エアバスは、カンタス航空(QFA/QF)の超長距離国際線計画「プロジェクト・サンライズ」向けに開発しているエアバスA350-1000ULR(Ultra Long Range)の認証飛行試験を進めている。試験に使用しているのは、現地時間6月2日に初飛行したカンタス向け量産初号機(MSN 707)で、1000個を超える専用センサーを含む約5トンの試験計測装備を搭載した。試験終了後は、商用運航用の機体として整備される。

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機に設置されたダミー人形(同社提供)
—記事の概要—
・最大22時間飛べるA350
・量産機に穴開けず計測機器設置
・ダミー人形で客室環境検証
最大22時間飛べるA350
A350-1000ULRは、超長距離飛行に対応する改修を施したA350-1000の派生型。カンタスが2017年に立ち上げたプロジェクト・サンライズ向けに開発が進められており、シドニーからロンドンまたはニューヨークまでの直行便を想定している。最大22時間の連続飛行に対応し、カンタスは同型機を12機発注している。

初飛行するA350-1000ULR初号機(エアバス提供)
カンタス向け量産初号機は2025年後半にロールアウトし、今年6月2日に初飛行した。認証飛行試験は約2カ月間で、飛行時間は約80時間を見込む。試験終了後は商用運航用に整備され、将来はカンタスの長距離国際線を担うフラッグシップ機として投入される。
同型機は、標準型のA350-1000をベースに、RCT(後部センタータンク)を組み込み、燃料搭載量を2万リットル増やした。燃料システムも改修し、新しいギャレー(厨房設備)空調冷却システム「NGAC(New Generation Air Chiller)」を導入する。これらの変更により、就航前にEASA(欧州航空安全庁)の認証を取得する必要がある。
量産機に穴開けず計測機器設置
カンタス向け量産初号機には、認証飛行試験用に約5トンの専用試験計測装備を搭載した。1000個を超える専用センサーを含む試験装備の8割は、機体の生産工程中に組み立て・搭載された。客室には、試験担当者用のワークステーションも設けている。

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機で試験するエアバス試験チームのメンバー(同社提供)

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機でデータを計測するエアバス試験チームのメンバー(同社提供)

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機で主脚を点検するエアバス試験チームのメンバー(同社提供)
試験に使うこの機体は試験専用機ではなく、実際に乗客を乗せる量産機となる。このため、通常の試験機のような大規模な装備取り付けや穴開けを避け、客室を傷めない非破壊・軽量型の計測装備を採用した。視認性を高めるためオレンジ色にしたケーブルは、既存の客室レールや構造部に通し、新たな加工を抑えている。
追加する燃料タンクには、燃料流量や温度、酸素濃度を各飛行段階で監視する高感度センサーを取り付けた。燃料システムの変更に加え、客室内では長時間飛行時の環境を検証するため、温度を広範囲に計測する。
ダミー人形で客室環境検証
NGACは、従来のA350で採用している集中型の冷却方式から、各ギャレーを個別に冷却する方式へ変更するもの。客室環境を検証するため、人と同等の熱負荷を発生させるダミー人形を使い、実際の乗客を乗せる前に快適性を確認している。
エアバスは、今回の飛行試験をA350-1000ULRの認証だけでなく、今後の派生型認証の進め方にもつながる取り組みと位置づける。1000個を超えるセンサーから得たデータは、A350客室のデジタルモデルの再調整に活用し、将来の客室仕様をデジタル環境で検証する精度向上につなげる。

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機(同社提供)

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機とエアバスの試験チーム(同社提供)

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機と写真に収まるエアバス試験チームのメンバー(同社提供)

A350-1000ULRのカンタス向け量産初号機と写真に収まるエアバス試験チームのメンバー(同社提供)
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