MRJ, エアライン, 機体 — 2020年10月31日 15:21 JST

ANA片野坂HD社長「影響は軽微」 三菱スペースジェット、納期「説明いただいていない」

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は10月31日、三菱重工業(7011)が30日に開発凍結を発表したジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」について、納入遅れの影響は軽微であるとの見方を示した。一方で、6度もの延期で2021年度以降としている納期については、「説明をいただいていない」と述べるにとどめた。

開発凍結が決まった三菱スペースジェット。写真はANA塗装の飛行試験機=18年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAホールディングスの片野坂真哉社長=20年10月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAHDは持株会社へ移行前の2008年に、MRJのローンチカスタマーとして確定発注15機とオプション(仮発注)10機の最大25機を発注。当初は2013年に初号機が引き渡される予定だったが遅延を重ね、代替機を手配するに至った。次に納期を延期した場合、7度目となる。社長就任直後の5年前の2015年4月に、Aviation Wireの単独インタビューに応じた片野坂社長は、「7回、8回というのは論外だ」と、この時点で3度目の納入遅延が生じていたMRJについて、こう述べていた。

 三菱重工の泉澤清次社長は10月30日のオンライン会見で、「一旦立ち止まる」とスペースジェットの開発凍結を発表。国が機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」の取得に必要な文書作成は続けるものの、飛行試験は中断に至った。新たな納期については「設定していない」と説明した。

 31日に三重県内で会見した片野坂社長は、「認可を取る志はまだお持ちだと伺っており、航空機を作っていく道のりは厳しいと実感している。具体的な次のステップの説明はまだ受けておらず、その先の計画について説明いただいていない。飛行機を最初に発注した会社として、気持ちの上では応援させていただいている」と述べた。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による需要減退を受け、片野坂社長は「全体的に航空機の稼働を後ろにずらしている」として、「影響は軽微。もともと21年は厳しいと認識している」と語った。

 今年3月末時点のスペースジェットの総受注は287機で、このうち確定受注は163機。国内の航空会社ではANAのほか、日本航空(JAL/JL、9201)が2014年に32機すべてを確定発注している。30日に第2四半期決算を発表したJALの菊山英樹専務執行役員は、スペースジェットについて「確定的な案内を頂戴していない」と状況を説明しており、三菱重工はANAとJAL双方に今後の明確なプランを説明していないことが露呈した。

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