エアバス, エアライン, 機体 — 2019年5月3日 23:35 JST

ピーチ初号機が退役 地球325周分、就航初日のパイロットとCAも乗務

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 国内初のLCCとして2012年3月に就航したピーチ・アビエーション(APJ/MM)のエアバスA320型機の初号機(登録記号JA801P)が5月3日、福岡発関西行きMM158便を最後に退役した。ピーチ初の退役機で、就航初日に乗務した機長と客室乗務員2人も乗務し、約7年2カ月間の安全運航をねぎらった。

ピーチ初号機最終便となった福岡発MM158便の運航を終え関西空港に降り立つ岡機長(先頭右)ら=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
地球325周分
井上CEO「戦友」

地球325周分

 JA801Pは新造機で、2011年11月4日にエアバスの最終組立工場がある仏トゥールーズで引き渡された。10日にピーチの拠点である関西空港へ到着し、報道関係者に公開された。就航時には一般公募により「Peach Dream」と名付けられ、左機首付近に愛称が記されていたが、退役に伴い同じ位置に復活させた。

関西空港でピーチの初便となった札幌行きMM101便を見送る客室乗務員=12年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 就航初日の2012年3月1日は、ピーチの初便である関西発札幌(新千歳)行きMM101便などに投入され、この日から国内LCCが歩み始めた。初日の路線は関西-札幌線と福岡線の国内線2路線のみだった。

 JA801Pは就航初便から約207万人の乗客を運び、総飛行時間は2万700時間超、総飛行距離は地球325周にあたる約1300万キロ、総飛行回数は1万3883回になった。

 最終日の3日は、関西発那覇行きMM225便と折り返しの関西行きMM226便、関西発福岡行きMM157便と折り返しの福岡行きMM158便の国内線4便を担当。ラストフライトとなったMM158便は乗客172人(幼児1人)と乗員7人(パイロット2人、客室乗務員5人)を乗せ、福岡を午後5時10分に出発し、午後6時22分に関空の95番スポット(駐機場)へ到着した。

ピーチ初号機最終便となった福岡発関西行きMM158便の機内で記念のシールを乗客に手渡す井上CEO=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MM158便にはピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)や、2012年3月1日の関西-福岡線初便を担当した岡恒(おか・ひさし)機長と客室乗務員の荒本真麻さん、パシオン麗美さんも乗務。井上CEOは機内で、客室乗務員がメッセージを書いたJA801Pのステッカーを、乗客ひとり一人に手渡していた。

 LCCでは、8年前後で機体をリース会社へ返却するケースが多く、JA801Pも同様の措置がとられた。岡機長は機内アナウンスで、「きちんと整備すれば、飛行機は20年、30年と飛び続けられる。この飛行機もほかのエアラインで飛び続ける」と乗客に説明した。

井上CEO「戦友」

 退役するJA801Pを、井上CEOは「戦友というか、一緒にやってきた仲間。就航前の訓練飛行もこの機体でやった」と、労をねぎらった。岡機長は、「当初は2機しかなかったが、機材故障による欠航はなかったと思う」と、大きな故障をせず7年以上飛び続けたことに謝意を示した。

ピーチ初号機最終便の福岡発関西行きMM158便の運航を終え撮影に応じる井上CEO(前列中央左)と岡機長(同右)、客室乗務員の荒本さん(前列右)とパシオンさん(同左)ら=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 関空到着時に最後のアナウンスを担当した荒本さんは、「自分の思いを伝えたいと思い、用意した原稿ではなく今の気持ちをと直前に変えたのですが、だいぶ噛(か)んでしまいました」と笑った。

 パシオンさんは「関空へ着陸する際に夕陽が見えてしんみりしました。最後まで無事故でという気持ちでした」と、ラストフライトを無事に終えて安堵(あんど)した表情を見せた。

 ピーチの現在の機材数は、初号機も含めてA320が25機。今後は既存機の更新や追加として、A320の発展型A320neoを26機、A321neoの航続距離延長型A321LRを2機の計28機を導入する計画を進めて、2020年度以降は50機体制を目指す。

 また、今年度内に統合を予定している同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のバニラエア(VNL/JW)のA320についても、保有する15機のうち10数機のコックピットや客室、塗装などをピーチ仕様に改修する。

*写真特集はこちら

JA801Pの最終日運航実績(括弧内は定刻/実績)
MM225 関西(09:00/09:04)→那覇(11:15/11:26)
MM226 那覇(12:00/12:09)→関西(14:00/14:04)
MM157 関西(15:10/15:19)→福岡(16:25/16:30)
MM158 福岡(17:00/17:10)→関西(18:10/18:22)

福岡空港へ到着するピーチ初号機による関西発MM157便=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港で出発を待つピーチ初号機最終便の関西行きMM158便=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港で出発を待つピーチ初号機最終便の関西行きMM158便=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港でピーチ初号機最終便となった関西行きMM158便に搭乗する乗客=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ピーチ初号機最終便となった福岡発関西行きMM158便の機内で記念のシールを乗客に手渡す井上CEO=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ピーチ初号機最終便となった福岡発関西行きMM158便の乗客に手渡された退役記念のシールと裏面に書かれた客室乗務員のメッセージ=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関西空港に到着したピーチ初号機最終便の福岡発MM158便=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

最終便の福岡発関西行きMM158便の運航を終えたピーチ初号機の前で記念撮影する井上CEOとクルー=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

最終便の福岡発関西行きMM158便の運航を終えたピーチ初号機=19年5月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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ピーチ・アビエーション
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