エアライン, 官公庁 — 2025年11月28日 18:38 JST

JAL、飲酒パイロット乗務可否を医師が諮問 経営陣・乗務員の対話継続=再発防止策

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 日本航空(JAL/JL、9201)は11月28日、国土交通省にパイロットの飲酒問題に関する再発防止策の改訂版を提出した。ハワイで今年8月に起きた飲酒問題で行政指導の「厳重注意」を受けており、今回の改訂版は9月30日に提出した再発防止策を再構築した。医師で構成する専門家が参画し、乗務の可否などを判断する「諮問委員会」を12月1日に新設するほか、パイロットの飲酒傾向管理の運用などを確認する「レビュー委員会」も設置する。

 このほか、パイロットを対象とした乗務時のステイ(宿泊)先での禁酒は、年内いっぱい継続。JAL社員1人ひとりが「二度と飲酒に関わる不適切事案を起こさない」という自覚を持ち、全社で信頼回復に取り組む。

—記事の概要—
諮問委員会が乗務可否“助言”
乗務外れたパイロット「微減」
ステイ先で高アルコールビール3本

諮問委員会が乗務可否“助言”

国交省へ再発防止策の改訂版を提出したJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは再発防止策提出の翌日から、飲酒傾向管理の新スキームを導入。肝機能を示す数値「γ-GTP(ガンマ-GTP)」も判断材料とし、これまでの数値化データとγ-GTPを組み合わせ、飲酒リスクを6段階で評価する。このうち最も高い「1」に分類された場合は乗務できない仕組みを10月1日から採用している。

 諮問委員会は「1」に分類されたパイロットを、専門的な見地から検査の要否、乗務の可否、乗務復帰の可否を総合的に検討する。委員会には精神科医と内科医、産業医が参画し、個人に応じた復帰プログラム作成する。乗務可否は委員会が判断し、会社(JAL)に諮問する。復帰への最終判断は会社が担う。

 レビュー委員会は、飲酒傾向管理の基準や運用の維持、改善などを定期的にレビューするもので、諮問委員会の参加メンバーに加え、アルコール関連の教育・啓発、カウンセリングを担う2団体から2人参画。半年に1回レビューし、飲酒傾向管理が適切に機能しているかを確認する。

 このほか、9月30日に提出した再発防止策で策定した「経営陣とパイロット全員との対話」も継続。これまでに39回の対話を進め、2300人いるパイロットのうち500-600人との対話を済ませた。JALによると、パイロットからは「管理強化だけではなく理解・支援が必要」などの“本音”も出ているという。今後も機会を拡充し、対話を継続する。

JALが導入する専門家の知見を採用した改訂版飲酒傾向管理スキームと復帰までのフロー(同社資料からAviation Wire作成)

乗務外れたパイロット「微減」

 9月30日時点で、飲酒リスクの最も高い「1」に分類されたパイロットは6人いた。11月28日現在の人数は明らかにしていないが、微減だという。JALによると、乗務から外れた期間や復帰した日付などにより、パイロット個人の特定につながることから、非公表としていると説明した。

 10月1日から導入する飲酒傾向管理の新スキームでは、数値化したデータが低くてもγ-GTPの数値が高い場合や、γ-GTPが低くても数値化データが高い場合は、飲酒リスクの近接と判断。追加の血液検査や、生活習慣の行動変容を目指す短時間の行動カウンセリング「ブリーフインターベンション」などで健康管理を進めていく。9月30日時点で、近接に該当するパイロットは十数人いたが、現在も総量には変化がないという。

ステイ先で高アルコールビール3本

 今回の飲酒問題は、ホノルル発中部行きJL793便(ボーイング787-9型機、登録記号JA874J)に乗務予定だった男性機長(64)が、乗務前日27日の昼ごろ、ステイ先のホテルでアルコール度数9.5%のビール(1本568ミリリットル入り)を3本飲んだ。翌朝には体内にアルコールが残っていた。

 JALはJCABからの厳重注意を受け、鳥取三津子社長ら全役員37人の処分を9月17日に決定。鳥取社長は月額報酬を2カ月間30%減額した。「安統管」の中川常務と南運航本部長は同20%減額を1カ月間、社外取締役を含む全取締役と全執行役員も同10%減額を1カ月間とした(関連記事)。

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