エアバスは現地時間1月25日(日本時間25日夜)、大型輸送機A300-600ST「ベルーガST(Beluga ST)」を活用した特大貨物輸送サービス「エアバス・ベルーガ・トランスポート(ABT: Airbus Beluga Transport)」を発表した。ヘリコプターや航空機用エンジン、人工衛星、船外実験装置などの特大貨物を解体せずに輸送でき、目的地で再組立するコストやスタッフなどを省ける。2024年にも新会社を設立する。

神戸空港に到着し前方貨物ドアを開けるエアバスの大型輸送機「ベルーガST」=21年12月25日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire
—記事の概要—
・初ミッションは神戸にヘリ輸送
・5万回のフライト想定も1.5万回
・24年に新会社
初ミッションは神戸にヘリ輸送
ベルーガはシロイルカを意味する愛称で、ベルーガSTは中型旅客機A300-600Rをベースにしており、1996年1月に就航。欧州各地で製造されるA350をはじめとするエアバス機の翼や胴体などを工場間で運ぶ特殊な輸送機で、主翼のように長尺の積荷も運ぶため、イルカが口を開けるように機体前方が大きく開く。全5機がエアバスの子会社「Airbus Transport International(ATI、BGA/4Y)」によって運航されてきた。

神戸空港に到着したエアバスの大型輸送機「ベルーガST」からクレーンで降ろされる大型ヘリ=21年12月25日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire
ABT初のミッションは、2021年12月にエアバス・ヘリコプターズの大型双発ヘリを仏マルセイユからワルシャワ、ノボシビルスク、ソウル(仁川)、関西空港経由で神戸空港に運んだ。日本へは1999年にドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」をパリから成田へ輸送して以来、22年ぶりの飛来となった(関連記事)。
エアバスは当初ベルーガによる特大貨物輸送を受託していたが、2010年代に入り民間機の生産レートが上昇後は自社の工場間輸送に注力している。一方で、ベルーガSTは就航から20年以上が経過し、2020年1月9日には後継機となるA330-200F貨物機がベースの「ベルーガXL(Beluga XL)」が就航。6機体制にする計画で、5機のベルーガSTを置き換える。

後継機のベルーガXL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
5万回のフライト想定も1.5万回
ベルーガSTの貨物室は高さ7.1メートル、幅6.7メートル、長さ39メートルで、最大40トンの積荷を運べる。ベルーガXLは、高さ8.1メートル、幅7.1メートル、長さ46メートルで、最大44トンの積荷を運べ、ベルーガSTがA350の主翼を1つ運んでいるのに対し、2つ同時に運べるようになった。

神戸空港に着陸するエアバスの大型輸送機「ベルーガST」=21年12月25日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire
ボーイングが787の主要部位を日本などから米国の最終組立工場へ運ぶ専用貨物機747-400LCF「ドリームリフター(Dreamlifter)」の貨物室は、高さ6.3メートル、幅6.9メートル、長さ30メートルで、ベルーガSTは高さと長さがドリームリフターを上回り、幅はほぼ同じだ。
米空軍の大型輸送機ロッキード・マーチンC-5「ギャラクシー」の貨物室は高さ5.8メートル、幅4.1メートル、長さ37メートル、ウクライナのアントノフAN-124は高さ6.4メートル、幅4.4メートル、長さ41メートルで、ベルーガの貨物室断面はほかの大型輸送機と比べて特大貨物を搭載できる余裕がある。
エアバスによると、ベルーガSTは5万回のフライトを想定して開発されたが、現在は平均1万5000回とまだ運航できる状態だという。ベルーガは貨物室の高さと幅が大きいことから、航空、宇宙、軍事、石油・ガス開発などのエネルギー、海事、大型機械、人道支援などの特大貨物輸送を想定している。

輸送機の断面比較(エアバスの資料から)
24年に新会社
さまざまな支援設備も開発。多目的パレット(Multi-Purpose Pallet)は長さが調節でき、最小限の組み替えでさまざまな積荷に対応できるモジュラー構造を採用した。自動で展開できる搭降載用屋外設備や、20トン未満・長さ12メートル未満の積荷に対応するオンボードカーゴローダー(Onboard Cargo Loader)も利用できるようにし、出発地や目的地にベルーガ用の搭降載設備がなくても運用できるようにする。
今年は2機のベルーガSTでABTのサービスを提供し、2023年には3機、新会社設立を予定している2024年には全5機がそろう。2023年からは輸送内容に応じてベルーガXTも選択できるようになる。新会社はエアバスの子会社で、航空運送事業許可(AOC)を独自に取得する。
関連リンク
BelugaST (Airbus)
Airbus
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