ボーイング, 企業, 業績, 機体, 解説・コラム — 2017年5月10日 06:37 JST

三菱重工、17年3月期純利益37.4%増 宮永社長「完成機メーカー並みの企画力必要」

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 三菱重工業(7011)が5月9日に発表した2017年3月期通期の連結決算は、純利益が前期(16年3月期)比37.4%増の877億2000万円だった。売上高は3兆9140億1800万円(前期比3.3%減)、営業利益は1505億4300万円(51.4%減)、経常利益は1242億9300万円(54.4%減)となった。2018年3月期通期の純利益は、2017年3月期比14.0増の1000億円を見込む。

 航空関連では、ボーイング777型機の減産により生産に余裕が生じている中で、社員のスキル向上や設備刷新を進め、完成機メーカー並みの企画力を持つ組織作りを目指す。

—記事の概要—
航空と防衛宇宙
18年3月期通期予想

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17年3月期決算を発表する三菱重工の宮永社長=17年5月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 セグメント別のうち航空関連を含む交通・輸送は、受注高が4151億円(前期比1919億円減)、売上高が5153億円(331億円減)、営業損益は519億円の赤字(前期は545億円の黒字)だった。

 売上高は民間機の減産などにより、前期を下回った。営業利益は民間機を中心とした円高影響や777の減産、コストダウンの計画未達、子会社の三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」の開発費増加などが、減益要因となった。

 三菱重工ではボーイング787型機の複合材主翼を製造するほか、777の後部胴体などを担当。777の後継となる777Xでは、後部と尾部胴体の開発・製造を担う。このほか、英ロールス・ロイス製エンジンの燃焼器モジュールや、低圧タービンブレードなどを手掛けている。

 777関連の製造など「Tier1事業」(1次請け)については、減産が当面続くとして、生産ラインの大幅改善などを推進していく。777の2016年の引き渡しは99機(前年は98機)と前年並みだったが、純受注は17機(同58機)と大幅に減少している。

 三菱重工の小口正範常務は、5月9日に都内で開いた決算説明会で、同社全体の受注高と売上高の動きについて、「長納期の売上が増えてきたことで、受注と売上が2年程度ずれている。2016年度は、ある種の踊り場的な状況が起きていた」と分析した。

 宮永俊一社長は、「Tier1事業は明らかに量が減っている。787の主翼はコンスタントだが、777が減っている。(航空会社が導入する)機体の小型化と、777Xが出るまでの谷間」と減収要因を説明した。

 MRJは、全日本空輸(ANA/NH)への量産初号機の引き渡し時期について、5度目の延期を1月23日に発表。2年延期し、2020年半ばとなった。MRJの開発遅延に関する対策は、2018年度上期を目途に推進していく。

 Tier1事業の不振やMRJの量産開始の遅れにより、名古屋地区では中期の低操業対策を打つ。約6600人のうち、すでに約700人を社内の他部署や社外へ派遣しており、時期を見て元の職場へ戻す。同時に、社員のスキル向上につながる教育や、設備の刷新や工場再編を進めていく。

 宮永社長は、Tier1事業とMRJについて「ある意味で会社の今後を左右するもの。うまくいけば、しっかりしたものになる」と語った。「Tier1事業はそのまま続くとは思っていない。レベルを上げていかなければならず、完成機メーカー並みの企画力が必要」と、今後競合との競争に打ち勝つ上で、ボーイングなど完成機メーカーと肩を並べられるレベルの企画力が不可欠だとの認識を示した。

 設備の自動化など刷新については、「今後はリベット打ちの技術よりも、その設備をメンテナンスする能力が求められる」(宮永社長)と、自動化した生産ラインを維持していく能力の必要性を語った。

 また、MRJを開発する三菱航空機の人員については、現在の約2850人を2018年4月には20%削減する。現在は機体の安全性を証明する国の型式証明(TC)取得が課題だが、開発の進捗を見て、TC関連の外国人専門家などの人数を減らしていく。

 防衛・宇宙は、受注高が7021億円(前期比2544億円増)、売上高が4706億円(144億円減)、営業利益が279億円(21億円増)となった。売上高は、宇宙機器が増えて飛昇体が減少。営業益は、増収に伴い増益となった。

18年3月期通期予想

 2018年3月期の通期業績見通しは、売上高が4兆1500億円(17年3月期比6.0%増)、営業利益は2300億円(52.8%増)、経常利益は2100億円(69.0%増)、純利益は1000億円(14.0%増)と、増収増益を予測している。

 受注高については、Tier1事業の不振などの要因により、従来計画の5兆5000億円を4兆5000億円に引き下げた。売上高についても、計画では5兆円だったが4兆1500億円に見直した。

 セグメント別見通しのうち、航空・防衛・宇宙は、売上高が6500億円(17年3月期比534億円減)、営業利益は100億円(91億円増)を見込む。Tier1対策やMRJの損失幅が、一部改善するとの見方を示した。

 為替レートは1ドル110円、1ユーロ120円を想定している。

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