日本航空(JAL/JL、9201)の新たな長距離国際線のフラッグシップであるエアバスA350-1000型機が、5月5日から9機体制となった。発注済み13機のうち、エアバスの組立スケジュールの都合で引き渡しが遅れていた7号機(登録記号JA07WJ)が5日に就航し、定期整備で1機が運航から離脱しても8機投入できる規模になった。2026年3月末までには11機体制を計画しており、今年度内に大半がそろう計画だ。

羽田空港を離陸するJALの777-300ER=25年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を離陸するJAL A350-1000 JA07WJ初便のパリ行きJL45便=25年5月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
一方で、新型コロナに端を発するサプライチェーンの混乱は、トランプ関税が正常化への動きに影を落とす事態になってきている。JALの鳥取三津子社長は、トランプ関税の影響について「現時点で事業に関わるような影響は出ていない。777-300ER(の退役)を延伸させて長距離路線をしっかりつなぐ」と、A350-1000で置き換えているボーイング777-300ERの退役を一部後ろ倒しする考えを示している。
今年の夏ダイヤ初日3月30日からは、羽田-ヘルシンキ線(JL47/48)の機材を777-300ERに変更し、ファーストクラスを新設。これまでは787-8を中心に、一部の日は787-9で運航していた。JALの777による同路線の定期運航は、2013年7月1日に成田発着で開設以来初めて。5月31日に開設する成田-シカゴ線にも777-300ERを投入し、羽田発着と合わせて東京-シカゴ間は週14往復(1日2往復)に拡充する。
退役延期となる見通しの777-300ERは、2004年7月1日に就航。ジャンボの愛称で親しまれた747-400の後継機で、JALは全13機を2004年から2009年にかけて年2-3機のペースで受領した。初の退役機となった4号機(JA734J)は、2024年8月20日のシドニー発羽田行きJL52便を最後に退役し、1カ月後の9月19日に売却先の米国へ向かった。

羽田空港を出発する元JAL 777-300ER JA734J=24年9月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に到着したJAL初の777-300ER退役機となったJA734Jによるシドニー発JL52便をパネルを手に出迎えた社員ら=24年8月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
旅客機は就航から20年程度で更新時期を迎えるため、A350-1000を9機受領した現状であれば、777-300ERは初期受領の数機が運航から離れていてもおかしくない。JALはサプライチェーン混乱の長期化により、新造機の納入遅延や修理部品の調達に時間がかかるなどの事態に備え、777を当面稼働させる方針だ。本来の投入路線である欧米の長距離路線に加え、バンコクなどの中距離国際線、間合いで羽田-福岡線など国内幹線に投入することで、A350や787といった次世代機の稼働に余裕を持たせている。
今後の新機材導入は、2026年度から737 MAXを国内線、追加発注したA350-900と787-9を今後成長が見込まれる北米・アジア・インドを中心とした国際線に2027年度から投入し、JAL初導入のA321neoを2028年度から導入を始める。
JALはA350を2013年に発注した際、2019年の受領開始から6年程度で777を置き換える計画を立てており、今年は節目といえる年になる。2024年1月に就航したA350-1000は2026年度にも完納となる見通しで、長距離国際線の機材更新を終える。追加発注した中型機A350-900と787-9の引き渡しが始まる2027年度には、サプライチェーンの混乱も一定程度は収束すると業界内でみられていることから、777の退役延長は1年程度になるとみられる。
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日本航空
777-300ER
・JAL、羽田-ヘルシンキに777-300ER初投入 ファーストクラスも(25年3月30日)
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777-300ERの動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
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(1)黒を基調としたビジネスクラス
(2)ワインレッドと黒のプレエコ
(3)エコノミーはA350と同じグレー系
(4)シックな壁面やウォシュレット完備の化粧室
A350-1000
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