官公庁, 機体, 解説・コラム — 2025年6月28日 06:00 JST

P-1、不具合と部品不足で稼働率低下 会計検査院が指摘

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 会計検査院は6月27日、海上自衛隊が運用する国産哨戒機P-1について、エンジンや電子機器の不具合、交換部品の調達遅延が要因で稼働率が低下しているとの報告書を公表した。他機から部品を取り外して修理に充てる「共食い整備」を実施していたことも指摘し、運用体制に影響が及んでいる実態が明らかになった。

2017年のパリ航空ショー初出展を終えル・ブルジェ空港を出発する海上自衛隊のP-1=17年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 報告書は「国内開発された固定翼哨戒機(P-1)の運用等の状況について」と題したもので、2019-2023年度の5年間を対象に分析。P-1は川崎重工業(7012)が製造する国産機で、ターボプロップ機であるP-3Cの後継機として2013年から配備が始まり、2023年度末時点で35機を保有し、鹿屋、厚木、下総の各航空基地に配備されている。

 P-1の開発・運用などに関する契約は、1991年度から2023年度までに計4656件、契約額は計1兆7766億円に達している。

—記事の概要—
原因1:エンジンや電子機器の不具合
原因2:部品調達遅延と「共食い整備」
想定下回る稼働率

原因1:エンジンや電子機器の不具合

 P-1の稼働を阻害する大きな要因として、IHI(7013)製ターボファンエンジン「F7-10」やミッション系電子機器の不具合が繰り返し発生していた。海上で運用する任務の特性上、エンジンの一部素材に空気中の塩分が付着し、腐食が生じることによる性能低下もみられた。

パリ航空ショーに初出展された海上自衛隊のP-1=17年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 搭載機器のうち、目標の情報収集に用いる「搭載電子機器A」の一定数が継続定期に使用不能となっており、搭載武器BからEの4種類は機体との接続不具合、搭載電子機器Fは地殻性物質の固着による不具合が指摘された。

 このうち、搭載電子機器Aは開発段階から不具合が出ており、「搭載した際の影響を十分に予見できていなかった可能性あり」、搭載武器の不具合は「仕様の検討が不十分だった可能性あり」と報告された。搭載電子機器Aの修理などにかかった費用は、合わせて8億9000万円となった。

原因2:部品調達遅延と「共食い整備」

 もう一つの深刻な要因が、交換部品の調達遅延と慢性的な不足だった。報告書では、定期修理に要する部品の入手に3年以上かかった例も確認され、緊急請求を受けても調達まで1年以上かかったものが全体の3割弱あった。

 このため、修理や定期整備の必要がある機体に対し、在庫が確保できない状況が続き、結果として運航可能な機数が不足する状況を招いていた。また、稼働率を維持するために、他の機体から部品を取り外して修理に用いる「部品取り」(共食い整備)を行っていた。

海自のP-1=23年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

想定下回る稼働率

 会計検査院は、P-1の可動状況が低調だったと指摘。報告書は、防衛省に対して省内一体となった改善に取り組むことや、部品調達も「より効率的、効果的なもの」の検討を求めた。

関連リンク
会計検査院
防衛省
防衛装備庁
海上自衛隊

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