エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2024年5月15日 19:39 JST

スカイマーク、737MAX受領遅れ25年7月以降 -10は26年度後半

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 スカイマーク(SKY/BC、9204)は5月15日、ボーイング737 MAXの受領開始を2025年7-9月期(第2四半期)以降に後ろ倒しすると発表した。これまでは同年4-6月期(第1四半期)を計画していたが、ボーイングの品質改善が遅れているため。一方、日本の航空会社で初めて発注した超長胴型の737-10(737 MAX 10)は、現時点で2026-27年度の受領を見直さずに維持する。

スカイマークが導入する737-10(手前)と737-8の模型=23年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
737MAX遅延「さしたる影響はない」
737-10で幹線取りこぼし解消

737MAX遅延「さしたる影響はない」

 スカイマークは2022年11月10日に、737-8(737 MAX 8)を6機リース導入し、購入機として737-8と737-10を2機種計最大6機を導入すると発表。737-8はリース機を当初は2025年4-6月期からとしていたが、1四半期後ろ倒しして7-9月期以降を予定している。一方、購入機の737-8は従来通り2026年度、737-10も2026-27年度の計画を据え置いた。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露する737-10=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 洞駿(ほら・はやお)社長は「ボーイングの問題は不安材料ではある。収入ベースで影響がないということはないが、さしたる影響はない」との見方を示した。納入遅延については、契約するリース会社から連絡が入ったという。

スカイマークの洞社長=24年5月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方、本邦初導入の737-10は、製造国が機体の安全性を証明する「型式証明」を取得できていない。ボーイングは開発を発表した2017年6月の時点で、納入開始は2020年を予定していたが、その後2023年に延期された。今年1月にアラスカ航空(ASA/AS)が運航する737-9(737 MAX 9)のドアプラグが離陸直後に脱落する事故が起きると、FAA(米国連邦航空局)の監査が厳しくなり、納入開始時期は明確になっていない。

 洞社長は「我々が受領するのは2026年度の後半で、第4四半期(27年1-3月期)くらいだ」との見通しを述べ、今後もボーイングからの報告など状況を注視していくという。

 FAAはボーイングに対し、1月のドアプラグ脱落事故以前にも、787の品質問題などで厳しい注文をつけている。事故を受けてFAAが今年に入り実施した737 MAXの製造工程の監査では、監査項目89件のうち33件が不合格となるなど、問題が長期化。また、737 MAXの品質問題を内部告発したボーイングのサプライヤーである米スピリット・エアロシステムズの元従業員が、4月30日に亡くなっている(関連記事1)。

 737 MAXの標準型は、737-800の後継となる2016年1月に初飛行した737-8(メーカー標準座席数1クラス189席)。もっとも胴体が短いのが737-700の後継機737-7(737 MAX 7、同172席)で、737 MAX 8の座席数をLCC向けに増やした737-8-200(737 MAX 200、同210席)、737NG(次世代737)で最大サイズだった737-900/-900ERの後継機737-9(737 MAX 9、同220席)、胴体長がもっとも長い737-10(737 MAX 10、同230席)をそろえる。

 737-10を発注済みの航空会社のうち、ユナイテッド航空(UAL/UA)は4月に、発注済みの一部を737-9に変更すると発表している(関連記事2)。

737-10幹線投入で取りこぼし解消

 スカイマークの737-10は、座席数が1クラス210席。737-8や現行機737-800の1クラス177席と比べて提供座席数が19%増え、羽田-福岡線など国内幹線で発生している需要の取りこぼし解消を目指す。

スカイマークの737-800。座席数が約2割増える737-10で取りこぼし解消を目指す=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2024-28年度の中期経営計画では、最終2028年度に売上高にあたる事業収益が1500億円以上、営業利益は150億円以上、自己資本比率は40%以上を目標に掲げており、収益機会の拡大やコストメリットが見込まれる737-10の受領が遅れると、中経にも影響が生じる可能性がある。

 15日に発表した2024年3月期通期決算は、純利益が前期(23年3月期)比47.7%減の29億9700万円だった。事業収益が22.9%増の1040億7500万円、営業利益が35.2%増の46億6800万円、経常利益が2.0倍の74億6300万円と増収増益になったものの、繰延税金資産の減少などによる法人税等調整額が生じたことで最終利益は前期を下回った。

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