MRJ, 機体, 解説・コラム — 2019年2月8日 09:30 JST

宮永社長「前任者の責任」 特集・会長直轄で難局乗り切るMRJ

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 「私が直轄してきたので、社内でも非常に特別。丁寧な引き継ぎをしないといけない」。三菱重工業(7011)の宮永俊一社長は、泉澤清次常務が4月1日付で新社長に昇格する人事を発表した席上、社長直轄で開発を進めるリージョナルジェット機「MRJ」の扱いについて、こう言及した。

モーゼスレイクで飛行試験が進むMRJ。宮永社長が会長就任後も当面は直轄で開発を進める=18年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「前任者の責任」
MRJ70のニューコンセプト

「前任者の責任」

MRJのプロジェクトを当面主導すると説明する三菱重工の宮永社長(右)=19年2月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MRJは、2020年中ごろに量産初号機を受領するANAホールディングス(ANAHD、9202)へ引き渡す計画が進む。その前には、機体の安全性を国土交通省航空局(JCAB)が証明する「型式証明(TC)」を取得しなければならない。2016年11月から社長直轄としてきただけに、宮永社長は会長就任後もプロジェクトを当面主導していく。

 宮永社長は「瞬間瞬間に判断しなければならず、週報も読み込んでいる。(書類の)ほとんどが英語で、かなりのロード(負荷)だ。私一人で判断してしまうのはいけないので、直轄後に推進委員会を設立し、泉澤君にもメンバーに入ってもらっている」と、現在のMRJに関する意思決定プロセスを説明した。

 MRJのプロジェクトについて「ステークホルダー(利害関係者)が多い」として、「ボーイングとの協力関係など、ひとつ一つ丁寧な引き継ぎをしていくのが、私がリードしながら一緒にやっていくということ」と、プロジェクトを主導しながら泉澤新社長に引き継いでいく必要性に触れた。

 「これから攻めていく新しい分野は、新体制がどんどんやればいい。難しいところを全部まとめて渡してしまうと、一過性で終わってしまう。終わってしまうものは終わらせるのが、前任者の責任。新体制に迷惑が掛からないようにしたい。デリバリーに近づくと、だんだん変わっていくと思う」(宮永社長)と見通しを語った。

MRJ70のニューコンセプト

国際航空宇宙展の会場に展示されたMRJ90(左)とMRJ70の模型=18年11月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 初号機引き渡しまでは、前任者の責任としてMRJの開発を主導していく宮永社長。もう一つ重視しているが、MRJ70(標準座席数76席)の開発だ。

 MRJは、社内飛行試験を実施しているMRJ90(88席)と、短胴型のMRJ70の2機種で構成。いずれもエンジンは米プラット&ホイットニー(PW)が開発した「PW1200G」を採用しており、低燃費や低騒音を売りにしている。

 MRJ70と同サイズの機体は、リージョナルジェット世界最大手エンブラエルの次世代機「E2シリーズ」には存在せず、同サイズの後継機需要を取り込める可能性がある。そして、北米市場には「スコープ・クローズ」と呼ばれるリージョナル機の座席数や最大離陸重量の制限があり、MRJ90を売り込むことが難しい状況だ。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露するMRJ=18年7月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 スコープ・クローズは、リージョナル機最大の市場である米国で、大手航空会社のパイロットの雇用を守るため、航空会社とパイロット組合の間で結ばれた労使協定のひとつ。リージョナル機は大手傘下の地域航空会社が運航するが、大手より賃金が安い地域航空会社へ路線移管が進むと、大手のパイロットは賃下げなどの問題に直面しかねない。そこでスコープ・クローズが設けられた。現在は座席数76席以下、最大離陸重量8万6000ポンド(約39トン)という値が基準の一つになっている。

 MRJ90は最大離陸重量が8万7303ポンド(39.6トン)と基準値をやや超過するが、MRJ70は8万1240ポンド(36,9トン)でクリアしている。座席数はレイアウトで調整できるが、最大離陸重量は設計の見直しが必要になるため、今のところ北米市場にはMRJ70を投入するが現実的だ。

 宮永社長は「米国向けMRJ70のニューコンセプトを、きちんとしないといけない」と、MRJ70の重要性に言及した。子会社の三菱航空機でMRJの開発を統括しているアレクサンダー・ベラミー氏は、2018年6月にAviation Wireなどの取材に対し、「2021年後半から2022年前半に市場投入したい」との意向を示しており、MRJ90のTC取得や初号機納入と並行して、MRJ70の新たな設計をまとめることが急務だ。

 三菱重工の新体制は4月から発足するが、MRJは当面「会長直轄」という同社では例のない体制で、開発のラストスパートをかけることになる。

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