エアライン — 2018年12月21日 14:06 JST

JAL、アルコール感知機未使用163件 同一機長が7割弱、規定明記で再発防止

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 パイロットの飲酒トラブルが起きた日本航空(JAL/JL、9201)は12月20日、アルコール感知機で検査せずに乗務した事例の調査結果を明らかにした。新型感知機を導入した2017年8月1日以降、感知機による検査を意図的に実施しなかった事例が今年11月8日までに163件あり、失念していたケースが34件あった。意図的な未実施のうち、67.5%にあたる110件は同じ男性機長(52)で、JALは業務指示違反で処分を予定している。

アルコール感知機による検査を意図的に実施しなかった事例が163件発覚したJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALによると、当時の社内規定ではアルコール感知機を使用した検査を乗務前に実施することが明記されていなかったことから、機長は自身が飲酒していない時は必要ないと判断していたという。ほかの4件は別の機長で、同様に判断していた。また、残り49件は110件の機長と同乗した副操縦士で、同じ理由で感知機を使用せず、相互確認で済ませていた。

 JALでは「規定違反ではないが、回数が多いことから悪質と判断した」として、機長を処分する方針。このほかに、感知機による検査を実施したものの、社員番号の入力忘れや間違いで記録が欠損していた事例が3941件あり、急な乗員交代など会社の指示で乗務する飛行機に直行したケースが27件、検査の記憶があいまいな事例が10件あり、記録の欠損としては計4175件にのぼるという。

 検査記録の欠損は、国土交通省航空局(JCAB)の立入検査後に発覚。アルコール感知機の検査記録について、JALでは「基準値を超えた場合の確認を想定しており、すべてのデータを保存して事後に確認することは想定していなかった」と説明している。JALは11月16日に、規定にアルコール検査の実施を明記するなどの再発防止策をJCABに提出した。

 また、10月にJALの男性副操縦士(懲戒解雇)が過度な飲酒により英国で身柄を拘束され、禁錮10カ月の判決が11月に現地で言い渡されたことなどを受け、JCABはJALに対し、21日に事業改善命令を出した。

関連リンク
日本航空

国交省の対応
JALとANA、アルコール検知機不使用500件 パイロット飲酒問題(18年12月7日)
国交省、パイロット飲酒対策会議 航空25社の社長出席、他社から学ぶ(18年12月5日)
国交省、JALとANAに立入検査 パイロット飲酒で(18年11月27日)

JALとANAが再発防止策提出
JAL飲酒副操縦士「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」 国交省に報告書と防止策提出(18年11月16日)
ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策(18年11月16日)

JALの飲酒トラブル
JAL、乗務中の客室乗務員からアルコール検出(18年12月21日)
JAL、飲酒の副操縦士を懲戒解雇 禁錮10カ月、赤坂社長ら減給(18年11月30日)
JAL、逮捕の副操縦士がマウスウォッシュ使用 酒臭さ消すためか(18年11月19日)
JALグループ、パイロット飲酒で16件遅延 昨夏の新型検知器導入後(18年11月17日)
飲酒で拘束されたJAL副操縦士、29日に判決 国交省は基準強化(18年11月2日)
JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査基準を大幅超過(18年11月1日)
JALの男性CA、乗務中にビール 利用客が指摘(18年6月6日)

JACの飲酒トラブル
JAC機長、飲酒規定内でも4便遅延 自宅で350ml缶ビール2本(18年12月5日)
JAC、機長飲酒で遅延 4便に影響(18年11月28日)

ANAの飲酒トラブル
ANAウイングス、飲酒機長を諭旨退職(18年11月9日)
ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延(18年10月31日)
ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇(18年10月5日)

スカイマークの飲酒トラブル
スカイマーク、飲酒再検査に手間取り機長交代 23分遅れで羽田出発(18年11月15日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post