エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2023年11月16日 15:55 JST

「上昇推力の大きさ気をつけました」特集・JAL機長が語る777-200ER国内線運航

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 日本航空(JAL/JL、9201)が2002年から約21年間運航してきた大型旅客機ボーイング777-200ER型機が、11月12日で定期便の運航を終えた。月内にイベントを羽田空港の格納庫で開催後、12月12日に羽田からロサンゼルスへ退役チャーター便が出発し、売却先へ向かう。

JAL最後の777-200ERとなったJA703Jの最終便を担当した内本匡哉機長(左)と伊藤篤機長=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 11機導入した777-200ERのうち、最後まで残ったのは2003年2月3日に引き渡された3号機(登録記号JA703J)。客室仕様は乗務員の休憩スペース「クルーバンク」の有無で2種類あり、初期導入のJA701Jから703Jまでの3機はクルーバンクなしのW64、JA704Jから711Jまでの8機はクルーバンクありのW63だった。

 JALが導入した777は、777-200ERも含めて4機種。見た目は似ていても、胴体長やエンジンなどが少しずつ違う。最終便となった12日の那覇発羽田行きJL916便を操縦した内本匡哉機長と伊藤篤機長は、ともに777を26年間運航するベテランパイロットで、777-200ERの就航前から777と過ごしてきた。定期便の運航終了後、両機長に777-200ERの特徴などを聞いた。

羽田空港に着陸するJALの777-200ER定期便最終便となった那覇発JL916便=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
JALの777-200系最後
上昇推力大きいGE90
那覇線は映画を楽しめた飛行時間

JALの777-200系最後

 航空会社では通常、機長と副操縦士がペアで乗務するが、JL916便は機長2人の「ダブルキャプテン」で運航。内本機長が運航責任者である「PIC(Pilot In Command)」としてコックピット左席の操縦桿を握った。

羽田空港に到着するJALの777-200ER定期便最終便となった那覇発JL916便=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 11月12日午後8時14分。乗客310人(幼児4人含む)を乗せて那覇を午後6時10分に出発したJL916便は、羽田には定刻より1分早着で11番スポット(駐機場)へ到着した。これにより、27年前の1996年に始まったJALの777-200系列の定期便運航は幕を下ろした。777-200ERだけで数えると、約21年間の運航だった。

 羽田に帰着した内本機長は「感無量でした。時刻表通りに着けて本当によかったです」と安堵感をにじませた笑顔を見せた。伊藤機長も「いつもと変わらず安全運航第一でした。最後というのは着いてから、という気持ちでした」と到着後に最終便だったことを実感したという。伊藤機長がPICとして乗務したのは、前日11日の羽田-札幌線だった。

羽田空港の8番スポットへ到着したJALの777-200ER JA703J(手前)と7番スポットに駐機中の777-300ER JA732J=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に到着したJALの777-200ER定期便最終便となった那覇発JL916便に投入されたJA703J=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALが導入した777は、4機種46機。国内線機材は777-200が15機(JAL 8機+旧JAS 7機)と長胴型の777-300が7機、国際線はそれぞれの航続距離延長型となる777-200ERが11機と777-300ERが13機で、初受領は777-200が1996年2月15日、777-300が1998年7月28日、777-200ERが2002年7月11日、777-300ERが2004年6月15日だった。

 エンジンは、国内線用の777-200と-300がプラット&ホイットニー(PW)製PW4000シリーズ、国際線用の777-200ERと-300ERはGE製GE90シリーズを採用した。このうち、PW4000は2020年12月4日に不具合が起き、その後2021年2月20日に海外でも同様の問題が起きたことから、JALは2021年3月31日付で運航停止のまま国内線機材の777-200と-300を全機退役させた。

 一方、JALの777-200ERは、GE90のうち最大離陸推力が9万3700ポンドのGE90-94B、777-300ERは11万5540ポンドのGE90-115Bを搭載している。

上昇推力大きいGE90

 777-200ERの初受領前から777を運航してきた内本機長と伊藤機長。内本機長は「GEエンジンは出力を設定すると、そこにピタッといきます。大きなエンジンなのに、そんな風にコントロールできるのはびっくりしました。しかし、最初から777に乗務していたので、PWエンジンは結構なじみがあり、ちょっとコツがいる分、今思えば好きでした」と振り返る。

羽田空港のC滑走路を離陸する定期便最終日を迎えたJALの777-200ER JA703Jによる札幌行きJL505便=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に到着したJALの777-200ER定期便最終便となった那覇発JL916便に投入されたJA703JのエンジンGE90-94Bを点検する整備士=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 東南アジアやハワイなど中距離国際線を中心に投入されていた777-200ERだが、2021年に国際線の運航から離脱。最後まで残った3号機を含む5機が国内線に転用された。伊藤機長は、777-200ERが国内線を飛ぶようになり「(国内線機材の)PWエンジンは一度に2つ掛けられたのですが、200ERは一つずつしか掛けられないので気をつけなければならない、といったことはありました」と、同じ双発機ながら細かな違いに気を配った。

 燃料を大量に積む国際線との違いもあった。「機体が軽すぎると上昇推力が大きすぎて、機内サービスにも影響するので気をつけていました」(内本機長)と、パワーのある国際線機材ゆえ、機体のバランスに注意しながら国内線を運航していたそうだ。

那覇線は映画を楽しめた飛行時間

 最後の1往復は羽田-那覇線で、往路の羽田発那覇行きJL917便は2時間53分、復路のラストJL916便は2時間4分のフライトだった。

最終便の運航を終え国際線ビジネスクラスから国内線クラスJに転用された区画で記念撮影に応じる内本機長(前列左)と伊藤機長ら那覇発羽田行きJL916便のクルー=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JAL最後の777-200ERとなったJA703Jの最終便を担当した内本機長(左)と伊藤機長=23年11月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 伊藤機長は「機内エンターテインメントの映画なども、ショートプログラムだとちょうどいいくらいですね。機内でのごあいさつをやめた方がいいかな、と思う時もありました」と、乗客に空の旅を楽しんでもらえる距離だったという。

 一方、777は最新鋭機と比べると燃費を比較される機会が多い。内本機長は「燃費も近いところより、あまり差が出ないです」と、2時間程度のフライトであれば燃費は大きな差が出にくいとのことだった。

  ◆ ◆ ◆

 JALが運航する777は、長距離国際線機材である13機の777-300ERを残すのみとなった。10月30日からは国内線幹線への投入も始まり、羽田-福岡線で国内線ファーストクラスを利用すれば、国際線と同じシートに乗れる。777-200ERで評判だったビジネスクラスのフルフラットシートによるクラスJは777-300ERでも踏襲され、国内線で本格的な国際線気分を味わえる。

 777とともにパイロット人生を過ごしてきた2人の機長の手で、定期便運航を終えたJALの777-200ER 3号機JA703J。11月19日と23日、25日に見学ツアー(完売)を開催後は、12月12日に羽田から日本を離れ、売却先の米国へ向かう。

11/12の運航スケジュールと実績(定刻/実績/スポット)
JL505 羽田(08:15/08:15/15)→札幌(09:50/09:39/16)
JL506 札幌(10:45/10:48/16)→羽田(12:25/12:34/8)
JL917 羽田(14:15/14:21/8)→那覇(17:00/17:14/26)
JL916 那覇(18:00/18:10/26)→羽田(20:15/20:14/11)

関連リンク
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日本航空

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