日本航空(JAL/JL、9201)は、長距離国際線を中心に投入しているボーイング777-300ER型機の初号機(MSN32431、LN429、登録記号JA731J)を退役させる。同型機の退役は、2024年8月に商業運航を終えた4号機(JA734J)に続き2機目となり、初号機の最終便は羽田発が5月26日のロサンゼルス行きJL16便で、羽田へ27日に戻るロサンゼルス発JL15便で退役し、整備作業を数カ月かけて実施する見通し。
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JALの777-300ER新仕様機SKY SUITE 777初号機にもなった退役するJA731J=13年1月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

777-300ERの新仕様機SKY SUITE 777の改修初号機JA731J=13年1月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALは「ジャンボ」の愛称で親しまれた747-400の後継機として、777-300ERを13機発注。ローンチカスタマーとして、航空会社の立場で開発に協力してきた。今回退役する初号機は、米シアトル近郊のエバレット工場で現地時間2004年6月15日に受領し、同年7月1日の成田-シンガポール線から運航を開始した。シンガポールなどの中距離国際線へ投入後、ニューヨークやロンドンなどの長距離路線を747-400から引き継いだ。
エンジンはGE製GE90を2基搭載。4発機だった747-400と比べ、燃料効率が約20%向上した。
初号機は就航当時、政府によるビジット・ジャパン・キャンペーンの「Yokoso! Japan」のロゴをまとっていた。JALはJALは全13機を2004年から2009年にかけて年2-3機のペースで受領し、初の退役機となったのは4号機(JA734J)で、2024年8月20日のシドニー発羽田行きJL52便を最後に退役し、1カ月後の9月19日に売却先の米国へ向かった。

777-300ERの新仕様機SKY SUITE 777の改修初号機JA731Jとともにお披露目されたJALの制服=12年12月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JA731Jのベッド状態(手前)とシート状態のビジネスクラスシート=12年12月20日
2013年1月9日には、全クラスに新シートを導入した新仕様機「SKY SUITE 777(スカイスイート 777)」が就航。最初の改修機となったのが今回退役する初号機で、新シートの開発はJALが経営破綻した2010年春にスタートし、ビジネスクラスに導入した全席から通路へアクセスできるフルフラットシートや、足もとのスペースを最大約10センチ広げて男性客でも足が組めるエコノミークラスのシートが目玉となった。機内食も“空の上のレストラン”をコンセプトに新メニューを開発し、宿泊設備を備えたレストラン「オーベルジュ」を目指した。
その後、2019年8月からはシートカバーなどの刷新をスタート。「世界に通じる日本の美意識とJALブランドの表現」をコンセプトに、同年9月1日に国内線に就航したエアバスA350-900型機の内装と連続性のあるインテリアにリニューアルした。

照明のLED化など改修された現行のJALの777-300ER ファーストクラス(写真はJA738J)=19年8月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
現行仕様「W84」の座席数は4クラス244席。ファーストクラス8席、ビジネスクラス49席、プレミアムエコノミークラス40席、エコノミークラス147席となる。後継機A350-1000(4クラス239席:ファースト6席、ビジネス54席、プレエコ24席、エコノミー155席)は昨年2024年1月24日に就航し、発注済み13機のうち9機を受領済みで、2025年度は11機体制となる見通し。
一方で、新型コロナに端を発するサプライチェーンの混乱や、トランプ関税の影響も懸念されることから、JALはA350-1000で置き換えている777-300ERの退役を一部後ろ倒しする方針で、鳥取三津子社長は「長距離路線をしっかりつなぐ」との考えを示している。
初号機の商業運航最終便の運航スケジュールは、ロサンゼルス行きJL16便が羽田を26日午後5時に出発し、同日午前10時55分着。折り返しの羽田行きJL15便は26日午後1時40分に出発して、27日午後5時25分に羽田へ戻り、約21年間の運航を終える。
JL15便で羽田へ帰着後は、売却に向けた整備作業を実施予定。初号機の退役により、JALの777-300ERは11機となる。一方、今年の夏ダイヤ初日3月30日からは羽田-ヘルシンキ線に777-300ERを初投入し、5月31日に開設する成田-シカゴ線も777-300ERで運航し、いずれもファーストクラスを設定している。
JA731J最終便の運航スケジュール
JL16 羽田(26日17:00)→ロサンゼルス(26日10:55)
JL15 ロサンゼルス(26日13:40)→羽田(27日17:25)
関連リンク
日本航空
ラストフライト
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・JAL 777-300ER初号機、羽田発最終便が上海へ LAから変更、5/27帰着便で退役(25年5月26日)
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初の退役機JA734J
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777-300ERの動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・JAL初の777-300ER退役機 元JA734Jが離日
・JAL 777-300ER 新インテリア初号機の機内(JA738J)
写真特集・JAL 777-300ER機内デザイン刷新
(1)黒を基調としたビジネスクラス
(2)ワインレッドと黒のプレエコ
(3)エコノミーはA350と同じグレー系
(4)シックな壁面やウォシュレット完備の化粧室
写真特集・JALスカイスイート777ができるまで
第1回 シート外した機内は広大な空間
第2回 新シート244席を手作業で
最終回 格納庫離れる最終改修機
777-200ER JA703J
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動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
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