エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2021年10月24日 22:45 JST

「イスが多く点検に時間かかった」写真特集・ANA A380オレンジ3号機トゥールーズ出発

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 全日本空輸(ANA/NH)のエアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」のうち、最後の受領となった3号機(登録記号JA383A)が成田空港へ10月16日に到着した。オレンジ色のA380を一目見ようと、空港周辺の道路も混雑したほどだった。

トゥールーズを出発するオレンジ色とまつげが特徴的なA380 3号機から手を振るANAのパイロットたち=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

—記事の概要—
コロナで受領延期
座席数はA320neoの3.6倍
久々の長距離フライト

コロナで受領延期

 3号機は2020年1月24日に、エアバスの塗装工場がある独ハンブルクでお披露目された。当初は同年4月に受領予定で、6月からは週14往復の成田-ホノルル線全便をA380による運航に切り替える計画だった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で受領が半年延期となり、エアバス側の書類上は1年前の10月30日付で納入と記録されたものの、機体メーカーから見ると引き渡し済み、航空会社から見れば受領待ちという状態が続いていた。航空機取引に詳しい関係者によると、コロナの影響で同じような状態の機体が世界各地でみられたという。

ハンブルクの塗装工場で塗装を終えたANAのA380 3号機=20年1月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ハンブルクでロールアウトするANAのA380 3号機=20年1月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

JA383Aのチーフ領収検査員を務めた水石宣行さん=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

 ANAの整備士による領収検査は今月13日に行われ、同日受領した。チーフ領収検査員として検査を担当したANAの整備センター 品質保証室 機体品質管理部 航空機委託管理チームの水石宣行マネジャーは、「保存整備が行われていたので、飛行機が完全な状態になっているか全体を検査しました」と話す。水石マネジャーは3週間前からトゥールーズに滞在し、領収検査員兼確認主任者の村上智英さん、領収検査員の村田大輔さんとの3人体制で、約1年半トゥールーズに駐機されていた3号機の状態を確認した。

 受領前のフライトテストは1年前に済ませており、直近では航空機用無線の無線局免許を取得するためのフライトが10月4日に行われた。初号機の領収検査も担当した村上さんは、「1年半置いておいたとは思えないほどで、指摘事項もそれほどなかったです」と話した。

座席数はA320neoの3.6倍

 ANAのA380の客室仕様は3機とも同じで、座席数は4クラス520席(ファースト8席、ビジネス56席、プレミアムエコノミー73席、エコノミー383席)と桁外れに多く、機内エンターテインメントシステム(IFE)やリクライニング機能などが全席正常に動くかなどを確認する必要があり、3号機の場合は6人ほどで2日がかりになったという。

トゥールーズを出発するANAのA380 3号機。総2階建てで窓もイスも多く点検には時間がかかったという=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

ANA整備センター欧州技術駐在の富久慎太郎さん=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

 昨秋からトゥールーズに駐在しているANA整備センター欧州技術駐在部長の富久慎太郎さんは、ANAとエアバスの橋渡し役を務め、整備作業の調整にあたってきた。

 富久さんも「イスの数が多いので点検に時間がかかりました。窓のシェードも一つずつ点検します」と、総2階建ての超大型機ゆえ、座席数の多さは受領に携わった人たちにとって印象深かったようだ。

 同じエアバス機でも小型機のA320neoの座席数は2クラス146席(ビジネス8席、エコノミー138席)、胴体をストレッチしたA321neoでも2クラス194席(プレミアムクラス8席、普通席186席)で、A380はA320neoの3.6倍、A321neoと比べて2.7倍のイスがあることになる。

 エアバスはA380の製造をすでに終了しており、11月に最後の3機がエミレーツ航空(UAE/EK)へ引き渡され、納入開始から14年で完納となる。ANAの3号機は、A380最大のオペレーターであるエミレーツ向け以外では最後の引き渡しとなり、同社塗装以外のA380が顧客に引き渡されてトゥールーズを離陸するのも最後になった。空港周辺には3号機の離陸を見ようと、多くの人が集まっていた。

久々の長距離フライト

 成田へのフェリーフライトは、フライトオペレーションセンター エアバス部の小谷和広機長と大澤徹機長、オペレーションサポートセンター フライトオペレーション推進部の井上潤機長の3人が担当。お盆のホノルル行きや那覇へのチャーターなどに乗務して以来のフライトで、10時間以上のフライトは久しぶりだと話していた。

JA383Aのフェリーフライトを担当する(左から)大澤徹機長、井上潤機長、小谷和広機長=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

 フェリーフライトの成田行きNH9398便は、トゥールーズを現地時間15日午後5時47分に出発し、午後6時10分に離陸。成田空港のA滑走路(RWY16R)には16日午後0時55分に着陸して、ANAの格納庫前の807番スポットへ午後1時5分に到着した。

 ANAのA380は成田-ホノルル線の専用機材で、全機にハワイの空と海、夕陽をイメージした特別塗装を施しており、初号機(JA381A)が青(ANAブルー)、2号機(JA382A)が深緑(エメラルドグリーン)、3号機がオレンジ(サンセットオレンジ)と1機ごとに色が異なる。機首の表情も、正面を見る初号機、ほほ笑む2号機、まつげを描いた3号機と違いがある。

 2019年5月のA380就航と合わせてウミガメをモチーフにしたANAオリジナルキャラクターのラニ(青)、カイ(グリーン)、ラー(オレンジ)が登場したが、同社によるとキャラクター名と機体はひも付いておらず、3体の名前はあくまでもキャラクターを指すものだという。

*離陸の動画はこちら
*成田到着の様子はこちら
*写真は24枚。

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズで搭乗前に手続きするANAのパイロット=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機と”キス”するエアバスの広報担当者=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

JA383Aに搭乗するパイロット=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズで出発を待つANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを出発するA380 3号機から手を振るANAのパイロットたち=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを出発するANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを出発するANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを出発するANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを出発するANAのA380 3号機を見送るエアバスのスタッフら=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを出発するANAのA380 3号機を一目見ようと集まった空港周辺に人々=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを離陸するANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを離陸するANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを離陸し成田へ向かうANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

トゥールーズを離陸し成田へ向かうANAのA380 3号機=21年10月15日 PHOTO: Yuriko NAKAO/Aviation Wire

関連リンク
全日本空輸
Airbus

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トゥールーズ離陸の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
ANA A380 3号機トゥールーズ離陸【JA383A】

トゥールーズ離陸の写真
ANAのA380オレンジ3号機、トゥールーズ離陸し成田へ(21年10月16日)

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ロールアウトの動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
1本目 ANA A380 3号機がハンブルクでロールアウト サンセットオレンジのJA383A
2本目 エアバス塗装工場でロールアウト待つANA A380 3号機 サンセットオレンジ JA383A

写真特集・ANA A380 3号機ロールアウト
前編 まつげのある3号機、足場もオレンジになった塗装工場
後編 非中東系ラストはサンセットオレンジ

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写真特集・ANA A380 FLYING HONUの機内
(1)個室ファーストクラスでプライバシー確保(19年5月21日)
(2)ペアシートもあるビジネスクラス(19年5月22日)
(3)2階後方にゆったりプレエコ(19年5月23日)
(4)カウチシートもあるエコノミー(19年5月24日)

独ハンブルクで最終確認
「みんなをヒヤヒヤさせた」カウチシート 密着!ANA社員のA380最終確認(19年6月11日)