空港, 解説・コラム — 2023年6月14日 20:42 JST

神戸空港の国際線、山谷社長「関空が成長軌道に戻らないと難しい」

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 関西3空港を運営する関西エアポート(KAP)の山谷佳之社長は6月14日、神戸空港の国際線定期便就航の可能性について、3空港の中核となる関西空港の国際線旅客需要が、2025年開催の大阪・関西万博後、コロナ前の水準と比較してどの程度回復するかによるとの考えを示した。

大阪万博に合わせてサブターミナルが開業する神戸空港=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

神戸空港の国際線について考えを語る関西エアポートの山谷社長=23年6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 神戸空港は国内線のみで、国際線は就航していない。関西3空港が果たす役割を自治体や国土交通省航空局(JCAB)、地元財界などが議論する「関西3空港懇談会」が2022年9月に開かれた際、2018年度に19万回だった関空の年間発着回数が30万回を超える場合に、神戸を発着する国際線定期便が就航できるよう合意した。

 空港を管理する神戸市は、今年5月10日に国内・国際一体型ターミナル施設「神戸空港サブターミナル」(仮称)の事業概要を発表。2025年3月末に供用開始する見込みで、大阪万博の開催時は国際チャーター便の乗り入れが計画されている。

神戸空港サブターミナルのイメージ(神戸市提供)

 サブターミナル開業後の神戸と関空の国際線の役割分担について、山谷社長は「3空港懇談会の決議事項なので変わっていない」と述べ、ターミナル開業後も関西圏の国際線定期便は関空に乗り入れ、神戸発着の国際線は将来的な検討課題にとどまるとの考えを示した。

 コロナからの回復期にあることから、山谷社長は「関空の需要が万博後に伸びることが一番重要。伸び出した時に、神戸からどういう路線を飛ばせるかが具体化すると思う」と、関空の国際線回復が最優先課題であるとした。

 「滑走路が2500メートルしかなく、(関空との)カニバリゼーション(需要の食い合い)を極力避けたいが、(関西圏で)神戸から西の市場もできれば取り込みたい。どういう路線がふさわしいかを検討したとして、果たしてエアラインに興味を持って飛んでいただけるのか。本格的な検討は万博後に関空が成長軌道に戻っていかないと難しいのではないか」と語った。

 KAPなどが設置している将来需要の調査委員会(委員長:加藤一誠・慶応大教授)は2022年8月に、万博が開かれる2025年度の需要予測と2030年度の見通しを発表。予測によると、2030年度に関空の発着回数が30万回に迫るケースは、インバウンドが年間6000万人に達する「上位ケース」の29.7万回で、コロナ前である2018年度の19.0万回と比べて1.6倍(56.3%増)の数字となる。「中位ケース」は27.9万回、「基本ケース」は25.3万回だった。このため、神戸発着の国際線定期便が実現するためには、この関空の発着回数30万回を上回る需要が見込める必要がある。

 神戸空港は2006年2月16日に開港し、2018年4月1日に民営化された。神戸市に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」でKAPの100%子会社「関西エアポート神戸」が運営している。

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