エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2016年7月29日 13:30 JST

ボーイング、747-8製造中止検討 苦境のジャンボ、貨物低迷響く

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 ボーイングは、747-8型機の受注が今後見込めない場合、製造中止を検討することを明らかにした。現地時間7月27日にSEC(米国証券取引委員会)へ提出した書類で言及した。航空貨物需要の世界的な低迷が、主力である貨物型の受注の苦戦につながっているほか、燃費が良く運航コストが抑えられる双発の大型機の台頭が、エンジンが4基あるジャンボを苦境に立たせている。

日本の航空会社で唯一747-8を運航するNCA=14年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
主力は貨物型
9月から月産0.5機
新政府専用機は777

主力は貨物型

日本の空を飛ぶ旅客型の747-8はルフトハンザなど海外の航空会社のみ=14年10月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 747-8は「ジャンボ」の愛称で親しまれている747の最新型。旅客型の747-8「インターコンチネンタル」と貨物型の747-8Fがある。米GE製新型エンジンのGEnx-2Bを4基搭載しており、ボーイングでは新設計の主翼などと合わせて、従来の747-400と比較して燃費を改善し、騒音は30%軽減、二酸化炭素排出量は15%削減出来るとしている。初号機納入は2011年10月12日で、747-8Fがカーゴルックス航空(CLX/CV)へ引き渡された。

 今年6月末現在、計125機を受注。内訳は747-8が51機、747-8Fが74機と貨物型が上回っており、引き渡し済みの機体は747-8が41機、747-8Fは63機の計104機で、受注残はそれぞれ10機、11機の計21機となっている。

 英国で開かれたファンボロー航空ショー期間中の7月12日、ロシアのヴォルガ・ドニエプルグループが747-8Fを20機追加受注する意向を表明し、3カ月ぶりの受注を獲得できる見通しが立った。また、米空軍が2015年1月28日に、次期大統領専用機として747-8をベースにした機体を導入すると発表している。

9月から月産0.5機

747-8のライバルA380も減産に=16年7月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ボーイングは今年1月21日、航空貨物市場の需要鈍化より、747-8の減産を発表。生産レートを3月に月産1.3機を同1機に落とし、9月には同0.5機と段階的に減らしていく。

 7月27日にSECへ提出した書類で、ボーイングは「追加受注の獲得とコスト削減に向けて努力するが、受注できない場合は損失が増える可能性があり、747の製造を終了することは合理的」として、製造中止を検討する可能性を示唆した。

 ボーイングは7月12日に、民間航空機の需要について2016年から2035年までの20年間予測を発表。2015年6月発表の予測と比べて、4.1%(1570機)多い3万9620機を超える新造機の需要があるとした。このうち、747など大型ワイドボディー(400席以上)機の需要は、530機あるとの見方を示している。

 同じく20年間予測を発表した競合のエアバスは、3万3070機の新造機需要のうち、超大型機(450席以上)であるA380や747は、1480機の需要があると予測している。しかし、エアバスは7月12日にA380の減産を発表。現在の月産3機を2018年からは同1機に落とし、製造ラインを維持する方針だ。

新政府専用機は777

羽田を離陸する政府専用機。後継は777-300ERに=16年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 世界の航空会社は、燃費の良い双発大型機を747の後継機として導入する傾向が強い。日本の航空会社で747-8を運航しているのは、747-8Fを10機発注済みの日本貨物航空(NCA/KZ)のみ。2012年7月25日に747-8Fの初号機(登録番号JA13KZ)を受領し、現在は8機運航している。

 NCAは2005年11月15日、ローンチカスタマーとして747-8Fを14機発注。このうち8機が確定発注で、6機をオプションとしていた。2007年3月にオプションの6機を確定発注に切り替えたが、2015年9月には6機のうち4機をキャンセルしている。事業環境が発注当時から変化したことにより、最終的な確定発注は10機となった。

 かつては100機以上の747を保有していた日本航空(JAL/JL、9201)も、2014年3月に国内最後の旅客型747を退役させた全日本空輸(ANA/NH)も、ともに777を後継機として導入している。この777の後継機としては、JALがエアバスの最新鋭機A350-1000、ANAが777の次世代機となる777Xを選定しており、747-8の旅客型を導入する日本の航空会社は現れていない。

 一方、日本へ乗り入れる航空会社では、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)が2014年10月28日に、747-8を羽田-フランクフルト線に投入。日本初の旅客型747-8の就航となった。

 また、日本の政府専用機である747-400も、2019年度に2機の777-300ERに置き換えられ、747-8は当初から選に漏れていた。そして、ANAを傘下に持つANAホールディングス(9202)は3機のA380を発注したが、超大型機市場への影響は限定的だ。

 燃費性能や運航コストが優れた双発の大型機により747の置き換えが進み、747-8やA380といったエンジンが4発の超大型機は、苦戦が続きそうだ。

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Boeing
ボーイング・ジャパン

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