国土交通省航空局(JCAB)は7月28日、羽田空港D滑走路の破損事案などを検討する「羽田空港D滑走路破損事案対策検討委員会」の第2回会合を開いた。5月に相次いだスカイマーク(SKY/BC、9204)と日本航空(JAL/JL、9201)のタイヤバーストについて、いずれも鋭利な物体によるFOD(外的要因)をきっかけとする似たようなメカニズムとみられるとの分析結果を確認した。早ければ今秋にも、再発防止策を含めた取りまとめを目指すとともに、国交省は安全対策を講じる。

羽田D滑走路で2件起きたタイヤバースト(国交省の資料から)
一方、タイヤの現物調査だけで原因物体や発生場所を物証に基づく形で特定するのは難しく、今後は機体に記録されたデータなどを使って検証する。
—記事の概要—
・16年で初のトラブル
・ゴムジョイントの予防保全拡大
16年で初のトラブル
D滑走路接続部のゴムジョイント破損については、5月29日の発見時に鋼製部材の端部が浮き上がり、進行方向奥側の埋立部側がめくれ上がっていた。表層ゴムは、もともと1割程度欠けていたものが3割程度まで拡大していた。

D滑走路ゴムジョイントの基盤施設点検の状況(国交省の資料から)

D滑走路接続部ゴムジョイント破損事案概要(国交省の資料から)
国交省によると、D滑走路は供用開始から16年が経過しており、このゴムジョイントは羽田空港の滑走路で初めて使用したものだが、構成部材のめくれ上がりが発生した事例は過去にないという。国交省は、破損と航空機走行との関係を調べるため、鋼製部材やゴム、界面接着の状態を調査し、3次元FEM解析で航空機荷重と部材のめくれ上がりの関係を検証する。
タイヤバーストは、5月25日にスカイマークの羽田発福岡行きBC19便(ボーイング737-800型機、登録記号JA737T)、29日にJALの羽田発熊本行きJL645便(767-300ER、JA615J)で発生。BC19便がD滑走路を離陸後、同滑走路を点検したところ数点のタイヤ片が見つかり、同便は羽田へ引き返した。JL645便はD滑走路を離陸後、左主脚のタイヤが破損した可能性を認識し、成田へ目的地を変更した。
国交省によると、スカイマークの分析では、バーストしたタイヤに製造上の異常や問題は確認されなかった。破断面の分析では、鋭利な物体によるFODで生じたせん断入力を起点に、タイヤの骨組みにあたるカーカスを構成するプライコードの編み込み角度に沿って破断が進んだと推察。初期損傷で部分的に全層のプライコードが破断し、内圧の保持限界を超えたため、二次的な引張破断が進展してバーストし、トレッド部が約半周剥離したと説明した。
JALの分析では、バーストしたタイヤにFODによる破壊の特徴が確認された。破壊の起点はトレッド部の溝部分で、プライコードを貫通する直線状のせん断痕跡があった。せん断部の内側には、時間経過に伴う破壊の進行を示す「しわ」は確認されず、瞬間的な破壊だったと考えられるという。国交省によると、両社からの報告を踏まえ「非常に類似したメカニズム」との認識を示した。

SKY19便タイヤバースト(国交省の資料から)

JAL645便タイヤバースト(国交省の資料から)

タイヤの内部構造(国交省の資料から)
一方、タイヤの現物調査だけで原因物体や発生場所を特定するのは難しいとした。国交省によると、タイヤから滑走路側の鋼製部材と同じ素材の金属片などが検出されたとの報告は受けていないという。委員からは、外的要因がどこで発生し、どこでバーストしたのかについて、機体に記録されたデータなど客観的な情報を使い、掘り下げるよう要望が出た。
ゴムジョイントの予防保全拡大
D滑走路接続部のゴムジョイント破損については、5月29日の発見時に鋼製部材の端部が浮き上がり、進行方向奥側の埋立部側がめくれ上がっていた。表層ゴムは、もともと1割程度欠けていたものが3割程度まで拡大していた。国交省は、破損と航空機走行との関係を調べるため、鋼製部材やゴム、界面接着の状態を調査し、3次元FEM解析で航空機荷重と部材のめくれ上がりの関係を検証する。

D滑走路接続部ゴムジョイント予防保全措置(国交省の資料から)
当面の対策としては、破損箇所と同様に表層ゴムが剥離していた他の4カ所について、鋼製部材を撤去し、常温補修材を充填する予防保全措置を実施した。施工直後に2カ所で2ミリ程度のクラックが発生したため、ひび割れ補修剤を注入し、その後約2カ月は進行していないという。点検方法も、目視に加え、6月17日から手で触れて浮き上がりや剥離を確認する点検を追加した。
また、航空機のタイヤ走行が集中する範囲を分析し、現時点で表層ゴムが欠損していない箇所も含めて予防保全措置の対象を拡大した。対象範囲はD滑走路が従来の10メートルから20メートルに、D5誘導路は新たに20メートルを設定し、拡大措置は7月22日までに完了した。
再発防止策としては、新たな構造への交換と点検方法の見直しを検討する。後継の伸縮装置への交換は、タイヤが集中して通過する応急処置・予防保全箇所を優先して進める方針で、現構造を基本に見直す案と、空港で実績のある樹脂系補修材へ置き換える案を示した。委員からは、後継装置についてフェイルセーフな構造を考えることが重要だとの意見が出た。

復旧・予防保全措置実施箇所の経過観察(国交省の資料から)

予防保全措置範囲の拡大(国交省の資料から)

予防保全措置の拡大範囲(国交省の資料から)

ゴムジョイント破損再発防止策に係る検討(国交省の資料から)
JCABは、今年秋ごろの第3回委員会で、ゴムジョイント破損メカニズムや、ゴムジョイント破損とタイヤバーストとの因果関係、再発防止策の取りまとめを目指す。国交省担当者は、最終的な取りまとめになるか中間的なものになるかは現時点で未定とした上で、取りまとめまでの間は、予防保全措置の範囲拡大と触手点検も含めた点検強化の二本柱で安全を確保すると説明した。
関連リンク
国土交通省
検討委が初会合
・4年前からの羽田D滑走路損傷、タイヤ破裂との因果関係「立証難しい可能性」=検討委の初会合(26年6月23日)
・4年前からゴムジョイント損傷把握 特集・羽田D滑走路タイヤ破裂トラブル(26年6月15日)
・羽田D滑走路トラブル、検討委の初会合 タイヤ破裂相次ぎ関係検証=国交省(26年6月10日)
当紙スクープ
・【独自】JALとスカイマーク便タイヤ不具合、羽田D滑走路の継ぎ板が原因か(26年5月30日)
・羽田D滑走路、重大事故招くタイヤ「パンク」パリではコンコルド墜落(26年5月31日)
2件のバースト
・JALの767、タイヤ不具合で引き返し成田に代替着陸 羽田D滑走路離陸で2件目(26年5月29日)
・スカイマーク福岡行きBC19便、タイヤトラブルで羽田引き返し C滑走路が2時間閉鎖(26年5月25日)
