エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2017年9月16日 10:41 JST

「797」ってどんな機体? 特集・検討進む757後継機

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 ここ数年、航空業界で何かと話題になるのが、北米の航空会社を中心に需要がある中型機757の後継機だ。次世代小型機737 MAXと、中大型機787の間に位置する「MOM(ミドル・オブ・ザ・マーケット)」の機体で、787に続く「797」が割り当てられるのではないかと臆測を呼んでいる。

 ボーイングによる757の後継機が姿を現さない中、競合のエアバスは、A321neoの最大離陸重量と燃料積載量を増やし、ペイロード(有償搭載量)と航続距離を引き上げた「A321LR」で、757の置き換え需要を取り込み始めている。

パリ航空ショーでボーイングが示した機体ラインナップ。横軸が年、縦軸が座席数を示しており、2025年の250席クラスの位置にメディアが「797」と呼ぶMOMの機体が描かれていた=17年6月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
就航は2025年頃
単通路 or 双通路

就航は2025年頃

パリ航空ショーで737 MAX 10のローンチを発表するボーイングのデニス・マレンバーグ会長、社長兼CEO(左)とケビン・マカリスター民間航空機部門社長兼CEO=17年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 6月に開かれたパリ航空ショーで、ボーイングの幹部がこの797に言及した。すでに市場調査はスタートしており、航空会社に対するヒアリングも進んでいる。就航は2025年を念頭に置いており、ビジネスが成立するとなれば、2019年ごろにはローンチカスタマーが発表され、開発が始まりそうだ。

 757は中型の双通路(ワイドボディー)機767と同時開発された単通路(ナローボディー)機。メーカー標準座席数は、標準型の757-200が2クラス仕様で約200席、胴体を延長した757-300が約250席となっている。米国の航空会社を見ると、米大陸横断路線や国内線に投入している事例が目に付く。

 パリ航空ショーでは、737 MAX 9の胴体を66インチ(約1.7メートル)延長し、最大1クラス230席仕様にできる737 MAX 10のローンチが発表された。757よりは小さいものの、ボーイングが有する現行のラインナップでは最大の単通路機となった。

パリ航空ショーのボーイングの展示エリアに搬入される737 MAX 9。737 MAX 10は胴体が約1.7メートル長い=17年6月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 797が仮にローンチした場合、ボーイングは「大きな小型機」といえる737 MAX 10とどう住み分けていくのだろうか。9月15日、来日したボーイング民間航空機部門北東アジマーケティング担当マネージング・ディレクターのダレン・ハースト氏は、「737 MAX 10と787-8のような小さなワイドボディー機では、100席くらい差があり、航続距離も異なる」と述べ、「他社が提供していない、最適な航空機をどのように提供するかだ」として、隙間産業とも言えるMOMに投入する機体の可能性を示唆した。

 マーケティング担当バイス・プレジデントのランディ・ティンゼス氏は2016年10月に来日した際、「顧客は757よりも大きく、性能が良い機体を求めている。座席数と航続距離が25%増の機体だ。この市場が、どのくらいの規模になるかを見極める必要がある」と述べている。

 ハースト氏は、797について新しく公表できるものはないとしながらも、「今の市場を見ていると、新しい機種はゲームチェンジングな要素を導入できるのではないか」と語った。797が登場すれば、787-8による需要がさほど大きくはない長距離路線のような、新しいマーケットの開拓が期待できる。757の置き換えだけではなく、787では運航コストが高いが、737 MAXではサイズが小さい路線にも投入できるだろう。

単通路 or 双通路

797は787のようなゲームチェンジャーになるのだろうか=17年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ボーイングの幹部によると、797は757と同じく、単通路機としてビジネスが成立するかを探っているという。国内の航空会社首脳も「確かにこうした市場はあるし、ボーイングから提案があった」と明かす。

 一方、国内航空会社の幹部は「乗客数を考えると、ワイドボディーのほうがいい」と話す。機体サイズによっては座席数が300席近くなることから、通路が2本あったほうが乗降時間短縮にもつながり、運航効率を向上できるという。

 海外では単通路機の前後2カ所のドアにタラップを付け、乗客を乗り降りさせる空港が多々ある。しかし、国内では関西空港でピーチ・アビエーション(APJ/MM)が、A320で実施しているのが目に付く程度で、多くは前方1カ所のドアにPBB(搭乗橋)かタラップを付ける運用だ。

 787で導入した総複合材製の胴体は、導入されない可能性が高いようだ。787の機体価格が高額な理由のひとつであることや、地上支援車両が機体にぶつかった際の修理の手間、燃費などを考えると、787のような構造ではオーバースペックだとの声が聞かれる。

 「787の燃費の良さが発揮されるのは、フライトタイムが6時間以上の路線」と、国内航空会社の別の幹部は説明する。低燃費・低騒音の新エンジンを採用し、空力特性を高めた胴体と複合材製の主翼を導入すれば、797を運航する路線特性から求められる性能向上は、おおかた実現できるという指摘も聞かれる。航空会社側は、機体価格や総合的な運航のしやすさを重視しているようだ。

 パリ航空ショーで示されたボーイングの機体ラインナップでは、757と767の後継とも受け取れるような位置づけがなされていた797。果たしてどんな機体になるのだろうか。

関連リンク
Boeing
ボーイング・ジャパン

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