JAL、成田空港にグループLCC3社機そろう 春秋航空日本を子会社化

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 日本航空(JAL/JL、9201)は6月30日、LCC(低コスト航空会社)の春秋航空日本(SPRING JAPAN、SJO/IJ)を連結子会社化したことに合わせ、グループのLCC 3社が拠点とする成田空港に各社の機体を並べた。新型コロナ後は観光需要やVFR(友人・親族訪問)の回復が先行するとして、これらの市場を得意とするLCC事業を強化し、3社による売上規模を2025年度にはコロナ前の2019年度比で約2倍に成長させる。

 JALグループのLCCは子会社化した春秋航空日本のほか、JALが100%出資する中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)、50%出資するカンタス航空(QFA/QF)系のジェットスター・ジャパン(JJP/GK)の3社で、成田を拠点に異なる市場を取り込んでいく。

成田空港に並ぶJALグループLCC3社となる(左から)ジェットスター・ジャパン、春秋航空日本、ZIPAIRの機体=21年6月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
春秋航空日本
ジェットスター・ジャパン
ZIPAIR
成田で接続需要取り込み

春秋航空日本

 春秋航空日本は中国最大のLCCである春秋航空(CQH/9C)の子会社で、JALはこれまで少額出資にとどめていたが、29日に出資比率を66.7%に高めて過半数を取得し、連結子会社化。JALグループで中国に特化したLCCとして、現在は直行便が就航していない中国の人口4000万人から1億人規模の都市への就航を検討していく。

成田空港に並ぶJALグループLCC3社となる(手前から)ジェットスター・ジャパン、春秋航空日本、ZIPAIRの機体=21年6月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を拠点とするLCC戦略を説明するJALの豊島滝三専務=21年6月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 30日に成田空港で説明会を開いたJALでLCC事業を統括する路線事業本部長の豊島滝三専務は、「中国市場は底知れぬ規模で、ホワイトスポット(未就航地)があるもののJAL単独では無理。春秋グループは中国市場で圧倒的な販売力を持っている。お互いのノウハウを高めていくパートナーとしてやっていきたい」と、連結子会社化した狙いを説明した。

 コロナ後の航空需要について、豊島専務は「国内線の観光需要は、2022年度に100%に戻るだろう。一方で出張などの業務渡航は80%ほどで、立ち上がりが早い観光やVFRの需要はLCCがターゲットだ。国際線は2023年にならないとコロナ前の90%に戻らないだろう」と述べ、需要回復が先行する観光・VFR需要に強みを持つLCC事業を強化する。

 春秋航空日本の機材はボーイング737-800型機(1クラス189席)が6機。「当初は早々に7機に増機して、黒字になるだろうと予測していた」と2014年8月の就航当時の状況を振り返り、今後は7機体制で収益性を高める体制づくりを進める。

ジェットスター・ジャパン

 3社のうち、もっとも早い2012年7月に就航したジェットスター・ジャパンは、成田を中心とする国内線LCC需要を主なターゲットにする。機材はエアバスA320型機(1クラス180席)が25機だが、うち6機はコロナ影響によりジェットスターグループ内で転用し、グループの拠点である豪州で運航することで収益につながる。

成田空港に並ぶJALグループLCC3社となる(左から)ジェットスター・ジャパン、春秋航空日本、ZIPAIRの機体=21年6月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 受領を延期している中距離国際線への投入を想定したエアバスA321LRについては、「需要の太い国内線や、距離の長い国際線への投入を予定している。いつ投入するかは経営課題だ」と語った。

 JALは、2020年11月に公募増資で約1826億円を調達。LCC事業には150億円を投じており、今回の春秋航空日本の子会社化と、ジェットスター・ジャパンへの追加出資に2社合わせて100億円を充てる。ジェットスター・ジャパンへの出資比率は追加出資後も50%のままとなる。

ZIPAIR

 2機のボーイング787-8型機(2クラス290席)で運航するZIPAIRは、2020年6月就航。2024年度までに10機体制とし、北米やアジアで就航都市を拡大させる。「機材稼働を上げなければならず、短・中・長距離をどう組み合わせていくかだ」として、稼働率を上げるために距離が短いアジア路線の開設も念頭に路線網の拡大を進める。

成田空港に並ぶJAL機(左)とグループLCC3社となるジェットスター・ジャパン、春秋航空日本、ZIPAIRの機体=21年6月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港に並ぶJALグループLCC3社となる(左から)ジェットスター・ジャパン、春秋航空日本、ZIPAIRの機体の前で手を振る3社の客室乗務員=21年6月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 7月21日からは成田-ホノルル線を再開させる。未開拓の中長距離国際線LCC市場を開拓することで、価格選考性の高い需要を狙う。「ZIPAIRが目指すのはニューベーシックエアライン。しばらくして後から見ると、ZIPAIRが作ったベーシックに乗っていくというように、リーディングカンパニーになりたい」と語った。

 また、787を使用していることで、貨物輸送が収益の柱となっている。豊島専務は「LCC事業も最低利益率10%は確保したい」と事業全体の収益性に触れた上で、「ZIPAIRは貨物を運ぶメリットがあるので押し上げがある」として、旅客収入に貨物収入が上乗せされることによる収益性の高さにふれた。

成田で接続需要取り込み

 一般的にLCCで課題となるのが定時運航率の低さだ。「オペレーションのノウハウをつぎ込む」(豊島専務)と、JALの運航や整備ノウハウをLCCでも共有し、定時性を高めることで機材稼働も向上させていく。

 JALとのすみ分けについては、対象顧客層が異なるため「路線移管」という考え方は成立しないとした。「ホノルル線も運賃がJALとは違う。JALでうまくいかないからLCCに任せる、というものではない」とし、LCCの新路線は「需要の大きな路線をターゲットにする」と語った。

 また、JALは羽田で国内線と国際線を乗り継ぐ「内際乗り継ぎ」、成田ではアジア路線と北米路線を結ぶ「際際乗り継ぎ」の需要を取り込む方針を掲げてきた。LCC 3社も「将来的にアジアから成田経由で北米へ向かう“際際”接続も取り込みたい」(同)と、各社が運航する低価格な国際線を乗り継ぐ需要も視野に入れている。

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日本航空
SPRING JAPAN
ZIPAIR
ジェットスター・ジャパン

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