MRJ, 機体 — 2018年12月19日 14:58 JST

MRJ、型式証明取得に注力 水谷社長「予算守り開発やり終える」

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 三菱航空機の水谷久和社長は12月19日、リージョナルジェット機「MRJ」の開発費用について、機体の安全性を航空当局が証明する「TC(型式証明)」の取得時に想定外の問題が生じない限り、大幅な予算超過はないとの見通しを示した。また、カナダのボンバルディアが三菱航空機を10月に提訴したことについて、「理解している範囲では、やましい点はない」と改めて強調した。

MRJの現状を説明する三菱航空機の水谷社長=18年12月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 三菱航空機は債務超過に陥っていたが、12月に入り親会社の三菱重工業(7011)が500億円の債権を放棄し、1700億円の増資をすべて引き受けたことで解消。財務面の課題を解決した。一方で、MRJ90(標準座席数88席)のTC取得に向けた飛行試験が2019年に行われる計画で、国土交通省航空局(JCAB)やFAA(米国連邦航空局)が試験中に機体の安全性など改善項目を指摘した場合、開発費が膨らむ可能性がある。

 水谷社長は、「想定した開発作業を進められれば、さらなるリスクはないと考えている。(予算の)枠内でTC取得を成し遂げるミッションだ」と説明。「TC取得に必要な飛行試験で想像を絶するような、開発をさかのぼるようなことはないと思っている。予算を守って開発をやり終える」と述べた。

 現在、米国の試験拠点であるモーゼスレイクでは社内での飛行試験を進めており、「2400時間を超えるところまできている」(水谷社長)と語った。今後は社内飛行試験の結果を基に、JCABのパイロットがTC取得に向けて飛行試験で機体の安全性などを審査していく。試験の開始時期について、水谷社長は「何月とは申し上げられる立場にない」と述べ、当局側の決定次第との姿勢を示した。

 また、三菱航空機は配線の見直しなど設計変更を反映した、MRJの新たな飛行試験機を製造している。この機体の完成時期について、水谷社長は「何月とは言いにくいが、一日でも早く米国へ持って行きたい」と述べるにとどめた。

 ボンバルディアの提訴については、「われわれが確認している限り、提訴されるようなことはしていないと確信している。水際でもチェックをしており、開発に影響は出ないと考えている」と語った。

 仮にTC取得が計画通りに進んだ場合でも、MRJ90を滞りなく量産することや、短胴型のMRJ70(76席)も並行して開発するなど、課題は尽きない。水谷社長は、「MRJを製造する三菱重工では、これまで月産3機以上のペースで完成機を造ったことがない」と述べ、当面は月産2、3機の規模で、コンスタントに量産できる体制作りが不可欠との見方を示した。

 MRJ70については、リージョナルジェット世界最大手のエンブラエルには、次世代機が存在せず、同サイズの後継機需要を取り込める可能性がある。水谷社長は「新しく採用できる技術もある」として、単にMRJ90の胴体を短くするだけのこれまで進めてきた機体とは異なるものになる可能性が出てきた。

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