年に2回ある航空会社のダイヤ変更。2024年冬ダイヤが10月27日から始まった。今年は国内大手2社の新路線開設などはなかったが、航空会社によっては運賃体系の見直しなど、新サービスをダイヤの変わり目から始めるところも多い。
LCC(低コスト航空会社)に目を向けると、片道4時間を超える中距離国際線への参入がにぎわっており、日本航空(JAL/JL、9201)傘下のZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が先行し、コロナ前から参入を計画していたANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のピーチ・アビエーション(APJ/MM)も、関西-シンガポール線を12月4日に開設する。
こうした中、FSC(フルサービス航空会社)とLCCの間を狙うとする、ANAHD傘下のエアージャパン(AJX/NQ)が今年2月から運航を始めた新ブランド「AirJapan」は、払戻手数料や事前座席指定などを冬ダイヤから見直した。
—記事の概要—
・払戻手数料を見直し
・足もと広い席も選びやすく
払戻手数料を見直し
AirJapan便の機材はボーイング787-8型機で、座席数は1クラス324席でエコノミークラスのみ。シートピッチは海外のFSCのエコノミークラスと同等の32インチ(約81センチ)で、東南アジアのLCCで主流の28-29インチより広くした。ANAの国際線用787は34インチ、国内線用は31インチで、グループ内では中間のピッチとなり、中距離国際線でも過ごしやすくしている。
現在の運航路線は、成田発着のバンコク(スワンナプーム)、ソウル(仁川)、シンガポールの3路線となる。
冬ダイヤから見直したのは、払戻手数料。これまではソウル線で航空券の一部払い戻しが可能だったが、バンコク線とシンガポール線にも拡大した。
AirJapan便の運賃は3種類あり、有料オプションを含まない「Simple(シンプル)」、事前座席指定の一部と預入手荷物1個の「Standard(スタンダード)」、事前座席指定や預入手荷物、機内食の一部メニューが選べる「Selected(セレクテッド)」を展開している。インバウンド(訪日)需要がメインターゲットだが、日本人的な「松竹梅」の3段階で見ると、松がSelected、竹がStandard、梅がSimpleといったところだ。
今回の対象は、標準プランとも言える「Standard」と、オプションが充実している「Selected」。出発5時間前であれば、Standardプランは購入金額の25%、Selectedプランは50%(半額)を返金する。エアージャパン社によると、仕事の都合や子供の学校行事などで旅程の変更が生じても、利用しやすい運賃にしたという。
一方、もっとも安価なSimpleプランは払戻不可のままとし、価格や利便性といった利用者が重視するポイントに応じた運賃に見直した。
足もと広い席も選びやすく
AirJapan便は「LCCではない」とANAグループは打ち出しているが、運賃体系から見ると従来のLCCと同じと考えた方がいいだろう。大手などに乗り慣れている人にとって、座席指定がオプションとなる点は、気になるところではないだろうか。
松竹梅の「松」にあたるSelectedプランは、全324席が選択対象。AirJapan便に使用する787-8は、足もとが広い席が1列目、10列目、30列目と3カ所あり、無料で指定できる。
一方、ボリュームゾーンである「竹」のStandardプランは、従来よりも選べるエリアを拡充。新たに前方の窓側、通路側、中央座席が選択可能になり、フリードリンクを提供している1列目から9列目の座席も指定できるようになった。
また、オプションとなる機内食も、飛行時間が長いバンコク線とシンガポール線のSelectedプランは、全メニューから選べるように改善。これまでは一部メニューしか選べなかったが、寿司や子供向け「デコ弁」も選択できるようになった。
◇ ◇ ◇
エアージャパン社はANAの国際線のうち、アジア・リゾート路線を運航しており、新ブランドであるAirJapan便の運航開始後も、従来のANA便運航も続けている。3機目の787は、2025年度内にANAから移管される見通し。
AirJapan便は就航当初に混乱もあったが、2024年4-9月期(上期)の定時到着率は82.0%で、8月の台風による影響を除くと85.8%になった。運航規模は異なるが、国土交通省航空局(JCAB)の調査で全日本空輸(ANA/NH)の定時到着率は10社中10位の82.53%、ピーチは6位の88.63%だったことから、混雑する夕方の成田空港のように出発が遅れたとしても、到着時は大きな遅延につながっていない。
海外旅行となると、円安や現地の物価高で二の足を踏む人も多い状況が続いているが、航空券代を安く抑えることで、旅費全体では大差ない旅も計画できるのではないだろうか。
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