ANAホールディングス(ANAHD、9202)が100%出資するエアージャパン(AJX/NQ)が、自社ブランド「AirJapan」の運航を2026年3月で終了することから(関連記事)、10月から改修に着手したボーイング787-8型機の3号機(登録記号JA802A)は、AirJapan仕様機として11月に就航後、5カ月で運航を終えることが決まった。運航終了後の使途は決まっておらず、エンジン不具合の改修作業で運航できない全日本空輸(ANA/NH)の787が数機あることから、当面は予備エンジンの供給元として活用することも検討している。

2011年11月の復興応援フライトで福島空港を低空で通過するANAの787-8 JA802A=11年11月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
AirJapan仕様への改修対象は、ANAが初期導入した787-8。改修が始まった3号機は、ANAの787としては2号機(登録記号JA802A)で、ANAが導入当初は初号機(JA801A)とともに、機体後方に濃紺のアクセントをあしらった特別塗装で運航していたが、2017年10月に現在の通常塗装「トリトンブルー」に塗り替えられた。
特別塗装は白いボディーに濃紺のアクセントが入ることから、航空ファンからは“鯖”(サバ)塗装とも呼ばれ親しまれてきた。前部胴体に「787」と大きく描き、後部の藍色に交差するラインは「ANAのネットワーク」と「ANAのプロダクトサービスブランド」を表現した。

AirJapan便に投入するエアージャパンの787-8初号機JA803A=24年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

AirJapan便に投入する787-8のシート=24年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
3号機の改修も、これまでの2機と同じく中国・厦門(アモイ)で実施。トリトンブルーで最後の商業運航は、10月14日のバンコク発羽田行きNH878便となり、アモイへは翌15日に向かった。
AirJapan仕様は、シートピッチが海外のFSCのエコノミークラスと同等の32インチ(約81センチ)で、東南アジアのLCCで主流の28-29インチより広くした。ANAの国際線用787は34インチ、国内線用は31インチで、グループ内では中間となり、中距離国際線でも過ごしやすくした。
3機体制になることで、AirJapan便は成田-シンガポール線を現在の週5往復から週7往復(1日1往復)に増便する。

伊丹の格納庫に到着した特別塗装最終日を迎えたANAの787 2号機JA802A=17年9月 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

通常デザインへの再塗装が進むANAの787-8の2号機JA802A=17年10月 PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire

特別塗装から通常デザインに塗り直されたANAの787-8の2号機JA802A=17年10日 PHOTO: Motoyoshi OHMURA/Aviation Wire
AirJapan便の運航終了後、ほかのANA仕様機とは客室が大きく異なることから、ロールス・ロイス製エンジン「トレント1000(Trent 1000)」の不具合対策でエンジンを降ろしているANA仕様機の予備エンジンとして活用するなど、使途を今後検討する。
ボーイングは民間機の製造を管理する上で「Line Number(LN、ラインナンバー)」と呼ぶ番号を使用しており、787はLN1から6までが飛行試験機、LN7以降が量産機となっている。AirJapan仕様の初号機JA803Aは、LN順では787初の量産機で、2号機のJA801AがLN8、3号機のJA802AがLN24となる。ANAHDは当初、初期導入の787のうち、6機をAirJapan仕様に改修予定だった。
787はデリバリー開始当初、機体の設計重量超過に悩まされていた。複合材を多用した胴体の強度が設計通りに出ず、補強材で重量がかさみ、航続距離もカタログ通りではなかった。「Terrible Teens(魔のティーンズ)」と呼ばれ、長らく引き取り手がなかった機体もみられた。
LN7から22までは設計重量超過が何らかの形で生じており、LN23から33は重量が超過しているものの、発注した航空会社が許容できるレベル、LN34から89までは重量軽減が進み、LN90以降はカタログスペックを達成したと言われている。
関連リンク
AirJapan
AirJapan仕様
・AirJapan、3月で運航終了 ANA便運航に専念、787はエンジン捻出検討(25年10月30日)
・ANA新ブランドAirJapan、787お披露目 シートピッチ広めで訪日客狙う(24年2月6日)
・新ブランドAirJapanの初号機、早朝の成田着 ANAのJA803A改修、2/9就航(24年1月26日)
JA802A
・鯖塗装からトリトンへ 写真特集・ANA787 2号機リペイント(18年1月11日)
・ANAの787 2号機、再塗装終え伊丹から成田へ 通常塗装初便はプノンペン行き(17年10月24日)
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