エアライン, 官公庁, 解説・コラム — 2018年11月16日 15:44 JST

ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)と、ANAウイングス(AKX/EH)、エアージャパン(AJX/NQ)の3社は11月16日、パイロットなどの飲酒に対する対応策を国土交通省に提出した。10月に発生した、ANAウイングスの40代男性機長が飲酒により体調不良となり、乗務予定の国内線5便が遅延した問題によるもので、飲酒量を明文化し規定に盛り込むほか、パイロット全員を対象に、持ち運びできる呼気検査機を順次貸与する。

パイロットの飲酒について陳謝するANAホールディングスの片野坂社長(右)とANAの平子社長=18年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
全空港で基準統一
5時間で6杯
5年で交代要員8件

全空港で基準統一

パイロットの飲酒について説明するANAホールディングスの片野坂社長=18年11月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 飲酒量は、従来は本部長通達だったものを明文化。12月から、アルコール「2単位」までとする。1単位はアルコール20グラムで、2単位はビール1リットル、日本酒2合、ワイン400ミリに相当する。ANAによると、アルコール2単位は、およそ8時間で分解できるという。飲酒可能時間は、従来どおり乗務開始の12時間前までとする。

 データを記録できるストロータイプの呼気検査機を、海外を含めた全76空港に100台、年末までに導入する。これまで羽田以外の76空港では、記録できないバータイプの検査機を用いていたが、羽田で導入しているストロータイプに変更。また、羽田以外で実施していた第三者によるチェックを羽田でも導入することで、同じ基準での検査を全空港で実施できるようにする。

 運航管理者など、社内の第三者によるチェックで、2019年1月をめどに開始する。

 また、持ち運びできる呼気検査機を、12月以降順次貸与する。対象となるのは、3社のパイロット約3000人。このほか、飲酒教育のプログラムを見直し、再徹底する。

 1月からは、客室乗務員や整備士、運航管理者など、航空に従事するすべての人を対象に、始業時に酒気を確認する。機器は使用しない。

 ANAHDの片野坂真哉社長は、「襟を正して安全の堅持に取り組む必要がある」と陳謝。ANAの平子裕志社長は、「決してパイロットひとりの力量ではなく、組織的に解決していく」と述べた。

5時間で6杯

パイロットの飲酒で遅延が生じたANAウイングス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 飲酒したANAウイングスの機長(当時)は、乗務前日の10月24日午後5時から午後10時まで、滞在先の沖縄県石垣市内で、同僚のANAパイロットと2人で飲食。当該機長は5時間かけて、ビール2杯とチューハイ1杯、ハイボール3杯の計6杯を飲んだ。

 翌25日朝、機長が体調不良を訴えたためパイロットの交代が生じ、機長が乗務予定だった同日の石垣午前8時10分発那覇行きNH1762便(ボーイング737-500型機、登録番号JA300K)の出発が54分遅れるなど、計5便に各便1時間弱ずつの遅延が発生した。

 同僚のパイロットは、乗務前の検査を通過し、25日午後0時40分石垣発の羽田行きNH90便に乗務した。

 当該機長はその後、11月6日付で諭旨退職処分を受けた。このほか、ANAのフライトオペレーションセンター長の大井道彰執行役員と、ANAウイングスの泉弘毅社長の役員報酬を、それぞれ1カ月10%減額処分とする。

5年で交代要員8件

 ANAでは2013年度以降、交代要員による運航が8件発生している。同社によると、いずれも羽田発で、飲酒のほか、体調不良などに起因しているという。

 10月から11月にかけて、国内の航空会社では飲酒トラブルが相次いだ。ANAではのパリ支店長兼ブリュッセル支店長(当時)が、現地時間10月2日に機内で酒に酔って、乗客にけがを負わせて諭旨解雇処分になった。

 日本航空(JAL/JL、9201)では、副操縦士が乗務前の飲酒により、英国で現地時間10月31日に逮捕されている。スカイマーク(SKY/BC)では11月14日に、機長が乗務前に受けたアルコール検査で陽性反応が出て交代が生じたため、乗務予定だった便が遅延した。

 航空各社を監督する国土交通省航空局(JCAB)では、航空従事者の飲酒基準に関する検討会の初会合を20日に開く。

関連リンク
飲酒に関する航空法等の遵守の徹底について(報告)(ANA)
全日本空輸
ANAウイングス
エアージャパン
国土交通省

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