日本航空(JAL/JL、9201)のロス・レゲット常務は、長距離国際線機材ボーイング777-300ER型機の退役延長について、私見と断った上で「3年くらい」との見方を示した。国際線のフラッグシップだった777-300ERを「保険」(レゲット常務)として温存することで、新機材に想定外の受領遅延が生じた際にも、ネットワークを維持・成長できるようにしていく。

退役延長となるJALの777-300ER(手前)と後継機として増備が続くA350-1000=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALは777-300ERを13機導入。2024年8月から退役が始まり、先月5月に2機目の退役で残り11機となった。後継機のエアバスA350-1000型機は同数の13機を発注済みで、2024年1月に就航し、現在は9機体制となっている。今年度には11機となり、早ければ2026年度にも全13機がそろう。当初の計画では、A350-1000と入れ替わる形で、777-300ERを全機退役させる計画だった。
A350-1000はほぼ計画通り受領できているものの、JALが追加発注した中型機A350-900と787-9の引き渡しは2027年度に始まる予定。これら2機種は、今後成長が見込まれる北米・アジア・インドを中心とした国際線に投入する(関連記事)。
レゲット常務は、777-300ERの退役延長期間について「(時期を)固定しているものではない」として、現時点で決まった期間ではないものの、「今後のデリバリー次第ではあるが、(3年程度延期すれば)新しい機材が入ってくる時期と重なるので、供給が焦点になることはない」と、777-300ERの一部を手元に残すことで、新機材の納入遅延が生じた際に機材繰りを調整するなど、対処が可能になるとの考えを示した。

JALの777-300ER初の退役となったJA734J=24年8月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に着陸するJAL 777-300ER初号機JA731J最終便上海発JL80便=25年5月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
2020年以降、中国から拡散した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、航空機メーカーやサプライヤーではサプライチェーン問題が尾を引いている。6月にインドの首都デリーで開かれたIATA(国際航空運送協会)の第81回年次総会(AGM)で、ウィリー・ウォルシュ事務総長は「メーカーは航空会社を失望させ続けている。どの航空会社も、これらの問題が長引いていることに不満を抱いており、解決までに10年かかる可能性があるという兆候は、到底受け入れられない」と危機感をあらわにし、サプライチェーン問題は2020年代末まで続くとみている。
また、今年に入ってからはトランプ関税も新たな懸念材料になっており、5月に2025年3月期通期決算を発表したJALの鳥取三津子社長は、「現時点で事業に関わるような影響は出ていない。777-300ER(の退役)を延伸させて長距離路線をしっかりつなぐ」と、777-300ERの一部を退役延長させることで、トランプ関税の影響も含めたサプライチェーン問題の長期化に対応する姿勢を示した。
777-300ERを活用した新路線としては、成田-シカゴ線を5月31日に週7往復(1日1往復)で開設。シカゴは共同事業(ジョイントベンチャー)のパートナーであるアメリカン航空(AAL/AA)のハブ空港のひとつで、既存の羽田-シカゴ線と合わせて東京-シカゴ間は週14往復(1日2往復)となり、北米とアジアを結ぶ3国間流動を取り込む。
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日本航空
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