MRJ, 機体 — 2019年12月20日 17:54 JST

三菱スペースジェット、型式証明の年内取得困難に 水谷社長「厳しいスケジュール」

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 三菱スペースジェット(旧MRJ)を開発する三菱航空機の水谷久和社長は12月20日、型式証明(TC)の年内取得が困難との見方を示した。TC取得に投入する通算10号機となる飛行試験機の完成が遅れていることなどによるもので、6度目の延期が現実味を帯びてきた。

三菱スペースジェットの進捗を説明する三菱航空機の水谷社長=19年12月20日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
3000時間以上の試験終了
10号機進捗「まとまったら公表」
E175-E2「スコープ・クローズ大きく影響」

3000時間以上の試験終了

モーゼスレイクで滑走試験を実施する三菱スペースジェットの飛行試験3号機=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

 TC取得に向けた飛行試験は、標準座席数が88席の標準型「SpaceJet M90」(旧MRJ90)の試験機を投入し、米国にある飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」で進んでいる。これまでに3000時間以上の試験が終了。国土交通省航空局(JCAB)やFAA(米国連邦航空局)などから年内の取得を目指すとの意向を、今年4月時点で示している。

 水谷社長はTC取得の見通しについて、JCABやFAAなど各国の航空当局が審査するもので、時期を申し上げる立場にないとした上で、「当局の審査にタイムリーに対応できるようにしている」と述べた。年内の取得については「見通しとして厳しいスケジュールなのは違いない」と述べるに留めた。

 三菱スペースジェットの納入は、これまで5回延期している。水谷社長は6度目の延期の可能性について質問されたものの、回答しなかった。

10号機進捗「まとまったら公表」

 通算10号機となる飛行試験機は設計変更を反映させ、今秋から飛行試験に投入する予定だった。三菱航空機を傘下に持つ三菱重工業(7011)の泉澤清次社長は10月31日に、10号機の完成が年明けになることを明らかにした。

 水谷社長は10号機について、「開発状況の中で重要な意味合いを持つ」とした上で、「進捗は三菱航空機の社内で見極めている。10号機の進捗を含めた全体の見通しなどを精査している」と述べた。進捗状況は「まとまったところで公表する」と述べるに留めた。

 リージョナル機には「スコープ・クローズ」と呼ばれる、座席数や最大離陸重量を制限する米国の労使協定がある。三菱航空機は70席クラスの「SpaceJet M100(スペースジェットM100)」を、M90を基に開発する計画を示している。

E175-E2「スコープ・クローズ大きく影響」

初飛行に成功したE175-E2(エンブラエル提供)

 ブラジルのエンブラエルは現地時間12月12日に、次世代リージョナルジェット機「E2」シリーズのうち最も小さい機体サイズのE175-E2を初飛行させた。M90の競合となる機体で、メーカー標準の座席数は1クラスの場合は最大90席、2クラスは80席を設定できる。

 水谷社長はE175-E2について「基本構想段階で止まっていたものが初飛行まで進んだ」との認識を示し、「その先に進むかどうか、エンブラエルが考えること」と述べた。また、「(E175-E2は)スコープ・クローズが大きく影響する」とした上で、「M100が、世界で唯一スコープクローズクリアする機体だ」と自信を見せた。

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