BAEシステムズ、ロールス・ロイス、MBDA UKの3社は現地時間7月17日、イギリス国防省とともに日英伊3カ国による次世代戦闘機を開発するための実証機「Combat Air Flying Demonstrator(戦闘機飛行実証機)」の機体デザインを公開した。英国での戦闘機の有人実証機開発は40年ぶりで、2028年までの初飛行を目指す。

日英伊3カ国による次期戦闘機開発に向けてBAEなどが手掛ける実証機「Combat Air Flying Demonstrator」(同社提供)
今回開発する実証機は、ステルス対応機能の統合を含む新技術の試験を目的に設計。日英伊3カ国による「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」で共同開発される次世代ステルス戦闘機の製造プロセスの確立と、開発リスクの低減を図る。構造重量で3分の2にあたる部分が製造段階に入り、主構造や主翼、垂直尾翼などは、英ランカシャーにあるBAEの施設で製造が進んでいる。
BAEによると、実証機の開発は、先進的な設計手法や製造技術の進化を加速させているという。これにより、航空機の製造にとどまらない恩恵が期待され、英国の産業競争力の強化につなげる。
BAEのエンジニアは、3Dプリンティング、協働ロボット(コボティクス)、デジタルツイン、モデルベースシステムズエンジニアリング、仮想シミュレーションなどの先進技術を活用し、航空機設計・製造の現場に立っている。
また、BAE、ロールス・ロイス、英国空軍(RAF)のテストパイロットは、実証機専用のシミュレーターによる訓練飛行を累計300時間以上実施。模擬飛行試験では、複雑な操作時の飛行制御システムを評価し、初飛行前に機体の操縦性や性能に関する重要なデータを収集している。
一連の取り組みで、軍用機の製造にかかる時間とコストの削減が見込まれる。また、英国は、世界の航空宇宙分野で主導的地位を維持するために不可欠な、自国主導の設計・技術・製造能力の確保を目指している。

ファンボロー航空ショーでお披露目され空自向けデザインが投影されたGCAPの新モックアップ=24年7月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
GCAPは、2035年の就役を目指す次世代ステルス戦闘機開発計画で、2021年から2025年までのコンセプト策定と評価段階を経て、2025年から2035年までが共同設計・開発期間、2035年から2060年以降が製造段階となる。2035年以降も継続的な開発が予定されている。英国とイタリアは、英独伊西の欧州4カ国が共同開発した戦闘機「ユーロファイター」の後継機である「テンペスト」の開発をGCAPに統合。日本ではF-2戦闘機の後継として位置付けられている。
機体は英BAEシステムズ、伊レオナルド、三菱重工業(7011)が開発主体を務め、エンジンは英ロールス・ロイス、伊アヴィオ、IHI(7013)、ミッションアビオニクスシステムは英レオナルドUK、伊レオナルド、日本の三菱電機(6503)がそれぞれ主導する。
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