エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年10月31日 12:38 JST

ANA、777X初受領27年1-3月期視野 客室仕様は変わらず、ボーイング納入遅延

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、納入開始が遅れている次世代大型機ボーイング777-9(777X)について、早ければ2027年1-3月期に初受領を目指す。ボーイングは計画から7年遅れとなる2027年に納入を始める見通しで、ANAHDは2026年度内の早期受領を視野に入れている。

ANAホールディングスが発注した777-9のイメージイラスト(同社提供)

 777Xは、ボーイングが開発を進めている次世代大型機で、ANAも長距離国際線を中心に投入している777-300ERの後継機。ANAHDは11年前の2014年に777-9を20機発注し、2021年度から2027年度に受領する計画だった。このうち2機は、2022年に777-8F貨物機へ発注変更しており、受領開始は777-9がボーイングの納入遅延で2026年度以降、777-8Fは2028年以降を予定している。

 777-9はボーイング側の納入開始が2027年となったことで、ANAHDは2026年度内の最終四半期となる2027年1-3月期に初受領を目指す。FAA(米国連邦航空局)が機体の安全性を証明する「型式証明」の取得が遅れているためで、ボーイングのケリー・オルトバーグ会長兼CEO(最高経営責任者)は「スケジュール遅延は残念だが、飛行試験では良好な性能を示しており、開発プログラムの完了と業務の安定化を通て、全ステークホルダーの信頼回復に務める」としている。ANAHDによると、現時点でボーイングから大きな問題が新たに見つかるといった連絡はないといい、早期の引き渡しを求めていく。

パリ航空ショーで飛行展示を披露するボーイング777X=23年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの777-300ERの個室ビジネスクラス「THE ROOM」=19年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAの777Xは、当初2021年度に就航する計画だったことから、シートは現在777-300ERに搭載している個室ファーストクラス「THE Suite」や初の個室ビジネスクラス「THE Room」相当になるとみられる。これらのシートを導入したのは2019年7月で、777-9が2027年に就航した時点で登場から8年が経過しており、多くの航空会社が客室改修の目安としている8年から10年に差し掛かってくる。

 一方、コロナの影響で機体メーカーやシートメーカーは開発体制に余力がなくなっており、777X向けのシートを完全に新規で開発し直すことは難しい状況だ。カタール航空(QTR/QR)は、777X向けの新個室ビジネスクラス「Qsuite Next Gen(Qスイート・ネクストジェン)」を2024年7月に発表したが、現行シート「Qsuite」の改良型となった。

 ANAHDの芝田浩二社長は10月30日、777-9の客室仕様について「検証はしていきたいが、今のところ当初計画の仕様でお願いしている」と述べ、777Xを初受領する時点では発注時のものになる見通しだという。

 また、30日にANAHDが発表した2025年4-9月期(26年3月期第2四半期)連結決算(日本基準)は、純利益が前年同期比5.8%減の760億8500万円。売上高が8.3%増の1兆1904億円、営業利益は9.9%減の976億2800万円、経常利益は15.3%減の951億8700万円となった。

 通期の業績予想は上方修正。今年8月に日本貨物航空(NCA/KZ)が連結子会社になったことなどから、売上高は前回発表から1100億円上方修正し2兆4800億円(25年3月期比9.6%増)、営業利益は150億円上方修正し2000億円(同1.7%増)、経常利益は190億円上方修正し1940億円(同3.0%減)、純利益は230億円上方修正し1450億円(同5.2%減)を見込む。



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