エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2024年3月25日 13:24 JST

ANA、787-10国内線仕様お披露目 777-200より大きい次世代旗艦機

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 全日本空輸(ANA/NH)は3月25日、ボーイング787-10型機の国内線仕様機を羽田空港の格納庫で初公開した。ANAの国内線現行機材では2番目に座席数が多い429席で、国内線の次世代フラッグシップとして27日に就航する。初便の羽田発札幌(新千歳)行きNH59便を皮切りに、那覇、関西、福岡、伊丹の順に国内幹線へ投入していく。

*初便の記事はこちら

ANAの787-10国内線仕様機(下)と787-8=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
国内線の次世代フラッグシップ
メーカー基準より厳しく確認

国内線の次世代フラッグシップ

 ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、787-10の国内線仕様機を11機発注済みで、2026年度までに受領する計画。当初は2023年秋に就航予定だったが、ボーイングで787の納入遅延が発生している影響で、初受領は今月17日(現地時間)となった。

ANAの787-10国内線仕様機JA983Aのプレミアムクラスを紹介する客室乗務員=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 座席数は2クラス429席で、プレミアムクラス28席、普通席401席。シートは2021年12月9日に就航した787-9の国内線新仕様機(2クラス375席:プレミアムクラス28席、普通席347席)と同じで、エンジンも同じくGE製GEnx-1Bを採用している。ANAの予約画面で表示される機材名は「78K」となる。

 プレミアムクラスは、サフラン・シート・US(旧ゾディアック・シート・US)製シートを採用。座席配列は2-2-2席の1列6席となる。表面を現行の革張りから布地に変更することで、滑りにくくした。個人用モニターは、ANAの国内線用中大型機では最大クラスとなる15.6インチのタッチパネル式のものを採用した。

 普通席は、自動車用シートを手掛けるトヨタ紡織製。座席配列は3-3-3席の1列9席となる。個人用モニターは777用の11.6よりも大型化し、国内線普通席最大となる13.3インチ(最前列は10.1インチ)の薄型タイプを採用した。

 置き換え対象となる777-200ERは、2クラス405席仕様(プレミアムクラス21席、普通席384席)と、2019年11月16日に就航した新仕様の2クラス392席仕様(プレミアムクラス28席、普通席364席)の2種類がある。777と比べて提供座席数が増え、約25%の燃費改善が見込まれる。

ANAの787-10国内線仕様機(右)と787-8(中央)、787-9(左)=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの787-10国内線仕様機JA983Aの普通席を紹介する客室乗務員=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

787-10国内線仕様「78K」のシート配置図(ANA提供)

787-9国内線新仕様「78G」のシート配置図(ANA提供)

 787は標準型の787-8、長胴型の787-9、超長胴型の787-10の3機種で構成され、787-10は胴体がもっとも長い。全長は787-8(56.7メートル)と比べて11.6メートル、787-9(62.8メートル)より5.5メートル長い68.3メートルで、置き換え対象となる777-200/-200ERよりも4.3メートル長い。787のローンチカスタマーであるANAは、3機種すべてを運航している。

 787-10は787-9と設計と部品を95%共通化。GEnxを搭載する787-9の新仕様機と比べて普通席が54席増えた機材と言え、旅客需要の変動に応じた機材繰りに適している。787-10の429席は、ANAの国内線機材で最も大きく、1998年に就航した777-300の2クラス514席(プレミアム21席、普通席493席)に次ぐ座席数となる。

 ANAの矢澤潤子常務は「環境性能と快適性を兼ね備えた次世代フラッグシップ」とアピールした。投入路線は羽田発着の国内幹線で、札幌(新千歳)、伊丹、関西、福岡、那覇となる。

メーカー基準より厳しく確認

 初号機(登録記号JA981A)は3月18日にチャールストンを出発して、ロサンゼルスとホノルルを経由し、20日夜に羽田へ到着した。現在は27日の就航に向けた整備作業が行われており、25日は羽田へ24日夜に到着したばかりの2号機(JA983A)がお披露目された。

787-10国内線仕様機をお披露目するANAの矢澤潤子常務(中央)とB787部機長の谷口涼さん(同左)、ドック整備部の坂本雅宏さん(同右)と客室乗務員=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ボーイングの最終組立工場がある米サウスカロライナ州のノースチャールストンで、ANAによるテストフライトを担当したフライトオペレーションセンターB787部機長の谷口涼さんは「厳しいチェック項目をクリアした機体のみがANAの機体となる」と説明。現地に4カ月ほど滞在したANA整備センター 機体事業室ドック整備部の坂本雅宏さんは「メーカー基準に適合していても、是正措置を求めていくこともあった」と、初受領までを振り返った。

 ANAによると、3月末までに3機目を受領し、4月に入ると4機目が引き渡される予定だという。

 ANAは787-10の国際線仕様機(3クラス294席)を3機導入済みで、 2019年4月26日に初便の成田発シンガポール行きNH801便(JA900A)が就航。日本初の787-10で、エンジンはロールス・ロイス製エンジンのトレント1000を搭載し、東南アジア路線を中心に投入している。

*写真は12枚(初便の運航スケジュールは写真下に掲載)。

ANAの787-10国内線仕様機JA983A=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

テーブルを出したANAの787-10国内線仕様機JA983Aのプレミアムクラス=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの787-10国内線仕様機JA983Aの普通席=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

自席と前席をリクライニングしテーブルを出したANAの787-10国内線仕様機JA983Aの普通席=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの787-10国内線仕様機JA983AのエンジンGEnx-1B=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田の格納庫に駐機されたANAの787-10国内線仕様機JA983A=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの787-10国内線仕様機JA983A=24年3月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

初便の運航スケジュール
NH59 羽田(10:00)→札幌(11:35)
NH62 札幌(12:30)→羽田(14:10)

関連リンク
ANA国内線次世代フラッグシップ 国内線 ボーイング787-10
全日本空輸

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写真特集・ANA 787-9国内線新仕様機
プレミアムクラス編 15.6インチ大画面と落ち着いた客室(22年1月4日)
普通席編 フィット感追求した全席画面・電源付きシート(22年1月4日)

787-9国内線新仕様機の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
ANA 787-9 国内線新仕様機の機内公開【JA936A】

写真特集・ANA 787-10(国際線仕様機)
ビジネスクラス編 A380と同じ新フルフラットシート(19年4月27日)
プレエコ編 通路に出やすい大型テーブル(19年4月29日)
エコノミー編 個人用モニターは世界最大13.3インチ(19年4月30日)

100機超の787
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