エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年5月15日 19:30 JST

スカイマーク、737-10納入遅れで27年度 本橋社長「変数が極めて多い」

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 スカイマーク(SKY/BC、9204)の本橋学社長は5月15日、次世代機ボーイング737 MAXのうち、最大サイズの737-10(737 MAX 10)の受領時期を2027年度に後ろ倒しすると発表した。ボーイング側の開発遅延などによるもので、標準型の737-8(737 MAX 8)は2026年3月に初受領を予定している。一方、737-8も2機目以降が計画通り引き渡されるかは不透明で、本橋社長は「変数が極めて多い」として、さらなる遅延にも備える。

スカイマークが導入する737-10(手前)と737-8の模型=23年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
19%増の210席
737MAX受領「変数が極めて多い」
25年3月期実績と26年3月期予想

19%増の210席

 スカイマークの現行機材は、737-800(1クラス177席)が29機。後継機材として737-8を6機リース導入し、購入機として3機(確定2機、オプション1機)発注した。リース機と確定発注の購入機を合わせると8機で、オプションを行使すると9機になる。日本初導入となる737-10はすべて購入機で、3機(確定2機、オプション1機)発注した。

737-10の飛行試験機=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

737-10飛行試験機のコックピット=23年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 このうち、最初に受領する737-8の座席数は、従来と同じ1クラス177席。リース機の受領を当初は2025年4-6月期からとしていたが、2024年5月15日発表の「2025年7-9月期以降」、11月11日発表の「2026年1-3月期以降」を経て、今回の発表で2026年3月となった。購入機の737-8は、従来通り2026年度に受領を予定している。

 座席数が約19%増の1クラス210席となる737-10は、すべて購入機。2026年度から受領する予定だったが、機体の安全性を示す「型式証明」をFAA(米国連邦航空局)から取得できていないため、2027年度に後ろ倒しする。スカイマークは成長戦略で737-10を重要な機材と位置づけており、提供座席数を増やすことで、羽田-福岡線など国内幹線で発生している需要の取りこぼし解消を目指す。

 一方で、737-10の受領遅延による収益への影響は限定的としている。

737MAX受領「変数が極めて多い」

 本橋社長は、737 MAXの受領時期について「ボーイング、FAA、サプライヤー、政治的な部分と、変数が極めて多い。我々ができることは、カウンターパートであるボーイングやリース会社に新機材の必要性を訴え、事業計画に沿ったタイミングを働きかけることに尽きる」と説明。「最大限努力してもコントロール外のものもあり、機材稼働を上げたりリース機の契約延長など、小さなことも含めて工夫していく」と語った。

737 MAXの受領見通しを説明するスカイマークの本橋学社長=25年5月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、仮に737-8の初号機が計画通り受領できたとしても、2機目以降が計画通りに引き渡されるかは不透明だ。航空会社が新機材を導入する場合、初期段階で2機は受領できていたほうが、機材繰りの柔軟性や整備発生時の余裕があり、1機だけ異なる機材を運航することは負担の増加につながりかねない。

 737-8の2号機以降の受領時期について、「交渉はまとまっていない。1機よりは2機のほうが機材繰りとして効率的。我々が望むデリバリータイミングが実現できるようにしたい」と語った。

 スカイマークが策定した2025-2029年度の中期経営目標では、2024年度は29機だった機材数を、2025年度は737-8の初受領により30機、2026年度以降は33機とし、既存機を置き換えていく。

 また、トランプ関税による機体価格やリース料、部品代などへの影響については、「現段階で取引先から通知は受けていない。情報収集に努めており、サプライヤーによっては米国を経由しない形での供給を検討すると聞いている」と語った。

25年3月期実績と26年3月期予想

 15日に発表したスカイマークの2025年3月期通期決算(非連結、日本基準)は、純利益が前期(24年3月期)比28.4%減の21億4600万円。事業収益は過去最高となる4.6%増の1088億9300万円、営業利益は60.9%減の18億2600万円、経常利益は89.8%減の7億6000万円だった。年間配当は1株あたり3円、配当性向35%を予定している。

 2026年3月期通期の業績予想は、事業収益が2025年3月期比7.7%増の1173億円、営業利益が9.5%増の20億円、経常利益が2.76倍の21億円、純利益は44.1%減の12億円を見込む。ヘッジ後の為替は1ドル142.1円、ドバイ原油は1バレル75.1ドルを想定している。

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