日本航空(JAL/JL、9201)が導入したボーイング777-300ER型機の初号機(MSN32431、LN429、登録記号N3243F、元JA731J)が8月4日夜、社員に見送られて羽田空港を出発し、日付が変わった5日午前0時すぎにC滑走路(RWY16L)から離陸して日本を離れた。JALでは今年の5月27日まで約21年にわたり運航され、売却先のパイロットの操縦で経由地のホノルルへ向かった。JALの退役機では一般的な鶴丸ロゴなどJAL塗装はすでに落とされた「白塗り」の状態で飛び立った。

JAL社員に見送られ羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・細部まで記録
・2機目の退役
細部まで記録
売却後の登録記号はN3243F。2004年6月にボーイングがJALへ引き渡すまでは飛行試験2号機(N5016R)として使用した機体で、米国籍の登録記号は2度目となった。退役時の飛行サイクルは1万606回、飛行時間は8万7615.70時間で、座席数は現行仕様「W84」の4クラス244席(ファーストクラス8席、ビジネスクラス49席、プレミアムエコノミークラス40席、エコノミークラス147席)だった。

羽田空港出発前の元JAL 777-300ER 初号機JA731Jとパネルを手に記念撮影に応じるJAL社員=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
2004年7月の就航から約21年飛び、今年5月27日の上海(浦東)発羽田行きJL80便を最後に退役した。翌28日からは機体の売却に向け、退役整備が羽田で始まった。

元JAL 777-300ER JA731Jの売却を担当した大家彰悟さん=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
初号機の売却手続きを担当したJAL調達本部 航空機材・整備調達部 整備グループの大家彰悟アシスタントマネジャーは、手続きの最初の段階からかかわってきた。JALに入社後、777-300ERのランディングギアやエンジン、油圧系統などの整備を担当した経験を持つ大家さんは「売却にあたり機体に付属させる書類を集めていたところ、20年前の整備記録もきれいに残っていました。社員みんなが愛していたのが感じられました」と話す。
これらの整備記録書類は、作業上必要とされるものとは別に、JALが独自に細かな履歴を残してきたもので、売却先が機体を評価する上で大きな役割を果たす。JALの退役機は中古市場で評価が高く、日ごろの行き届いた整備に加え、作業履歴を細部に至るまで売却先が確認できる点も高い評価につながっているという。
2機目の退役
JALは「ジャンボ」の愛称で親しまれた747-400の後継機として、2000年3月31日に777-300ERの発注を決定。ローンチカスタマーの1社として、航空会社の立場で開発に協力してきた。5日に日本を離れた初号機は、ボーイングがJALへ引き渡すまで飛行試験2号機として使用していた機体で、JALは現地時間2004年6月15日に米シアトル近郊のエバレット工場で受領し、同年7月1日の成田-シンガポール線から運航を開始した。中距離国際線へ投入後は、ニューヨークやロンドンなどの長距離路線を747-400から引き継いだ。

羽田空港の111番スポットへ進入するJAL 777-300ER初号機JA731J最終便上海発JL80便=25年5月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

777-300ERの新仕様機SKY SUITE 777の改修初号機JA731J=13年1月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
エンジンはGE製GE90-115Bを2基搭載。4発機だった747-400と比べ、燃料効率が約20%向上した。1発ずつスタートさせた直後は爆音を轟かせるものの、すぐに静かになるエンジン音は、同じGE90でも推力が異なる777-200ERとは異なる特徴だ。
JALが経営破綻後の2013年1月9日には、全クラスに新シートを導入した新仕様機「SKY SUITE 777(スカイスイート 777)」に全面改修。初便は成田発ロンドン行きJL401便だった。最初の改修機となったのが初号機で、全席から通路へアクセスできるフルフラットシートのビジネスクラスや、足もとのスペースを最大約10センチ広げて男性客でも足が組めるエコノミークラスのシートが、再生JALの目玉となった。
エアバスA350-900型機が就航した2019年には、シートカバーなどの刷新が始まった。退役時の最終仕様はこの時のもので、「世界に通じる日本の美意識とJALブランドの表現」をコンセプトに同年8月から改修が始まり、A350の内装と連続性のあるインテリアにリニューアルした。

退役整備が進むJALの777-300ER初号機JA731Jのファーストクラス=25年6月3日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
JALは777-300ERを13機導入。初の退役は4号機(JA734J→N3243P)で、2024年8月20日に退役し、9月19日に日本を離れた。初号機は同型機で2機目の退役となり、残り11機になった。後継機A350-1000(4クラス239席)への置き換えが進み、発注済み13機のうち10号機(JA10WJ)まで就航済みで、今年度内に11機体制となる見通し。
一方、777-300ERは機体を製造するサプライチェーンの混乱が収束していないことなどから、A350以外の機体も含めてメーカーからの納入遅延が生じた際に対処できるよう、一部機体の退役を当初計画より後ろ倒しし、機材繰りに余裕を持たせる。

羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を離陸する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731JのエンジンGE90-115B=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つ元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA731Jのコックピットから手を振るパイロット=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発しC滑走路へ向かう元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を離陸する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を離陸する元JAL 777-300ER JA731J=25年8月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
関連リンク
日本航空
JA731J
・JAL、777-300ER初号機が退役 破綻後の新仕様改修も1番手、元ボーイング試験機(25年5月27日)
・JAL、売却機の「退役整備」とは 777-300ER初号機からは「予備パーツ」(25年6月3日)
・JAL、777-300ER初号機の退役整備開始 21年で8万7615.70時間飛ぶ(25年5月28日)
・JAL 777-300ER初号機、羽田発最終便が上海へ LAから変更、5/27帰着便で退役(25年5月26日)
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初の退役機JA734J
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777-300ERの動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・JAL初の777-300ER退役機 元JA734Jが離日
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JA701Jはビクタービルをローパスしてロサンゼルスへ
・JALの777-200ER、初号機が離日 ”飛行機の墓場”をローパス(23年5月17日)
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・【4K】”飛行機の墓場”をJAL 777-200ER初号機JA701Jがローパス【Victorville】
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