ボーイング、737MAX製造工程で89件中33件不合格 787内部告発者は死亡

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 ボーイング737 MAX 9(737-9)のドアプラグが離陸直後に脱落した1月の事故後、FAA(米国連邦航空局)が実施した737 MAXの製造工程の監査で、89件中33件が不合格だったことがわかり、ニューヨーク・タイムズが現地時間3月11日に報じた。また、787の製造工程の問題点を内部告発したノースチャールストン工場の元従業員が遺体で見つかったと、BBCが11日に報じた。

 ボーイングの不具合は慢性化しており、航空会社への納入遅延も常時発生している。

シアトルのレントン空港から初飛行する737 MAX 8初号機。製造工程の不具合問題が長期化している=16年1月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
737MAX:スピリットも不合格
787:内部告発者が死亡
ANAの787-10も納入遅延

737MAX:スピリットも不合格

 FAAは、今年1月5日に米オレゴン州のポートランド国際空港で起きたアラスカ航空(ASA/AS)の737 MAX 9(登録記号N704AL)のドアプラグが脱落した事故後、ボーイングの生産体制に対する監視を強化。マイケル・ウィテカー長官は24日、「このプロセスで明らかになった品質管理上の問題が解決されたと我々が納得するまで、ボーイングからの生産拡大要請や、737 MAXの生産ライン増設の承認には応じない」との声明を発表している。

左後方のドアプラグが脱落したアラスカ航空の737 MAX 9の機内(NTSB提供)

 サプライヤーの米スピリット・エアロシステムズも含めて監視を強化しており、ニューヨーク・タイムズがFAAの説明資料を確認したところ、スピリットに焦点を当てた監査では13件中7件が不合格だったという。

 FAAは3月4日に、ボーイングの製造工程管理、部品の取り扱いと保管、製品管理に関するコンプライアンス違反の問題を特定したと発表。FAAはボーイングに対し、行動計画の概要を示すために90日間の猶予を与えているほか、スピリットの施設に対する立入調査を継続する見通し。

 また、ウィテカー長官は10日、乗客149人と乗員8人の計157人が犠牲となったエチオピア航空(ETH/ET)の737 MAX 8墜落事故(アディスアベバ発ナイロビ行きET302便、ET-AVJ)から5年が過ぎたことを受け、「157人をしのんで欲しい。この悲劇から学んだように、私たちは継続的に改善し、航空安全の向上へのコミットメントを強化しなければならない」とコメントした。

アラスカ航空の737 MAX 9から脱落したドアプラグ(NTSB提供)

787:内部告発者が死亡

 ボーイングは737 MAXのほか、787の製造工程でも以前から問題が指摘されている。米サウスカロライナ州にあるボーイングのノースチャールストン工場で品質管理者として働き、製造工程の問題点を内部告発したジョン・バーネット氏(62)が3月9日、チャールストンで遺体となって発見されたことをBBCが11日に報じた。

ボーイングのノースチャールストン工場でセレモニー会場へ牽引される787-10初号機=17年3月31日 PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire

 BBCの報道によると、バーネット氏は2017年に健康上の理由で退職するまでボーイングに32年間勤めており、亡くなる数日前に内部告発訴訟の証拠を提出していたという。

 787の最終組立工場はかつて2カ所あり、最初に製造を開始したワシントン州シアトル近郊のエバレットと、2011年6月に完成し同年に操業を開始したノースチャールストンで製造していたが、2021年3月にノースチャールストンの「BSC(ボーイング・サウスカロライナ)」へ集約した。

ボーイングのノースチャールストン工場=17年3月31日 PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire

 BBCの報道によると、バーネット氏は2019年のBBCによる取材に対し、生産ラインで会社側からプレッシャーを掛けられた作業員が、基準を満たしていない部品をゴミ箱から持ってきて機体に取り付けることもあったという。

 2020年には、787の胴体接合部に不具合が発覚。水平尾翼の製造工程や後部胴体結合部などで問題が見つかり、その後も品質問題が指摘され、2021年10月には過去3年間に使われたチタン製部品の中に、本来の強度に満たないものがあることがわかった。

 2021年7月から2022年7月まで13カ月連続で納入ゼロが続き、翌8月10日に787の引き渡しを再開したものの、2023年2月には納入を一時停止していることが明らかになり、3月にFAAが納入再開を承認した。

ANAの787-10も納入遅延

 787の納入は現在も遅れており、日本の航空会社にも影響が出ている。ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)は、超長胴型787-10の国内線仕様の初号機(JA981A)を当初は2023年秋ごろに受領予定だったが、2月下旬に延期となり(関連記事)、現在は3月中の引き渡しになる見込み。

ANAの787-10国際線仕様初号機。国内線仕様は納入が遅れている=19年4月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JA981Aは、納入前の試験飛行が2月21日から行われている。今年1月末時点では、初号機と2号機を2月下旬に、3号機と4号機を3月末までに受領し、大型機777-200ERの置き換えを始める計画だった。

 座席数は2クラス429席で、プレミアムクラス28席、普通席401席。置き換え対象となる777-200ERは、2クラス405席仕様(プレミアムクラス21席、普通席384席)と、2019年11月16日に就航した新仕様の2クラス392席仕様(プレミアムクラス28席、普通席364席)の2種類がある。777と比べて提供座席数が増え、約25%の燃費改善が見込まれる。

 日本航空(JAL/JL、9201)では、100%出資する中長距離国際線LCC、ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)は、787-8の新造機を2025年度に2機受領する見通し。

 また、737 MAXはANAとJAL、スカイマーク(SKY/BC)の3社が発注。ANAが2022年7月に737 MAX 8を最大30機(確定発注20機、オプション10機)、スカイマークが2023年1月に737 MAX 8と737 MAX 10を最大12機(確定発注:2機ずつ計4機、オプション:1機ずつ計2機、リース:737-8を6機)、JALは同年3月に737 MAX 8を21機全機を確定発注している。

 ANAは2025年度から、スカイマークは737-8を2026年度、737-10を2026年度から2027年度、JALは2026年から受領する計画となっている。787と737 MAXという、ボーイングの“主力商品”で品質問題が長期化していることから、本邦各社の機材計画への影響が気になるところだ。

関連リンク
F.A.A. Audit of Boeing’s 737 Max Production Found Dozens of Issues(The New York Times)
Boeing whistleblower found dead in US(BBC)
Federal Aviation Administration
National Transportation Safety Board
Boeing
ボーイング・ジャパン
Alaska Airlines

737 MAX
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