十分に機能していないことから、1月24日までに再発防止策の提出を求めていた。

 JALは行政指導を受けた12月27日に、当該機長2人を解雇したことを明らかにした。JALグループ内の航空会社で、パイロットとして再雇用する考えもないという。JALはパイロットのステイ先での飲酒を10月に解禁したばかりだったが、メルボルンでの飲酒問題発生により、12月11日から再び飲酒禁止としている。

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国土交通省
日本航空

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