エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2026年3月12日 12:20 JST

777並み空間へゼロから設計 特集・ANA 787新個室ビジネス「THE Room FX」の挑戦

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 全日本空輸(ANA/NH)は、ボーイング787-9型機に導入する新個室ビジネスクラス「THE Room FX(ザ・ルームFX)」をはじめ、新シートの予約制体験会を六本木の東京ミッドタウンで3月12日から14日まで開催する。すでに予約枠の上限に達して受付を締め切ったといい、約10年ぶりとなる中型機の新シート導入に対する関心の高さが伺える。

ANAの新個室ビジネスクラス「THE Room FX」の開発に携わったCX推進室商品企画部の島田俊哉部長(左)と同部機内商品企画チームの牧克亘リーダー=25年6月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 THE Room FXは、長距離国際線を中心に投入している大型機777-300ER向け「THE Room」と同等の顧客体験を、中型機でも実現することを目指して開発。昨年2025年6月17日に開かれたパリ航空ショーでお披露目され、今回が本邦初公開となった。

 787の機体幅に合わせ、777向けの既存シートを縮小するのではなく、ゼロから設計し直したTHE Room FX。どのような狙いで開発されたのかを、ANA CX推進室商品企画部の島田俊哉部長と、開発を担当した同部機内商品企画チームの牧克亘リーダーに聞いた。

—記事の概要—
777と同等の居室空間
ゼロから新規開発

777と同等の機内体験

 THE Room FXは、3クラス206席仕様の787-9向け新シートで、ビジネスクラス48席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー137席。新造機3機を2026年度から導入し、既存の長距離国際線仕様機16機も改修する計画で、計19機体制となる。

パリ航空ショーでANAの新個室ビジネスクラス「THE Room FX」をお披露目する客室乗務員=25年6月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 新シート名の「FX」は「Future Experience」の略。島田部長によると、777-300ER向け「THE Room」で広い空間を提供した一方、「実際には乗客がまっすぐ寝る方が多かったです」と、787向けに居室スペースを再考できる余地があったという。このため787向けのTHE Room FXでは、限られたスペースの中で中身を最大化する方針が決まり、小物入れを2カ所新設したほか、スライドドアや壁も薄型化して居住性を確保。機材が変わっても、同じ顧客体験を提供する狙いがある。

 最大の特徴は、背もたれを最初から傾斜させた「プリリクライニング」構造の採用だ。島田部長によると「家庭のソファのような発想を取り入れた大きな変革」だという。従来の電動リクライニング機構をなくしたことで、モーターが不要になり、可動部の摩耗も抑えやすくなったほか、ベッドポジションへの移行も機械式で電動よりも素早く行える。また、ANAの国際線では初めてUSB Type-Cとワイヤレス充電も導入する。

 シート製造は仏サフラン・シートで、英国のデザイン会社アキュメン・デザイン・アソシエートがデザインを監修した。

ゼロから新規開発

 開発を担当した牧リーダーによると、787の胴体幅は777より約15インチ狭く、当初は777向けTHE Roomをそのまま縮小して搭載する案も検討したが、同じ顧客体験を再現するのは難しいと判断した。

パリ航空ショーでお披露目されたANAの新個室ビジネスクラス「THE Room FX」=25年6月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーでお披露目されたANAの新個室ビジネスクラス「THE Room FX」=25年6月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 このため、787でも777と同等の体験を提供することを最大のテーマに据え、ゼロから設計し直した。ボーイングとの公式な開発キックオフは2022年末だったが、構想自体はコロナ前から検討を進めていたという。

 構造面では、個室ドアを2枚から1枚に見直し、スプリングやワイヤーの構造も簡素化した。プリリクライニング構造を採用したことで、電動で動かすための壁との隙間が不要になり、座席前後方向の厚みも抑えられ、居室空間に充てられるようになった。牧さんは「骨組みも含めて、薄型化を進めました」と説明する。

 ギャレー(厨房設備)とラバトリー(化粧室)の配置は787-9の現行仕様から変えておらず、客室乗務員の作業動線や機材変更時の柔軟性も維持した。

 東京ミッドタウンで開く新シート体験会は、3月12日が午後5時から午後7時まで、13日が午前11時から午後5時まで、最終日14日は午前11時から午後6時まで。シート体験コーナーの予約受付は終了したが、併設する機内販売コーナーは予約がなくても利用できるという。

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