きょう5月19日搭乗分から刷新された全日本空輸(ANA/NH)の国内線新運賃。最も安い「シンプル」を選ぶと、事前座席指定が出発時刻24時間前までできない。従来の普通席に相当する「エコノミークラス」だけでなく、上級クラス「ファーストクラス」も、シンプルは事前座席指定が「不可」と表示される。

国内線運賃のリニューアルをPRするANAのウェブサイト。家族連れにも利用して欲しいようだ(同社サイトから)
家族旅行や帰省で、保護者と小さな子供が隣同士に座りたい場合は注意が必要だ。シンプルでは購入時に座席を選べず、LCC(低コスト航空会社)のようにオプション料金を追加して座席指定だけ買い足すことはできない。並び席を確実にしたい場合は、購入時点で一つ上の「スタンダード」以上を選ぶ必要がある。誰しも航空券は安く購入したい。しかし、帰省などたまにしか乗らない人が、どの程度こうした変更を理解した上で最安値の運賃を選ぶだろうか。
—記事の概要—
・「シンプル」は購入時に座席指定不可
・「スタンダード」との価格差
・家族連れは注意
「シンプル」は購入時に座席指定不可
ANAは5月19日搭乗分から、国内線運賃を「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3種類に刷新した。国内線と国際線の旅客サービスシステム(PSS)を統合し、予約や搭乗ルールを国際線と共通化する一環だ。

ANA国内線新運賃の特徴(同社サイトから)
新運賃のうち、シンプルは付帯サービスを最小限にし、費用を抑えたい利用者向けの運賃。ANAの案内では、シンプルの座席指定は出発時刻24時間前から可能となる。一方、スタンダードとフレックスは事前座席指定が無料で、あらかじめ座席を選べる。
5月19日午前に、あす20日搭乗分の羽田発福岡行きを検索した。シンプルは新制度で決められた通り、出発時刻が24時間より前の便は事前座席指定が「不可(出発時刻24時間前から可)」。1週間後の26日搭乗分も同じ表示で、シンプルの基本ルールとして座席指定が制限されていることがわかる。
ファーストクラスも、20日搭乗分の予約画面ではシンプル、スタンダード、フレックスの3運賃が表示され、シンプルは事前座席指定が「不可」。予約画面上で「ファーストクラス」と表示される上級クラスも、最安運賃を選ぶと事前座席指定はできない点は同じだ。
「スタンダード」との価格差
5月19日午前9時の時点で、20日搭乗分の羽田発福岡行きの場合、画面内最安値のシンプルが1万4970円、スタンダードが1万8710円で、差額は3740円だった。1週間後の26日搭乗分でも、画面内最安値のシンプルは1万4970円、スタンダードは1万8710円で、同じく3740円の差があった。事前座席指定のためにスタンダードを選ぶ場合、最安運賃との差を見込む必要がある。

ANA国内線予約画面に表示された明日5月20日の羽田発福岡行きエコノミークラスの運賃(同社サイトから)
この価格差は路線や便により大きく異なる場合がある。たとえば、5月26日の羽田発那覇行きでは、シンプルが1万3890円、スタンダードが1万6860円で差額が2970円の便もあれば、シンプルが8万7920円、スタンダードが9万8590円で差額が1万670円の便もあった。
3つの中でもっとも高いフレックスは、5月20日搭乗分の羽田発福岡行きは6万8980円で、5月26日搭乗分は5万5450円。26日の羽田発那覇行きは6万1300円と表示されていた。座席指定を目的に選ぶ現実的な選択肢は、フレックスではなくスタンダードになりそうだ。
家族連れは注意
影響が大きいのは、普段飛行機に乗り慣れていない家族連れや、同行者と並び席を希望する利用者だ。航空券検索では安い運賃が目につきやすいが、シンプルを選んだ場合、出発24時間前までは座席を選べない。繁忙期や混雑便では、座席指定開始時点で並び席を確保するのは難しいだろう。

ANA国内線予約システムで決済前に表示される画面「事前座席指定ができない運賃または運航会社です」(同社サイトから)
子供連れの利用では、保護者と子供の席が離れることへの不安も出やすい。X(旧Twitter)では新運賃発表後から、相手の善意を前提に、座席変更を求める家族連れとの機内トラブルが動画で拡散されるのではと、早くもトラブルを“予言”する投稿もみられた。
予約時点で並び席を確実にしたい場合は、シンプルではなくスタンダード以上を選ぶ必要があるものの、そうした制度の違いを誰もが理解するのは難しい。出張などで普段飛行機に乗り慣れている人はともかく、夏休みや年末年始の帰省、家族旅行など、「たまに利用する」頻度の人には、この変更が広く認知されるまでには時間がかかるだろう。
航空券を購入時には予約画面に「事前座席指定ができない運賃または運航会社です」と表示され「事前座席指定に進む」と「支払いに進む」と2つの選択肢が表示される。しかし、シンプルの場合「事前座席指定に進む」を選択できないようになっており、決済する際にはこの画面を目にすることになる。
問題は、ここで「購入時には事前座席指定ができない」と利用者が理解しても、出発24時間前までかは忘れてしまう人もいるのではないか。仮にANA側が注意喚起のメールを送っても、読んでくれる、あるいはANA側が想定している受け止めをしてくれるとは限らない。もちろん、そこまで航空会社がケアする必要はないが、搭乗当日に空港や客室で予期せぬ“バトル”が起こることは想像に難くない。
一方、利用者にとってのメリットもある。1人での移動や座席位置にこだわらない利用者にとっては、シンプルを選ベば費用を抑えられる。
FSC(フルサービス航空会社)であるANAの国内線は、これまで普通席の事前座席指定は多くの利用者にとって当然のサービスとして受け止められてきた。新運賃は、海外の航空会社で増加傾向にある運賃ごとにサービスを差別化するもので、安さと引き換えに事前座席指定が制限される。家族旅行や同行者との移動では、航空券の価格だけでなく、座席指定の可否まで確認する必要がある。
最終回となる次回は、SFC(ANAスーパーフライヤーズカード)の制度改定を軸に、ANAと利用者の間で生じている温度差を整理する。
(つづく)
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