全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の芝田浩二社長は4月30日、進行中の2023-2025年度中期経営戦略で定めた主力機材ボーイング787型機を2030年度に100機超へ増やす計画について、達成できるとの見方を示した。ボーイングは品質問題やサプライチェーンの問題などで、航空会社やリース会社への機体の納入が遅れており、ANAHDの受領にも影響が出ていることに加え、トランプ関税の影響が機体メーカーに今後どの程度及ぶかなど不透明な要素もある。

25年3月期通期決算会見で質疑に応じるANAホールディングスの芝田浩二社長=25年4月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAHDは2023年2月15日に、今年度までの中期経営戦略を発表。2022年12月末時点で79機(787-8:36機、787-9:40機、787-10:3機)だった787を、2030年度には100機以上に増やす計画を進めている。今年3月末時点では、2機がANAHD傘下のエアージャパン(AJX/NQ)が運航する「AirJapan」仕様に改修された787-8は34機、787-9が44機(23年同月末より1機増)、787-10が8機(同3機増)の86機で、AirJapan仕様も含めると88機になる。
芝田社長は、「787は今年の導入予定機材も3機で、テンポは遅れている。今後のデリバリースケジュールをボーイング幹部と折衝しているが、決してテンポが遅れたままでいくとはみていない」と述べ、「100機体制は計画通り達成できると思っている」と語った。
ANAHDは今年2月25日に、過去最多となる最大77機の機材発注計画を発表。このうちボーイング機は787-9が18機(全機確定発注)で2028年度から2031年度にかけて、737-8(737 MAX 8)が12機(確定発注8機、オプション4機)で2029年度から2033年度にかけて導入を予定している。
エアバス機はA321neoをANA向けに14機、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)向けに10機の計24機(全機確定発注)を2030年度から2032年度に受領する計画で、ピーチは航続距離の長いA321XLRも2032年度に3機(全機確定発注)導入予定。また、ANAHDは国内初導入となるE190-E2を20機発注(確定発注15機、オプション5機)し、国内線の需給調整を目的に、2028年度から2032年度にかけて受領する。
芝田社長は「パリ航空ショーで77機を正式契約する。来年度から導入していく787のビジネスクラスも合わせてお披露目したい」と述べ、6月にパリ郊外のル・ブルジェ空港で開かれる世界最大規模の国際航空宇宙見本市「第55回パリ航空ショー」に出席する。「エアショーに参加している方に、ANAブランドをアピールしたい」と語った。
787の新シートは787-9の長距離国際線仕様機向けで、今月9日にプレミアムエコノミーとエコノミークラスのシートは発表済み。この時に残るビジネスクラスのシートをパリ航空ショーで披露することを明らかにしていた(関連記事)。
また。30日に発表したANAHDの2025年3月期通期連結決算(日本基準)は、純利益が前期(24年3月期)比2.6%減の1530億2700万円だった。売上高は過去最高を更新し10.0%増の2兆2618億5600万円、営業利益は5.4%減の1966億3900万円、経常利益が3.6%減の2000億8600万円で、配当は10円増配となる1株60円。2026年3月期通期の見通しは2兆3700億円(25年3月期比4.8%増)、営業利益は1850億円(5.9%減)、経常利益は1750億円(12.5%減)、純利益は1220億円(20.3%減)を見込む。
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