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JAL機長、同乗機長に身代わり依頼 アルコール検査不正で懲戒処分

 日本航空(JAL/JL、9201)は1月9日、おととしの12月に成田発シカゴ行きJL10便(ボーイング777-300ER型機、登録記号JA736J)の統括機長A(59)が、同乗する別の機長B(53)にアルコール検査の身代わりをさせていたと発表した。機長Aは予備のアルコール感知器で検査した際に基準値を下回っていたが、身代わり検査が行われたことを問題視し、2人を懲戒処分とした。

統括機長が同乗する別の機長にアルコール検査の身代わりを依頼していたJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALによると、当時は新型アルコール感知器の使い方に慣れるため、予備としてロッカールームに新型感知器を置いていたという。2017年12月2日に、機長Aが成田空港へ到着し、出社前の午前8時50分ごろにロッカールームで予備感知器を使って呼気検査を実施したところ、基準値1リットル当たり0.10ミリグラムのアルコール量に対し、わずかに下回る同0.09ミリグラムが検知された。結果に不安に感じた機長Aは午前9時ごろに出社後、同乗する機長Bに身代わり検査を依頼した。

 依頼を受けた機長Bは当初、うがい後に再検査するよう機長Aに進言したが、最終的には午前9時すぎに応諾し、乗務前のアルコール検査を代行した。

 JL10便には、機長Aと機長B、副操縦士のパイロット3人1組で乗務。成田を定刻より2分早い2日午前10時48分に乗客136人(幼児1人含む)を乗せて出発し、シカゴには42分早着の2日午前6時48分に着いた。成田を離陸時は、機長Aは操縦桿を握らずコックピット後方のオブザーブ席に座り、機長Bがコックピット左側の機長席、副操縦士が右側の副操縦士席に座って操縦し、機長Aは離陸後にコックピットを出て休息を取った。

 機長Bは帰国後、最初の出勤日である12月7日に出社した際、身代わり検査を行ったと上司に報告。社内調査の結果、機長Aは乗務前日の夜、缶酎ハイ(350ミリリットル)3本を、JL10便が出発する14時間20分前にあたる午後8時30分まで飲んでいたことがわかった。調査結果に基づき、JALは2018年2月に2人を懲戒処分とし、機長Aは現在も乗務から外れている。

 パイロットが所属する運航本部では当初、機長Aの予備感知器による検査結果が基準値を下回っていたことから、この件をアルコール問題の事例に含めていなかった。JALでは身代わり検査自体を問題視し、今後は検査結果にかかわらず、不正に対しては社内で情報共有し、問題があるケースでは処分を下すという。

 機長Aは1981年4月入社で、総飛行時間は2万1985時間、777機長としては6854時間。機長Bは1989年4月入社で、総飛行時間1万2315時間、777機長として6815時間となっている。

 航空各社では、パイロットや客室乗務員の飲酒問題が相次いでいる。年明け1月3日には、ANAウイングス(AKX/EH)の機長から乗務前にアルコールが検出され、乗員交替の影響で国内線5便が遅延。機長は同席した副操縦士に対し、社内調査で口裏合わせを依頼していた(関連記事 [1])。

関連リンク
日本航空 [2]
運航乗務員の飲酒による法令違反に関する調査経過と再発防止策について [3](JAL)

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