MRJ, 業績, 機体 — 2021年5月10日 18:53 JST

三菱重工、スペースジェット損失1162億円 21年3月期決算

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 三菱重工業(7011)が5月10日に発表した2021年3月期通期連結決算(IFRS)のうち、子会社の三菱航空機による「三菱スペースジェット(旧MRJ)」事業の損失は1162億円で、想定の損失額1200億円の範囲内に収まった。三菱重工は2020年10月にスペースジェットの開発凍結を表明しており、6度延期されている納期については10日も言及はなかった。

21年3月期決算でスペースジェットの損失が1162億円となった三菱重工=20年3月 PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire

 10日にオンラインで会見した三菱重工の泉澤清次社長は、「三菱航空機の人員規模は4月の段階で200人弱。TC(型式証明)文書の作業をやっている」と現状を説明した。三菱重工では開発凍結後、2020年5月時点で約1500人いた従業員について、人員削減後の人数を公にしていなかった。

 今後のスペースジェット事業の継続性については、「事業環境と市場性を複合的に見てやっていくことになる」と述べるにとどめた。

 三菱航空機は、3月に資本金を1350億円から99.6%減資し、5億円としている。今年1月には、開発凍結後初の失注が発生。米国の航空機リース会社エアロリース・アビエーションとの契約が2020年12月末で終了したためで、総受注は287機から20機減の267機になった。このうち、確定発注は153機にとどまり、黒字化は難しいとみられる。

 旅客機は一般的に20年程度は運航され、自衛隊などでは50年以上運用している機体もあるため、1機でも引き渡してしまうと部品供給などのサポート業務を長期間継続する必要がある。スペースジェットの場合、顧客への納入開始前に手じまいする方が、損失を最小化できる可能性が高い。

 10日に発表した2021年3月期の純利益は、2020年3月期比53.4%減の406億3900万円だった。売上高にあたる「売上収益」は8.4%減の3兆6999億4600万円、本業のもうけを示す「事業損益」は540億8100万円の黒字(前期は295億3800万円の赤字)だった。今期(22年3月期)の業績予想は、売上収益が2021年3月期比1.4%増の3兆7500億円、事業利益が2.8倍の1500億円、純利益は2.2倍の900億円を見込む。

 セグメント別では、航空・防衛・宇宙の受注高は6000億円(20年3月期比262億円減)、売上収益は6000億円(1021億円減)、事業損益は200億円の黒字(948億円の赤字)と黒字化を見込む。航空エンジンと中量産品は、2023年度(24年3月期)にはコロナ前の水準に戻るとしつつ、ボーイング787型機の胴体など「構造Tier1」事業は2024年度以降の回復を想定している。

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