エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年11月11日 16:03 JST

JAL 777-300ER、退役3機目が離日　3千枚の紙マニュアル手配に苦労

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　日本航空（JAL/JL、9201）が導入したボーイング777-300ER型機の5号機（MSN32434、LN577、登録記号N3243Q、元JA735J）が11月11日午前0時すぎ、羽田空港を離陸し日本を離れた。JALの同型機では3番目の退役で、今年9月まで約19年運航され、米アリゾナ州のツーソン国際空港へ売却先のパイロットの操縦で向かった。ほかの退役機と同様、鶴丸ロゴなどJAL塗装を落とした「白塗り」で飛び立った。

JAL社員に見送られ羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA735J＝25年11月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

　JALがJA735Jを受領したのは2006年7月19日で、初便は同年8月1日の成田発香港行きJL731便。ラストフライトは9月9日に羽田へ到着したサンフランシスコ発JL1便で、退役時のフライトサイクルは9131回、飛行時間は8万589時間30分で、座席数は現行仕様「W84」の4クラス244席（ファーストクラス8席、ビジネスクラス49席、プレミアムエコノミークラス40席、エコノミークラス147席）だった。抹消登録日は10月28日で、この日に米国籍のN3243Qに変更された。

　機体の登録抹消までわずかとなった10月4日と10日、11日の3日間、JALはJA735Jの退役記念イベントを羽田の格納庫で開催した。応募総数は約1800人で10倍を超える倍率となり、合わせて118人が参加。パイロットや整備士、客室乗務員によるトークショーやクイズ大会、機体見学を楽しんだ。

羽田空港の114番スポットへ向かうJAL 777-300ER JA735J最終便サンフランシスコ発JL1便＝25年9月9日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA735J＝25年11月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港出発前の元JAL 777-300ER JA735Jとパネルを手に記念撮影に応じるJAL社員＝25年11月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

　JALの777-300ERの退役は今回で3機目。JA735Jの売却手続きを担当したJAL調達本部航空機材・整備調達部整備グループの沓澤拓也さんは、これまで2回の退役も携わってきたが、今回初めて主担当として関係先との調整などを進めた。通常は退役から日本を離れるフェリーフライトの出発まで2カ月程度の時間があるが、今回は機材繰りなどの関係で準備期間が短くなり、退役整備など売却に必要な作業を1カ月半ほどで進めなければならず、調整が大変だったという。

元JAL 777-300ER JA735Jの売却を担当したJALの沓澤拓也さん（右）とフェリーフライトの手配を担当したJALビジネスアビエーションの土屋峻彦さん（中央）、吉田美咲さん＝25年11月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

　また、従来はJAL機が退役する際、フェリーフライトの手配は社外に頼んでいたが、新型コロナ以降はグループ会社のJALビジネスアビエーションが受託。普段は要人機やビジネスジェットの運航手配などを手掛けているが、今回は空港事業部の土屋峻彦さんと吉田美咲さんがフェリーフライトを手配した。土屋さんは「JALグループで飛んでいた飛行機を、最後までグループのスタッフで飛ばしたい、という思いがあります」と話す。

　今回は普段と比べ準備を短期間で進める必要があったが、フライトの手配よりも紙のマニュアルを用意するのに苦労したそうだ。

　「売却先から運航に必要なマニュアルを載せて欲しい、という依頼を受けたのですが、コピー用紙で3000枚くらい、ひたすら刷りました」（土屋さん）と振り返る。マニュアルの電子化が進んだ今も、売却先からはバックアップとして紙のマニュアルも求められるという。そして、準備期間が国内の物流が一部滞った時期と重なり、大量のコピー用紙を確保するのに苦労しながら、売却先が求める期日に間に合わせた。マニュアルの印刷は「内容は難しくないものの、ものすごい時間と手間がかかる作業でした」と、土屋さんは安堵した表情を見せた。

　JALは777-300ERを13機導入。初の退役は4号機（JA734J→N3243P）で、2024年9月19日に日本を離れた。2番目となった初号機（JA731J→N3243F）は、今年8月5日に羽田を離陸して売却先へ向かった。JA735Jの退役で、残り10機になった。後継機A350-1000（4クラス239席）への置き換えが進み、発注済み13機のうち10号機（JA10WJ）まで就航済みで、今年度内に11機体制となる見通し。