日英伊3カ国が共同開発する次世代ステルス戦闘機プロジェクト「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」の機体設計・開発を担う合弁会社「エッジウィング(Edgewing)」が現地時間6月20日、英国に設立された。2035年の就役を目指して開発が本格化する。エッジウィングの本部は英国に置き、GCAPを監督する政府間組織「GIGO(GCAP International Government Organisation)」との連携体制を築く。

ファンボロー航空ショーでお披露目され空自向けデザインが投影されたGCAPの新モックアップ=24年7月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
エッジウィングは、英BAEシステムズ、伊レオナルド、日本航空機産業振興(JAIEC)の3者が共同で設立したジョイントベンチャー(JV)。機体設計・開発の責任を担い、2070年代以降まで設計管理を続ける。英国、イタリア、日本それぞれの国内に拠点と共同チームを設け、3カ国一体で進めていく。日本のJAIECは、一般社団法人・日本航空宇宙工業会(SJAC)と三菱重工業(7011)が共同出資で設立し、2024年7月から事業を始めている。
エッジウィングのCEO(最高経営責任者)には、伊レオナルド・アビオニクス部門の元マネージングディレクターであるマルコ・ゾフ氏が就任。「エッジウィングの発足はGCAPの中心に立つ重要な節目だ。英伊日3カ国の人材の力を結集し、次世代戦闘機の開発とともに、パートナーシップ、革新、信頼の新たな世界標準を築いていきたい」と意欲を語った。
GIGO首席行政官(元防衛審議官)の岡真臣氏は「エッジウィング発足は国際共同開発プログラムの重要な前進だ。GIGOとエッジウィングが有効で力強い協力関係を築くことがGCAP成功の鍵となる。新たなパートナーシップのモデルを確立できると確信している」とコメントした。

ファンボロー航空ショーでお披露目されたGCAPの新モックアップ=24年7月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
GCAPは、2035年の就役を目指す次世代ステルス戦闘機開発計画で、2021年から2025年までのコンセプト策定と評価段階を経て、2025年から2035年までが共同設計・開発期間、2035年から2060年以降が生産段階となる。2035年以降も継続的な開発が予定されている。英国とイタリアは、英独伊西の欧州4カ国が共同開発した戦闘機「ユーロファイター」の後継機である「テンペスト」の開発をGCAPに統合。日本ではF-2戦闘機の後継として位置付けられている。
機体は英BAEシステムズ、伊レオナルド、三菱重工業(7011)が開発主体を務め、エンジンは英ロールス・ロイス、伊アヴィオ、IHI(7013)、ミッションアビオニクスシステムは英レオナルドUK、伊レオナルド、日本の三菱電機(6503)がそれぞれ主導する。
関連リンク
Edgewing
BAE Systems
Leonardo
三菱重工業
Team Tempest(Royal Air Force)
ファンボロー航空ショーで新モック
・日の丸入りも披露 日英伊の次期戦闘機、ファンボローで新モックアップお披露目「2025年は非常に重要な節目」(24年7月28日)
GIGO
・次期戦闘機、日英伊3カ国機関の初代トップに岡・元防衛審議官 35年配備(24年11月20日)
JAIEC
・次期戦闘機の新会社「日本航空機産業振興」事業開始 SJAC・三菱重工出資(24年7月10日)
次期戦闘機の動向
・防衛省、次期戦闘機に914億円 24年度予算案(23年12月24日)
・日英伊の次期戦闘機、BAEと三菱重工、レオナルドが3社協定合意(23年9月12日)
・日英伊の次期戦闘機、英国防省が1千億円超え大規模投資 35年配備へ(23年4月15日)
・次期戦闘機、模型を防衛展示会に出展 幕張メッセDSEI Japan(23年3月17日)
・次期戦闘機、三菱電機がレオナルドなどと協業契約 アビオニクスを共同開発(23年3月16日)
共同開発発表
・次期戦闘機、日英伊3カ国共同開発 F-2後継35年配備へ、米とは無人機開発(22年12月9日)
・IHI、次期戦闘機のエンジン参画 日英伊が共同開発(22年12月10日)
テンペスト
・英次世代戦闘機テンペスト、前部胴体を公開 日本も参画、5年以内に初飛行=ファンボロー航空ショー(22年7月21日)
・BAE、英次世代戦闘機テンペスト向け新工場(20年7月14日)