エアライン — 2019年1月9日 21:25 JST

JAL機長、同乗機長に身代わり依頼 アルコール検査不正で懲戒処分

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 日本航空(JAL/JL、9201)は1月9日、おととしの12月に成田発シカゴ行きJL10便(ボーイング777-300ER型機、登録記号JA736J)の統括機長A(59)が、同乗する別の機長B(53)にアルコール検査の身代わりをさせていたと発表した。機長Aは予備のアルコール感知器で検査した際に基準値を下回っていたが、身代わり検査が行われたことを問題視し、2人を懲戒処分とした。

統括機長が同乗する別の機長にアルコール検査の身代わりを依頼していたJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALによると、当時は新型アルコール感知器の使い方に慣れるため、予備としてロッカールームに新型感知器を置いていたという。2017年12月2日に、機長Aが成田空港へ到着し、出社前の午前8時50分ごろにロッカールームで予備感知器を使って呼気検査を実施したところ、基準値1リットル当たり0.10ミリグラムのアルコール量に対し、わずかに下回る同0.09ミリグラムが検知された。結果に不安に感じた機長Aは午前9時ごろに出社後、同乗する機長Bに身代わり検査を依頼した。

 依頼を受けた機長Bは当初、うがい後に再検査するよう機長Aに進言したが、最終的には午前9時すぎに応諾し、乗務前のアルコール検査を代行した。

 JL10便には、機長Aと機長B、副操縦士のパイロット3人1組で乗務。成田を定刻より2分早い2日午前10時48分に乗客136人(幼児1人含む)を乗せて出発し、シカゴには42分早着の2日午前6時48分に着いた。成田を離陸時は、機長Aは操縦桿を握らずコックピット後方のオブザーブ席に座り、機長Bがコックピット左側の機長席、副操縦士が右側の副操縦士席に座って操縦し、機長Aは離陸後にコックピットを出て休息を取った。

 機長Bは帰国後、最初の出勤日である12月7日に出社した際、身代わり検査を行ったと上司に報告。社内調査の結果、機長Aは乗務前日の夜、缶酎ハイ(350ミリリットル)3本を、JL10便が出発する14時間20分前にあたる午後8時30分まで飲んでいたことがわかった。調査結果に基づき、JALは2018年2月に2人を懲戒処分とし、機長Aは現在も乗務から外れている。

 パイロットが所属する運航本部では当初、機長Aの予備感知器による検査結果が基準値を下回っていたことから、この件をアルコール問題の事例に含めていなかった。JALでは身代わり検査自体を問題視し、今後は検査結果にかかわらず、不正に対しては社内で情報共有し、問題があるケースでは処分を下すという。

 機長Aは1981年4月入社で、総飛行時間は2万1985時間、777機長としては6854時間。機長Bは1989年4月入社で、総飛行時間1万2315時間、777機長として6815時間となっている。

 航空各社では、パイロットや客室乗務員の飲酒問題が相次いでいる。年明け1月3日には、ANAウイングス(AKX/EH)の機長から乗務前にアルコールが検出され、乗員交替の影響で国内線5便が遅延。機長は同席した副操縦士に対し、社内調査で口裏合わせを依頼していた(関連記事)。

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日本航空
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