国土交通省は2月4日、昨年2024年12月に起きた飲酒問題に関与した日本航空(JAL/JL、9201)の元機長2人(懲戒解雇)に対し、航空法に基づく行政処分を行った。当該便の機長(当時)「操縦士A」を180日間の、副機長(同)「操縦士B」を210日間の航空業務停止とした。
—記事の概要—
・12月に懲戒解雇
・新安統管に中川氏
12月に懲戒解雇
この飲酒問題は、現地時間12月1日のメルボルン発成田行きJL774便(ボーイング787-8型機、登録記号JA840J)の出発前に発生。乗務前日に機長と副機長の2人が過度な飲酒を行い、同便の出発が3時間以上遅れた。JALの社内規定では、乗務開始12時間前までに体内に残存するアルコール量を4ドリンク相当以下に制限することを求めているが、2人とも大幅に超過していた。

国交省が飲酒問題を起こしたJALの元機長2人に行政処分(資料写真)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
機長は、副機長に対して飲酒量の過少申告を持ちかけ、口裏合わせをするように働きかけた上に、到着後の社内調査では虚偽の説明を行い、事実の隠ぺいを図った。
副機長も、乗務前のアルコール検査で陽性反応が出ると、アルコールが検知されなくなるまで検査を繰り返し、運航管理者への報告を怠った。副機長は過去にも飲酒に関する問題を起こしていた。
JL774便は、当該便の運航責任者「PIC(Pilot In Command)」を務める機長のほか、副機長、副操縦士のパイロット3人1組で乗務。管理職である機長資格者が2人とも飲酒問題に関わっていた。
JALはこの問題を受け、2人を12月27日付で懲戒解雇。グループ内の航空会社でもパイロットとして再雇用しない方針を明らかにした。
新安統管に中川氏
JALは国交省航空局(JCAB)へ再発防止策を今年1月24日に提出。社内処分として、鳥取三津子社長と安全統括管理者(当時)の赤坂祐二会長の報酬を2カ月間30%減額したほか、安全推進本部長、運航本部長、オペレーション本部長の3人については「1段高い処分」(鳥取社長)を取締役会で決定するとした。
赤坂会長は、安全問題の責任を負う「安全統括管理者(安統管)」を2月5日付で解任され、後任には調達本部長の中川由起夫執行役員が就いた。
再発防止策では、飲酒対策や安全管理体制の見直しに加え、パイロットの意識改革や管理体制の強化を目的とした『運航本部の組織課題への対応』も新たに追加。検証委員会が2月に発足し、社外取締役を委員長とする形で進捗管理を行う。
JALは、過去にも2018年と2019年に飲酒問題を受けた再発防止策を策定し、国交省へ提出していたが、今回の事案を受け、「策定したことで安心し、機能していなかった」(鳥取社長)として、過去の対策は十分に機能しておらず、運航本部を含めた意識改革が必要であると判断した。今後はアルコール検査体制の見直しや、飲酒傾向の管理強化、安全意識向上のための教育プログラムの実施などを進めるとしている。
業務改善勧告と再発防止策
・JAL、飲酒問題で再発防止策「運航本部の組織課題」も抽出(25年1月24日)
・JAL鳥取社長、飲酒問題で謝罪 従来の再発防止策「機能していなかった」(25年1月24日)
・JAL機長2人飲酒問題、国交省が業務改善勧告 口裏合わせや検査不備を指摘(24年12月27日)
24年12月の飲酒問題
・JAL、飲酒問題の機長2人解雇 グループ内の再雇用否定(24年12月27日)
・JAL機長飲酒問題、自主検査を手順通りせず出社 オフィスでアルコール検知(24年12月12日)
・JAL、パイロットのステイ先飲酒禁止「当面の間」(24年12月11日)
・JALパイロット、アルコール検出でメルボルン発3時間遅れ 12/1成田行き(24年12月10日)
24年7月設立の新会社「航空みらいラボ」
・JAL、調査研究・産学連携の新会社「JAL航空みらいラボ」7/1設立(24年6月14日)